第98話 そして、「邂逅」の時へ・2
春風と仲間達が暮らす家の前で、ちょっとした修羅場が展開されている中、玄関の扉ががちゃりと開いたので、その場にいる者達が「ん?」とそちらに視線を移すと、
「あ、兄ちゃんにハル兄ぃ、レナ姉ちゃんにマリー師匠、おかえり!」
扉の向こうからディックの弟ピートが顔を出してきたので、
「ただいま、ピート」
と、春風は笑顔でそう言ったが、
「……って、あれ? なんかいっぱい来てる!?」
と、ピートは春風達周囲にいる人達(クラスメイトや王族、皇族)に気付いて、驚きの声をあげた。
そんなピートに向かって、
「こらピート。お客様だ」
と、ディックがそう言うと、ピートははっとなって恐る恐る玄関から出てきた。
そして、ピートは春風達の傍まで近づくと、ちらりとクラスメイト達や王族・皇族達を見て、そそくさとディックの後ろに隠れてしまったので、
「大丈夫だピート。この人達は怖くないから」
と、ディックは優しくそう言った。そんなディックの言葉に、
「え、俺ら『怖い人』って思われてる?」
と、クラスメイトの1人がショックを受ける中、
「そうだよピート。この人達は、俺の故郷の人間だから」
と、春風は穏やかな笑みを浮かべ、クラスメイト達を見ながらピートに向かってそう言った。その言葉を聞いて、
「え、もしかしてハル兄の話に出てきた勇者様達なの!?」
と、ピートが再び驚きの声をあげると、それに反応したのか、
「どうもはじめまして! 『勇者』の暁鉄雄だよ!」
漫画とかに出てくる「熱血漢」を思わせる風貌の少年が、
「同じく『勇者』の野守恵樹だよぉ。フレンドリーに、『ケータ』って呼んでね」
眼鏡をかけた「お調子者」を思わせる風貌の少年が、
「同じく『勇者』の、近道進! よろしくな!」
目付きの悪そうな小柄の少年が、
「遠畑耕だよ。同じく『勇者』ね」
少し気の弱そうな顔付きをした大柄の少年が、
「私、出雲祭! 『勇者』だよ!」
三つ編みをした栗色の髪の少女が、
「あたしは晴山絆。同じく『勇者』な」
背の高いショートヘアの気の強そうな少女が、
「わ、私、時雨祈。同じく『勇者』です」
長い黒髪の大人しそうな少女が、
「夕下詩織。『勇者』」
祈や歩夢程ではないが、長い髪をした物静かな雰囲気の少女が、一斉にピートに向かってそう自己紹介した。よく見ると、彼らの目がキラキラと輝いていたので、
(あぁ、きっとピートに『勇者様』と呼ばれて嬉しかったんだろうな)
と、春風はそう考えた。
そして、暁ーー以下、鉄雄達の自己紹介の後、
「『勇者』の海神歩夢です」
「天上美羽。同じ『勇者』よ」
「同じく『勇者』の桜庭水音。よろしくね」
と、歩夢、美羽、水音も、ピートに向かってそう自己紹介した。
さて、「勇者」達の自己紹介が終わって、ピートは「あ、あの……」と戸惑っていると、
「ピート」
と、春風はピートに「大丈夫だからね」と言わんばかりの優しい顔でそう話しかけた。その顔を見たピートは、チラリとディックの方を見たが、
「(コクリ)」
と、ディックは無言で頷いたので、ピートは意を決したのか、ゆっくりと深呼吸すると、
「は、はじめまして、ディック・ハワードの弟の、ピート・ハワードです。兄と共にハル兄……雪村春風さんのお世話になってます。よろしくお願いします」
と自己紹介すると、最後に「勇者様」達こと鉄雄達に向かって、深々と頭を下げた。
そんなピートを見て、
「あらあらぁ、これはご丁寧な挨拶ねぇ!」
と、表情を明るくしたキャロラインがそう口を開き、
「はじめまして、ストロザイア帝国皇妃のキャロラインよ。そして、息子のレオナルドに、娘のアデレード。よろしくね、ピートちゃん」
と、ピートに向かってレオナルドとアデレードを巻き込む形でそう自己紹介した。
それを聞いて、ピートがまた「え?」となると、
「そして、わたくしはルーセンティア王国第2王女のイブリーヌと申します」
と、最後にイヴリーヌもそう自己紹介したので、
「……は! ご、ごめんなさい……いえ、挨拶が遅れてしまい、申し訳ありませんでした! ピート・ハワードと、申しましゅ!」
と、ハッと我に返ったピートはキャロライン達に向かって謝罪しながらそう自己紹介したが、最後の方で舌を噛んでしまい、痛そうにしていた。
そんなピートの様子を見て、
「な、なぁ雪村」
と、鉄雄が話しかけてきたので、
「ん? 何?」
と、春風が返事すると、
「もしかして、あのピートって子も?」
と、鉄雄が小声でそう尋ねてきたので、
「うん。一緒に暮らしてるもう1人の『家族』みたいな存在……かな」
と、春風は気まずそうにそう答えた。
その答えを聞いて、
『お、お、弟第2号だとぉおおおおお!?』
と、鉄雄だけでなく他のクラスメイト達までもがショックを受けた。
それを見て、
「え、ええっとぉ……」
と、春風が何とも言えない表情になっていると、
「ゆ、雪村君!」
と、今度は野守ーー以下、恵樹ががしっと春風の肩を掴んできたので、
「な、何、野守君?」
と、春風が恐る恐る返事すると、
「ほ、他には? この子達以外に一緒に住んでる人はいるの!?」
と、恵樹は春風に向かってゆっさゆっさと揺すりながらそう尋ねてきた。
その質問に、春風が「そ、それは……」と更に気まずそうな表情になると、
「……あの、誰か来てるんですか?」
と、また玄関の扉から、1人の人物が顔を出してきた。
謝罪)
大変申し訳ありません。この展開をまとめていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ませんでした。
本当にすみません。