表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第4章 そして、「再会」の時へ
118/220

第86話 「再会」の時・2


 「フーちゃんだよぉ! ほんとにフーちゃんだよぉ!」


 (ど、どうしてここにユメちゃんが!?)


 目の前でわんわんと泣き叫ぶ少女に、春風は困惑の表情を浮かべながらも、彼女について思い出す。


 「ユメちゃん」。本名、海神(わだつみ)歩夢(あゆむ)


 春風のクラスメイトにして、エルード(この世界)に召喚された「勇者」の1人。


 そして、春風の5歳の頃からの幼馴染みにして……春風の()()()()()1()()


 「ルール無視の勇者召喚」があったあの日、ルーセンティア王国に置いていった筈の彼女が今、こうして目の前にいる事に春風は驚いているが、それと同時に、


 (よかった。また、会えた)


 と、心の中では嬉しい気持ちになっていた。


 しかし、


 「……はっ! そうじゃなくって! えっと、ユメちゃん」


 「ひっぐ……なぁに?」


 「俺の事、わかるの? 俺、見た目とか結構変わってるのに?」


 すぐに我に返った春風が、ユメちゃんこと海神歩夢……以下、歩夢に向かってそう尋ねると、


 「わかるもん! だって、フーちゃん()()()()()!」


 と即答されてしまい、


 「それは、俺が()()()()って言いたいのかなぁ!?」


 と、春風はガーンとショックを受けた。因みに、歩夢の後ろで誰かが「ブッ!」と吹き出したのが聞こえたので、春風はすぐに「誰だ今吹いたのは!?」と叫びたかったが、今は目の前の歩夢に集中する事にした。


 そんな春風の心境を知らない歩夢は、バッと春風の胸に飛び込んできたので、


 「ちょ、ユメちゃん……!」


 と、驚く春風だったが、


 「会いたかったよぉ、フーちゃん!」


 と、歩夢が泣きじゃくりながらそう言ったので、


 「え、えぇっとぉ、何でここにユメちゃんがいるのかなぁ?」


 と、春風は恐る恐るそう尋ねる事にした。


 すると、


 「『なぁんで』?」


 と、歩夢の背後から別の少女のものと思われる声がしたので、


 (え? い、今の声は……)


 と、春風が恐る恐るその声がした方を見ると、


 「……」


 そこには、明らかに「怒り」のオーラを纏っている、眼鏡をかけた長い茶髪の少女がいたので、


 「み、美羽さん!?」


 と、春風は思わずその少女の名前を呼びつつ、彼女の事を思い出し始めた。


 彼女の名は、天上(てんじょう)美羽(みわ)


 歩夢と同じく春風のクラスメイトにして「勇者」の1人。


 そして……春風の()()1()()()()()()()


 (ちょ、ちょっと待って、何でここに美羽さんもいるの!?)


 歩夢だけでなく「美羽さん」こと天上美羽……以下、美羽がいる事に春風が戸惑っていると、美羽はズンズンと怒っている様子で春風に近づき、


 「今まで何してたのよ!? 2ヶ月よ! 2ヶ月も音沙汰なしで、一体何してたのよ!?」


 と、怒鳴るように問い詰めてきた。よく見ると、その瞳からは大粒の涙が溢れていた。


 春風はそんな美羽を見て、


 「え、えーそれはぁそのぉ……」


 と、どうにか答えようとすると、


 「っ」


 と、美羽も歩夢と同じように春風の胸に飛び込んで、


 「ほんとに……心配……したんだから!」


 と、顔を埋めながらそう言ってきたので、


 「……ご、ごめん、美羽さん」


 と、春風がそう謝罪すると、


 「春風」


 と、今度は少年のものと思われる声がしたので、


 (……え? こ、この声は……)


 と、春風は恐る恐るその声がした方へと振り向くと、


 「……」


 そこには整った顔立ちをした濃い茶髪の少年がいたので、


 「み、水音?」


 と、春風はその少年の名を呼び、彼の事を思い出し始めた。


 彼の名は、桜庭(さくらば)水音(みなと)


 歩夢と美羽と同じく、春風のクラスメイトにして「勇者」の1人。


 そして、「師匠」こと凛咲の()()1()()()()()で、春風にとっては弟弟子でもある。


 (ま、まさか、ユメちゃんや美羽さんだけでなく水音まで!?)


 ルーセンティア王国に置いていった筈の3人が、今、こうして目の前にいる事に春風が戸惑っていると、


 「……」


 と、桜庭水音……以下、水音はゆっくりと春風に近づいた。


 そして、春風のすぐ傍まで近づき、


 「み、水音……」


 と、春風が声をかけようとすると……。


 「……っ」


 ゴスッ!


 「ぐふ!」


 何と、水音は無言で春風の腹部を思いっきりパンチした。


 それに周囲が「あ!」と驚く中、


 「み、水音君……一体何を……?」


 と、春風が苦しそうに水音にそう尋ねると、


 「この、馬鹿野郎!」


 と、水音は静かにそう怒鳴った。


 それを聞いて、春風は「え、あ、その……」と苦しそうに何か言おうとしたが、


 (……あ)


 怒っている水音の瞳から、()()()()が流れているのが見えたので、


 「……そう、だね。ごめん」


 と、春風は「はは……」と苦笑いしながらそう謝罪した。


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ