第105話 春風vsエヴァン
本日、2本目の投稿です。
「あの日のリターンマッチ、する気はありませんか?」
と、エヴァンに向かってそう言った春風は現在、仲間達とクラスメイト達、ヘリアテスとアマテラス、そしてイヴリーヌ達やキャロラインら皇族達と共に、春風と仲間達が暮らす家の地下室にいる。
「……いや広ぉ! 何ここめっちゃ広いんだけど!?」
と、鉄雄が驚いてそうツッコミを入れたように、今春風達がいるのは、正確に言うと幾つかある地下室の中でも特に広い一室で、広さ的には総本部の小闘技場くらいあるんじゃないかと思う程だった。
(何で地下にこんな広い空間があるんだろう?)
と、春風は部屋を発見した当初はそう思っていたのだが、調べてみたところ特に悪いものはなかったので、「ま、いっか」と気にする事をやめた。
まぁそれはさておき、そんな小闘技場程の広い部屋で、今、春風とエヴァンによるリターンマッチ(的なもの?)が行われようとしていた。
壁際ではレナや歩夢達などが、部屋の中央に立つ春風とエヴァンを心配そうに見つめていた。
春風の方は青いローブを纏い、頭にはゴーグルをつけ、左腕には白銀に輝く籠手と、いつもの戦闘時の格好だ。因みに、愛用の杖も持っている。
対してエヴァンはというと、ルーセンティア王国の騎士の証でもある白い鎧を身に纏い、左手には金で縁取られた白い円型の盾を持ち、腰には鞘に納まった長剣を下げている。
ただ、その表情は何処か戸惑っている様子で、
「……ちょっと、良いだろうか?」
と、エヴァンは春風に声をかけた。
それに春風が、
「ん? 何ですか?」
と返事すると、
「『やる』と答えておいてこんな事をいうのもなんだが、本当に良いのか?」
と、エヴァンは何処か申し訳なさそうな表情でそう尋ねてきた。
あの質問の後、エヴァンは少し考えて、
「ああ、やる」
と答えると、
「オッケー。じゃ、準備してください」
と、春風はあっさりと戦う場所まで用意し、現在に至る。
エヴァンの質問を聞いて、
「良いですよ。俺自身も色々とある訳ですし、何より……」
「?」
「やられっぱなしなんて、それこそ騎士の誇りが許さない……でしょ?」
と、春風は笑顔でそう答えたので、その言葉に思うところがあったのか、
「……ああ。当然だ」
と、エヴァンは「覚悟を決めた」と言わんばかりにキリッとした表情になり、長剣を鞘から引き抜き、構えた。
それと同時に、春風も真っ直ぐエヴァンを見て、杖を構える。
そんな2人を、その場にいる者達全員がゴクリと唾を飲みながら見つめていると、凛咲がスタスタと歩き出して、2人の間に立った。
「それじゃあ2人とも、準備は良いわね?」
と、凛咲が春風とエヴァンを交互に見ながらそう尋ねると、
「あぁ、すまない。1つ質問をしていいだろうか?」
と、エヴァンがそう口を開いたので、春風と凛咲が頭上に「?」を浮かべていると、
「一応聞くが、この戦いはスキルと技の使用はありだろうか?」
と、エヴァンは少し恐る恐るといった感じで再びそう尋ねてきたので、
「ええ、構いませんよ。この部屋を見つけた時からかなり頑丈に作り変えましたから、ちょっとやそっとの攻撃じゃびくともしません」
と、春風は「はは……」と笑いながらそう答えた後、
「だから……全力でかかってきてください」
と、すぐに真面目な表情になって、まるで挑発するかのように言った。
その答えを聞いて、エヴァンは「そうか」と呟くと、
「ならば……全力でいかせてもらう!」
と、キッと春風を睨みながら言って、手に持っている長剣の柄を握る力を強くした。
そんなエヴァンを見て、春風も真っ直ぐエヴァンを見ながら、杖を握る力を強くした。
そして、凛咲はそんな2人を再び交互に見ると、
「それじゃあ2人とも、改めて準備は良いわね?」
と、尋ねたので、春風とエヴァンはお互いを見ながら無言でコクリと頷いた。
それを見た後、
「それでは……いざ尋常に、始め!」
と、凛咲はそう叫んで、2人の戦いを始めた。