第101話 「神」・2
「私は天照大神。日の本の『太陽』を司る女神。『アマテラス』って呼んでいいからね」
そう自己紹介したアマテラスに、「勇者」ことクラスメイト達は勿論、イヴリーヌ、キャロライン、レオナルド、アデレードは、何も反応出来ないでいた。
当然だろう。いきなり春風のスマホが鳴り出し、それに春風が出た後、そのスマホからワイシャツとジーンズ姿の美女が現れたのだから、そんな状況故に、彼らはどう反応すれば良いのかわからなくなったしまったのだ。
しかし、それからすぐに、
「え、えぇっと、『天照大神』って確か、私達の祖国『日本』の主神でしたよね?」
と、はっと我に返った美羽がたらりと汗を流しながらそう尋ねてきたので、
「ええ、そうよ。私が日本の主神……神様の、天照大神。あぁ、さっきも言ったけど、『アマテラス』って呼んでいいからね」
と、アマテラスは「ふふん」と胸を張ってそう答えた。
すると、その答えに反応したのか、
「あ、あの! 本当に……神様なんですか?」
と、同じく我に返った歩夢もそう尋ねてきたので、
「だから言ってるでしょ? 私はあなた達の故郷『地球』の神の1柱だってば」
と、アマテラスは「信じてよぉ!」と言わんばかりに頬を膨らませながらそう答えた。
その答えを聞いて、クラスメイト達が「は、はぁ」と声をもらすと、全員一斉に春風方を見て、
「おいいい雪村ぁ! これ一体どういう事だぁ!?」
「そうだよ! 何でここに『日本』の主神様が出てきたの!?」
「ていうか、そのスマホ! 何で雪村君ここでスマホ使えるの!?」
「あたしらのスマホ、全然動かないんだぞ!」
「雪村君、なんかずるい」
と、若干混乱している様子で春風に詰め寄った。
春風はそれに「うわ!」と驚きながらも、
「あー、みんな取り敢えず落ち着いて、その辺りについては、ちゃんと説明するから」
と、「どーどー」と言いながらクラスメイト達を落ち着かせた。
その言葉を聞いて、みんな「わかった」と言わんばかりに頷くと、落ち着いた様子で春風から少し離れた。
そんなクラスメイトに向かって、春風は「よし」と頷くと、
「まずみんな、この方は俺達の祖国『日本』の主神アマテラス様で間違いないよ」
と言った。その言葉にクラスメイト達は「うぅ」と呻きながらも、全員アマテラスに視線を向けた。
そしてそれからすぐに、クラスメイト達はアマテラスから「何か」を感じたのか、皆、落ち着きを取り戻したかのような表情になった。
その表情を見て、
(あ、これ『信じる』って顔付きだ)
と、春風はそう思うと、手に持っている魔導スマホを見せながら話を続ける。
「そしてこいつはね、アマテラス様を含めた『地球の神々』によって改造されたんだ」
『な、なんだってぇえええええ!?』
「で、その後『見習い賢者』の力に目覚めた俺が更に改造した、俺のオリジナル魔導具第1号なんだ」
『な、なんだってぇえええええ!?』
「因みに、これを媒体に魔術も発動出来る」
『にゃ、にゃんだってぇえええええ!?』
春風の説明を聞いて、クラスメイト達はそう絶叫した。その中でも、歩夢、野守恵樹(以下、恵樹)、遠畑耕(以下、耕)、時雨祈(以下、祈)、夕下詩織(以下、詩織)の5人は大きく目を見開いていたので、
(あ、もしかして5人とも『魔術師』かそれ系の職能でも持ってるのかな)
と、春風はそう考えた。
その後すぐに、
「ず、ずるいぞ雪村ぁ!」
「そうだよ! なんか羨ましいよ!」
「なぁ、俺のスマホも出来ねぇか!?」
「あ、なら私も!」
「わ、私も、お願い!」
と、皆一斉に自分のスマホを取り出しながら、再び春風に詰め寄った。そんな状況の中、
(あ、みんなスマホちゃんと持ってたんだ)
と、春風はそう感心していると、
「はいはい、みんな落ち着いて」
と、アマテラスが手をパンパンと叩きながらそう言ってきたので、それを聞いたクラスメイト達は一斉に
静かになった。
それを見て、アマテラスは「うんうん」と頷くと、
「日本の子供達。全員じゃないけど、こうして無事でいてくれて、本当によかった」
と、クラスメイト達を見回しながら、真面目な表情でそう言うと、
「あの時助けられなくて、本当にごめんなさい」
と、深々と頭を下げて謝罪した。
それを聞いた瞬間、クラスメイト達は「勇者召喚」の時の事を言ってるのだと考え、
「あ、ああ、そんな! 頭を上げてください!」
「そ、そうです! 私達こうしてピンピンしてますし!」
と、皆、大慌てでアマテラスを慰めながら、「頭を上げてください!」とお願いした。
そのお願いが届いたのか、アマテラスはゆっくりと頭を上げて、
「ふふ、みんなありがとう」
と、穏やかな笑みを浮かべると、
「さてと……」
と、すぐに再び真面目な表情になって、
「次は、こっちね」
と、イヴリーヌ、キャロライン、レオナルド、アデレードに視線を向けた。