第114話 新たなる始まり
お待たせしました、本編新章、開始です。
それは、イヴリーヌや歩夢達が、フロントラルへと旅立ってから暫くした時の事だった。
ルーセンティア王国王城内、謁見の間にて、
「何!? 『邪神の眷属』に動きがあっただと!?」
「はい! それも、複数の目撃情報がありました!」
国王ウィルレッドは、目の前にいる騎士からそう報告を受けていた。
その報告に、ウィルレッドの隣のマーガレットやクラリッサ、五神教会教主ジェフリー、そして、爽子ら勇者達は、ショックでタラリと汗をかいた。
そんな状況の中、
「ほ、報告を続けてくれ」
と、ウィルレッドが騎士にそう命令すると、
「は、はい! 目撃情報をもとに調べた結果、各地にいる邪神の眷属達は、全てとある場所を目指して進んでいる事がわかりました」
と、騎士はビシッと姿勢を正してそう報告を続けたので、
「そ、そのある場所とは?」
と、ウィルレッドが更に尋ねる中、騎士は「そ、それは……」と言い難いそうに表情を暗くしたが、すぐにウィルフレッドを見て答える。
「中立都市、フロントラルです!」
その答えを聞いて、
「な、何だとぉ!?」
と、ウィルフレッドは驚きのあまり玉座から立ち上がり、
「「そ、そんな……!」」
と、マーガレットとクラリッサは顔を真っ青にした。
そして、それはジェフリーや勇者達も同様だった。
そんな報告を受けていた同時刻。
ルーセンティア王国と肩を並べる大国であるストロザイア帝国でも、
「……そいつはマジな話なのか?」
「は! もう一度報告しますが、『邪神の眷属』達は皆、中立都市フロントラルに向かっているとの事です!」
と、皇妃キャロラインの夫にして皇帝であるヴィンセントも、自国の騎士からの報告を受けていた。
その報告を受けて、ヴィンセントは「マジか……」と手で顔を覆うと、
「父様」
と、隣に座る1人の少女が、ヴィンセントをそう呼んできたので、
「どうしたエレン」
と、少女をそう呼んだヴィンセントが返事すると、
「ここは私に任せて、父様は母様達のところに行ってください」
と、エレンはヴィンセントに向かって真剣な表情でそう言った。
その言葉を聞いて、
「……良いのか? お前だって、水音に会いたいんじゃないのか?」
と、ヴィンセントが尋ねると、
「大丈夫です。アイツも、祈も、そして進達も、ちゃんとここに戻ってきますから。それに……」
「?」
「父様、早く会いたいのでしょう? 雪村春風に」
そう言うと、エレンはニコッと笑ったので、ヴィンセントは一瞬ポカンとなった後、
「……はは、そうだな」
と言って、スッと玉座から立ち上がって、
「よっしゃ! すぐに魔導飛空船の準備だ! そいつが済み次第、俺もフロントラルに向かうぞ!」
と、騎士に向かってそう命令した。
ただ、その後すぐに、
「おっと、こうしちゃいられねぇ! すぐにウィルフにも報告しねぇとな!」
と言って、ヴィンセントはそそくさと謁見の間を出た。
その後、廊下を移動する最中で、
(待ってろよ、キャリーにレオン、アーデ。そして……)
と、ヴィンセントは心の中でそう呟いた後、
「雪村春風ぁ! この俺、ヴィンセント・リアム・ストロザイアが行くから、首を洗って待っていやがれぇ!」
と、ニヤリと笑いながらそう口に出した。
さて、その雪村春風本人はというと、
「春風。何してるの?」
と、レナがそう尋ねてきたので、
「いや、なんか『首を洗って待ってろ』って言われた気がしたから、首を洗ってる」
と、本当に首を洗いながら答えた。
その答えを聞いて、
「そ、そうなんだ」
と、レナは頬を引き攣らせたが、
「じゃあ、私も」
と言って、レナも春風と同じように首を洗い始めた。
どうも、ハヤテです。
という訳で、前章が終わってすぐになりましたが、今日から本編新章の開始となります。
お楽しみに。