第113話 再び、修羅場の予感?
お待たせしました、本日2本目の投稿にして、今章最終話です。
「えぇ? 俺がいない間にそんな事が起こったの?」
「そうだよ! 凄く大変だったんだから!」
歩夢や水音達から、春風がルーセンティア王国を去った後に起きた出来事を聞いて、春風は「マジで?」と言わんばかりに手で顔を覆った。
詳しい話は別の形で語るのでここではざっくりと話すと、あれから歩夢達はルーセンティア王国では普通に「勇者」としての訓練を受けてはいた。
ところが、クラスの中で春風に関する事でトラブルが起きたが、それはすぐに収まった。ただ、少し腑に落ちない部分はあったが。
その後ストロザイア帝国から皇帝ヴィンセントと、その娘である第2皇女エレクトラが来て、ひょんな事から水音がそのエレクトラと戦う事になり、見事、彼女に勝ったが、それからすぐになんと向こうから「好きだ!」と水音が告白されてしまったという。
そこから更にウィルレッドとヴィンセントらを交えて話し合った末、水音、進、耕、祭、絆、祈の6人がストロザイア帝国へと旅立つ事になった。
そして、帝国の首都である「帝都」へと渡った後、そこで彼らは「ハンター」として様々な活動していた事など、この2ヶ月で起きた事を全て春風に聞かせた。
それらを聞き終えた春風は、
「う、うーん。色々とツッコミたいところだけど……みんな、改めて、ごめんなさい」
と、歩夢達に向かって深々と頭を下げて謝罪した。
その謝罪を受けて、
「ま、まぁ結構怒ってはいるけどよぉ……」
「う、うん。事情が事情なだけに、僕達これ以上怒れないっていうか……いや、それでも十分怒ってるけどね」
「そうだね。ルーセンティアに残ってる先生や他のクラスメイト達が知ったらショックを受けるかも」
と、鉄雄も耕も恵樹も、そして他のクラスメイト達も、皆、「どうしたもんか」と困った表情になった。
そんな状況の中、
「ていうか水音! 君、皇女様相手に何やってんの!?」
と、春風が水音に文句を言うと、
「しょ、しょうがないだろ! あの時は先生やみんなが傷付けられて、頭に来てたんだから!」
と、水音は「なにおう!」と言わんばかりにプンスカと怒りながら言い返した。
するとそこへ、
「ねぇ、水音君。今の話を聞いて『おや?』ってなったけど、君、ほんとに『力』を封じられてるの?」
と、アマテラスがそう尋ねてきたので、
「あ、はい」
と、水音はそう返事すると、自身の胸に手をあてて、
「こうしてると、今も感じるんです。酷い言い方ですが、連中に植え付けられた『神闘士』の職能が、僕の中の『鬼』を苦しめているのを……」
と、辛そうな表情でそう答えた。
その答えにアマテラスが「どれどれ……」と水音の胸に触れて目を閉じると、
「うわぁ、これは酷いな。幾つもの複雑な術式が絡み合ってる。これ、『神』である私でも全部解くのに苦戦するかも」
と、表情を歪ませたので、
「そう……ですか」
と、水音はガクリと肩を落とし、
「水音君……」
と、水音の傍で祈が心配そうに見つめていた。
しかし、
「あん! そんなにガッカリしないで! 大丈夫、私だけじゃ苦戦するかもだけど、他の神々と一緒になんとかするから! 忘れたの!? 日本にはまだ800万も神々がいるんだからね!」
と、「これはやばい!」と思ったアマテラスは、大慌てで水音を励ましたので、
「……ありがとうございます」
と、水音は弱々しくも笑顔でお礼を言った。
その間、
「ねぇ、春風。アマテラス様、今、『800万も神様がいる』って言わなかった?」
「あぁ、うん。俺達の祖国には、それぐらい沢山の神様がいるんだよねぇ」
「え、えぇ?」
と、春風とレナのそんなやり取りがあったが、皆、それをスルーした。
まぁ、それはさておき、
「あー、ていうかみんな。もう外は結構暗くなってるけど、宿とかとってるの?」
と、アマテラスが誤魔化すようにそう言ってきたので、
「え、も、もうそんな時間ですか? 一応ここに来た時に宿はとりましたけど……」
と、イヴリーヌがチラッと歩夢達を見ながらそう言うと、
「フーちゃん……」
と、歩夢が春風の手を握ってきた。
それに春風が、
「ど、どうしたのユメちゃん?」
と、恐る恐る歩夢にそう尋ねると、歩夢はガバッと春風に抱きついて、
「私……フーちゃんといたい」
と、震えた声でそう答えた。
それを聞いて、春風が「ちょ、ちょっと……」と顔を真っ赤にして慌てふためくと、
「あ、なら私も!」
と、美羽までもが春風の腕にしがみつきながらそう言ったので、
「え、えぇ!? み、美羽さん!?」
と、春風は更に顔を真っ赤にした。
そんな3人の様子に、周囲がニヤニヤしていると、
「こらぁ! なんかよくわかんないけど、春風から離れてぇ!」
と、レナが怒鳴りながら必死になって春風から歩夢と美羽を引き剥がそうとし、
「「絶対に嫌ぁ!」」
と、歩夢と美羽も必死になってそれに抵抗し、
「れ、レナァ! お願いだからレナも落ち着いてぇ!」
と、春風はまた更に顔を赤くしてレナを宥めた。
そんな4人を見て、
「ねぇ、みんな。これは罪状1つ、追加だね」
と、恵樹がそう言ってきたので、
『うん、意義なし!』
と、他のクラスメイト達もコクリと頷いた。
当然、
「ちょっとぉ! なんか変な事言ってるけど、みんなも見てないで助けてよぉ!」
と、春風は助けを求めたが、皆、全力でそっぽを向いた。
とまぁ長くはなったが、こうして春風は、全員ではないがクラスメイト達との「再会」を果たした。
だがその一方、フロントラルから遠く離れた地で、
「……さてと、そろそろ動くとするか」
1つの存在が、行動を起こそうとしていた。
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ここまでの春風のステータス
雪村春風(人間・17歳・男) レベル:32
職能:見習い賢者
所持スキル:[英知][鑑定][風魔術][炎魔術][水魔術][土魔術][錬金術][暗殺術][調理][隠密活動][体術][杖術][槍術][棒術][鎌術][弓術][鉄扇術][暗器術][鍛治][裁縫][細工][調合][嘘発見]
称号:「異世界(地球)人」「固有職保持者」「神(地球)と契約を結びし者」「神に鍛えられし者」「新米ハンター」「紅蓮の猛牛メンバー」「黄金の両手メンバー」
どうも、ハヤテです。
という訳で、以上で第2部第4章は終了となります。
そして、次回も本編新章となりますので、どうぞよろしくお願いします。