第115話 新たなる日々
今回は、いつもより短めの話です。
フロントラルで起きた、「勇者」ことクラスメイト達と、ルーセンティア王国王女イヴリーヌや騎士エヴァンとの再会、更にはストロザイア帝国皇妃キャロラインと、その息子と娘であるレオナルドとアデレードとの出会いという出来事があってから、春風と仲間達の日々に更なる変化が起きた。
まず、生活面だが、
「私も、ここに住む!」
「私もよ!」
と、春風達の拠点に歩夢と美羽も一緒に住むと言い出して、
「ちょっとぉ! 駄目に決まってるでしょお!」
と、何故かレナが怒って猛反対し、
「あらぁ、私は賛成よ」
と、反対に凛咲が賛成したので、
「いや、ほんと皆さんちょっと待って!」
と、止めようとした春風を挟んで更なる修羅場が繰り広げられた。
その後、何とか話し合った末、歩夢と美羽の部屋を用意して、彼女達も一緒に住む事になった。
ただその際、
「むー」
と、不服なのかレナは最後まで膨れっ面をし、
「みんな、これは学級裁判が更に楽しみになってきたね」
と、恵樹がそう言ったのをきっかけに、鉄雄達も「うんうん」と頷いた。ただ、
「は、はは。そうだねぇ」
水音だけは、何故か滝のように大量の汗流し、
「……」
そんな水音を、祈は心配そうに見つめた。
次にハンター活動の方はというと、キャロラインだけでなくレオナルドやアデレード、更には水音、進、耕、祭、絆、祈の6人が加わり、それに伴って、
「だったら、私達もハンターになる!」
「おう、俺達もな!」
と、歩夢、美羽、鉄雄、恵樹、詩織の5人も、ギルド総本部でハンターとして登録した事で、かなり賑やかになった。
ただ、白金級ハンターのキャロラインや、ある程度階級が上がっていた春風や水音達と違って、歩夢達5人は登録したばかりの新人なので、受けられる仕事は低い階級のものだけだった。その事について、
「はぁ。受けられるのコレだけかよぉ……」
と、鉄雄は文句を言ったが、
「「ハンターを舐めるな!」」
と、春風だけでなく水音までもが鉄雄に向かってそう怒鳴り、それに続くように、
「そうだ! どの仕事も優劣なんてないんだぞ!」
「そうそう! すっごく責任が伴うんだからね!」
と、進や祭までもがもの凄い剣幕でそう叱ってきただけじゃなく、ハンターとしての心構えについて力説までしてきたので、
「お、おぅ。わ、悪かったよ」
と、鉄雄は一歩引きながらも、春風達に向かってそう謝罪した。
そして、もう1つ大事な事がある。
それは、春風とルーセンティア王国の騎士達との関係についてだ。
実は、今回イヴリーヌや歩夢達と共にフロントラルに来た騎士達の中には、エヴァンと同じように「勇者召喚」があったあの日、春風にぶちのめされた騎士が数名いたのだ。
そんな彼らに、
「あの時は、ごめんなさい」
と、春風がそう謝罪すると、その騎士達も、
「いや。我々も、斬り掛かったりして、すまなかった」
と、春風に向かって深々と頭下げて謝罪した。
これには春風も驚いたが、エヴァンによると、春風がルーセンティア王国を飛び出した後、国王ウィルフレッドだけでなく騎士達の家族からも、
ーーこちらの都合に巻き込んでしまったのに、断ったからって逆上して斬り掛かるとは何事だ!
と、お叱りを受けてしまい、それで自分達がした事を理解したのか、彼らは大いに反省したという。
そんな話もあって、春風と騎士達はそれぞれ仲直り(?)をし、以後よく話し合う関係にまでなった。
とまぁこんな感じで、新たな日々を送っていくうちに、春風は鉄雄達や騎士達とかなり打ち解け合い、今ではお互い名前で呼び合うようになった。特に「お調子者」的な位置付けの恵樹からは、「ハルっち」などとニックネームで呼ばれるようにもなった。
ここまでの間にどのような日々を送っていたかについては、また別の形で語るとしよう。
さて、そんなこんなで仲間達と楽しい日々を過ごしていたある日、
「大変な事になりました」
「何が起きたんですか?」
「邪神……いえ、『月光と牙の神ループス』様が、眷属達と共にこのフロントラルに向かっている事がわかりました」
『……え?』
新たな戦いの時が、近づこうとしていた。