第106話 春風vsエヴァン・2
お待たせしました、1日遅れ投稿です。
春風と仲間達が拠点にしている家の地下。
幾つもの部屋があるその地下の中でも特に広い部屋の中で、春風とエヴァンの戦いが始まろうとしていた。
「それでは……いざ尋常に、始め!」
と、2人の間に立つ凛咲がそう宣言したすぐ後、
「『アクセラレート』! 『ヒートアップ』! 『プロテクション』!」
春風は自身に、風、炎、土属性の強化魔術をかけた。それを見て、
「え、風と炎と土の魔術!?」
「凄い! ギデオンって人の話、本当だったんだ!」
「す、凄いです!」
と、クラスメイト達とイヴリーヌが驚きに満ちた表情になり、
「あら! 凄いわぁ春風ちゃん!」
「ええ。しかも見たところ……」
「彼の周囲の魔力も安定しています。あそこまで綺麗な魔力は見た事もありません」
と、キャロラインら皇族達は、春風の魔術の扱いを見てそう感心していた。
一方エヴァンはというと、
「スキル[鉄壁]!」
と、春風が魔術を発動させたのと同時に、自身が持つスキルを発動させた。その瞬間、エヴァンの全身が青白いエネルギーに包まれたので、それを見て、
「おお! エヴァンは防御力を上げたか!」
と、ヘクターは少しだけ大きく目を見開き、
「……」
ルイーズは無言で心配そうに弟であるエヴァンを見つめていた。
まぁそれはさておき、お互い準備を終え、戦闘態勢に入った2人はお互い睨み合った後、同時に目の前の相手に向かって駆け出した。
春風はエヴァンに向かって杖を槍のように突き出し、エヴァンはそれを盾で受け止めた後、反対の手に持っていた剣を春風の頭上に振り下ろした。
このままいけば、刃が春風の脳天を叩き斬る事になるのだが、
「ふん!」
ーーガキィン!
「う!」
春風はそれを、左腕の銀の籠手で弾いた。タイミングが良かったのか、エヴァンは後ろに仰け反ってバランスを崩しそうになった。
それを見逃さなかった春風は、右手に持ってた杖を左手に持ち替えると、エヴァンに詰め寄って空いた右手でエヴァンの頭部を掴み、床目掛けて叩きつけた。
「ぐはっ!」
「エヴァアンっ!」
頭部に強い衝撃を受けたエヴァンを見て、ルイーズが悲鳴をあげた。
そんなルイーズを無視して、春風は更にエヴァンに攻撃を仕掛けようとしたその時、
「シールド……スマッシュ!」
「っ!?」
エヴァンは左手に持ってた盾で反撃してきた。
咄嗟に右腕でそれを防御する春風。
かなりの力が入ってたのか、反撃を受けた右腕からミシミシと音が鳴った。
そして、その一撃で春風は吹っ飛ばされそうになったが、左手の杖を床に突き立ててどうにか踏ん張る事に成功した。
しかし、
「ぐ……」
先程受けた一撃が大きかったのか、思うように右腕が動かない。
春風はすぐに回復魔術をかけようとしたが、
「はぁあ!」
「っ!」
いつの間にか体勢を立て直していたエヴァンが、春風のすぐ傍まで来ていた。
ダメージを受けている春風に、エヴァンが持つ長剣の切先が迫る。
このままいけば、間違いなく長剣が春風を貫くのだが、
「『ロックブロック』!」
春風はそれよりも早く、土属性の防御魔術「ロックブロック」を発動した。
春風の眼前に、岩で出来た壁が現れ、それがエヴァンの剣を防ぐ。
春風はその隙を突いて、
「ヒールブリーズ」
と、自身の右腕に風属性の回復魔術「ヒールブリーズ」をかけた。
ダメージを受けた右腕が、風の魔力に包まれる。
その後、右手を閉じたり開いたりして、
(よし、動くぞ!)
と、右腕の自由を取り戻したのを確認した春風は、次に自身の右足に風の魔力そ纏わせた。
これは魔術ではない。あくまでも、風属性の魔力を纏わせただけである。
その瞬間、エヴァンは危険を察知したのか、すぐにその場から後ろに下がった。
そんな中、春風は風纏わせた右足で、
「せいやぁ!」
なんと、先程自身が魔術で出した岩の壁を思いっきりキックした。
すると、岩の壁は風の蹴りを受けて見事に砕け散り、その中の幾つかの破片が、エヴァンに向かって飛んだ。
「な! ちぃっ!」
思わぬ事態にエヴァンは咄嗟に盾を構えて岩の壁の破片を防ぐ。
そして、もう止んだかと思ったエヴァンが、前を見ようとして盾をずらすと、
「よう」
「はっ!」
既に春風が目の前に来ていたので、エヴァンは思わず硬直してしまった。
次の瞬間、春風は両腕でエヴァンの右腕を掴むと、
「うおりゃあああああああっ!」
エヴァンを背負って、床に向かってぶん投げた。
「ぐはぁあああああっ!」
今度は背中に強い衝撃を受けて、エヴァンは思わず悲鳴をあげる。
そんな状況を見て、
『せ、背負い投げだぁあああああ!』
と、クラスメイト達は興奮と驚きに満ちた叫びをあげた。
そんな彼らを無視して、春風は床に叩きつけたエヴァンが起き上がらないようにしっかりと押さえつけると、
「まだやりますか?」
と、エヴァンに向かって尋ねた。
その質問に対して、エヴァンはゆっくりと口を開く。
「お……お前も……」
「?」
「お前も、彼女と同じ意見なのか?」
ちらりとレナを見ながらそう尋ね返してきたエヴァン。
その質問を聞いて、春風はエヴァンが「彼女と共に神を殺すのか?」と尋ねてきたのだと理解して、
「レナやヘリアテス様には悪いと思ってますけど、今の所、『殺したくない』って思ってますよ。あなた方にとっては、連中こそが『本物の神様』ですから。ですが無関係な俺達を巻き込み、俺達の故郷を危険に晒した連中を許す事は出来ませんから、思いっきりぼこぼこにする事だけは決定事項ですね」
と答えた。
それを聞いて、
「……それは、ウィルフレッド陛下達も含まれているのか?」
と、エヴァンが再びそう尋ねると、
「いやまぁウィルフレッド陛下達は実行犯なんでしょうけど、そこまでする気はありません。ああ勿論、それなりに『償い』はしてもらいますけどね」
と、春風は「はは……」と笑いながらそう答えた。
その答えを聞いて、エヴァンは何かを感じたのか、
「……そうか」
と、弱々しくそう呟いた。
その後、
「で、もう一度聞くけど、まだやりますか?」
と、春風がまたエヴァンに向かってそう尋ねると、
「……いや、私の負けだ」
と、エヴァンが自身の「敗北」を認めたので、
「それまで! 勝者、春風!」
と、凛咲はそう叫んだ。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の展開を考えていたら、結局1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。