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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第4章 そして、「再会」の時へ
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第111話 食事が終わって


 それから暫くの間、食堂内では楽しい時間が流れていた。


 春風が用意したおにぎりと特製豚汁を食べて、勇者ことクラスメイト達は美味しさのあまり、


 『おかわり!』


 と、一斉に叫んだので、


 「はは。喜んでくれて何よりだよ」


 と、春風は「やれやれ」と思いながらも、彼らの要求に応えた。因みに、


 「あ、凄く美味しいです」


 「ええ、そうねぇ」


 「うんうん、流石は春風君ね」


 と、イヴリーヌやキャロライン、更にはアマテラスからも好評を得ていたのは言うまでもない。


 食事が終わって、春風は後片付けを済ませると、


 「あの、食事の後で大変申し訳ないのですが、イヴリーヌ様」


 「はい、何ですか?」


 「アメリアさん達の事ですが……()()()()()()()()()()()()?」


 と、申し訳なさそうにアメリアやエステル、ディックとピートを見ながら、イヴリーヌに向かってそう尋ねた。その質問に対して、イヴリーヌは「それは……」と表情を暗くすると、


 「申し訳ありません。アメリア様達や、春風様とレナ様の事情は理解出来ましたが、わたくしではここで全てを決める事は出来ませんので、お父様……ウィルフレッド陛下と相談するという事になりました」


 と言うと、最後に、


 「不甲斐ない第2王女で、申し訳ありません」


 と付け加えると、春風向かって深々と頭を下げた。


 その姿に周囲がオロオロしている中、イヴリーヌはゆっくりと頭を上げて、


 「そして、ヘリアテス様にアマテラス様」


 と、今度はヘリアテスとアマテラスに向かって話しかけた。


 「ん? 何かしら?」


 と、アマテラスがそれに応えると、


 「この度は、わたくし達ルーセンティア王国がしでかした事によって、この世界だけでなくアマテラス様の世界にまで多大なご迷惑をかけ、無関係な歩夢様達をこちらの都合に巻き込み、更には春風様にまで大変なものを背負わせてしまい、誠に申し訳ありませんでした」


 と、イヴリーヌは再び深々と頭を下げた。


 それを見て、歩夢達は「ちょ、イヴリーヌ様!」と更にオロオロしていると、ヘリアテスは「はぁ……」と溜め息を吐いて、


 「私は、女神失格ですね。この世界の人達に良くしてもらってるだけでなく、こうして面と向かって謝罪までされているというのに、私の心の中では、『許さない』という暗い感情が、今も炎のように燃え盛っているのですから」


 と、自身の胸をグッと掴みながら、辛そうな表情でそう言った。そんなヘリアテスを、


 「お母さん……」


 と、レナは心配そうに見つめた。


 更に、


 「そうねぇ。私……というか、私達地球……いや、正確には『日本の神々』も、今回のルール無視の異世界召喚にはすっごい怒ってるし、春風君にも()()()()()()()を背負わせてしまったって自覚もあるしねぇ」


 と、アマテラスも「どうしたもんか」と言わんばかりの表情でそう言ったので、


 「そんな! 決めたのは俺自身の意志ですから! 寧ろ、こんな俺に力を貸してくれた事に、凄く感謝しているんですから!」


 と、春風は「ちょっと待った!」と言わんばかりに割り込みながら言った。そんな春風を、


 「ふ、フーちゃん……」


 「春風君……」


 と、歩夢と美羽は今にも泣きそうな表情で見つめた。否、彼女達だけじゃなく他のクラスメイト達も、本当に悲しそうな表情で春風を見つめていた。


 やがて、食堂内が一気に重苦しい空気に包まれると、


 (い、いかん! 俺の所為ですっごい暗い雰囲気に!)


 と、春風はこうなってしまった事に責任を感じて、


 「アマテラス様! ヘリアテス様! ちょっと失礼します!」


 と、アマテラスとヘリアテスに向かってそう言った。


 それを聞いて、2柱の女神が


 「「あ、どうぞ」」


 と、許可を出すと、春風は「ありがとうございます!」とお礼を言って、


 「イヴリーヌ様、お顔を上げてください」


 と、イヴリーヌに向かって声をかけた。


 その言葉にイヴリーヌがピクッと反応すると、


 「確かに、俺達異世界人を巻き込み、俺達の故郷までも危険に晒したあなた方や、あなた方が敬う『神々』を、俺は許せませんし、『絶対に償いをさせる!』という思いもあります」


 と、春風はそう言い続けた。その言葉を聞いて、


 「そう……ですよね」


 と、イヴリーヌは顔を下に向けたまま、震えた声でそう言ったが、


 「ですが、この世界で暮らして……と言ってもまだ2ヶ月ですが、良い出会いもありましたし、かけがえのない大切なものも出来ましたし、もっと言えば『人々から信仰を奪いたくない』って思ってもいるんですから」


 と、春風は「はは……」と笑いながらそう言い続けたので、その言葉を聞いたイヴリーヌは、ゆっくりと顔を上げて春風を見た。


 大粒の涙を流しているイヴリーヌに、春風は「う……」と呻いたが、すぐに顔を横に振るうと、


 「ですからぁ、そのぉ。もしよろしければですが、イヴリーヌ様が知ってるウィルフレッド陛下や、マーガレット王妃様にクラリッサ姫様の事とか……というより、ルーセンティア王国について、教えて欲しいんです」


 と、ニコッと笑いながら言った。


 その言葉にイヴリーヌが「え?」となると、春風は歩夢達を見て、


 「勿論、みんなからも、みんなが知ってるルーセンティア王国について教えて欲しいんだ。ほら、俺ってば、この世界に来て早々にあそこ出て行ったから」


 と、「いやぁ、参った参ったぁ」と言わんばかりに頭を掻きながら申し訳なさそうに言った。


 その言葉にクラスメイトの1人が「オイオイ……」と呟くと、イヴリーヌはクスッと笑って、


 「はい。わたくしでよろしければ」


 と、春風に向かって笑顔でそう言い、


 「……ったく、しょうがねぇなぁ」


 「うん、いいよ!」


 と、クラスメイト達も呆れつつも笑顔でそう言った。


 そんな彼を見て、


 「はは、ありがとう」


 と、春風も笑顔で再びお礼を言った。


 


 


 


 


 


 


 


 


 

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