第82話 そして、レギオン(2つ)加入へ
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
「あ、あの! すみません!」
と、突然「はい!」と手を上げながらそう叫んだピートに、春風達は「ん?」と彼に視線を向けた。
「ど、どうしたんだピート?」
と、ピートの兄であるディックが恐る恐るそう尋ねると、ピートは自分のズボンのポケットに手を入れて、
「あの、これ……!」
と、そこから「あるもの」を取り出して、周囲に見せた。
それは、蓋がしてある小さな瓶のようで、中に何か液体が入ってるのが見えた。
周囲の人達は「何だ?」とその「あるもの」を見つめる中、ただ1人、春風だけは、
「あ。俺が作った回復薬」
と、その「あるもの」の正体に気付き、ピートに向かってそう尋ねると、
「は、はい! お兄さんが断罪官と戦ってた時、僕、慌ててこれ1つ落としちゃって、すぐにポケットに入れて、そのまま……」
と、ピートは申し訳なさそうにそう答えると、最後に「ごめんなさい!」と深々と頭を下げて謝罪してきたので、
「そんなに気にしなくていいよ。あの時は本当に助かったんだし、寧ろ、大変な役をやらせちゃって、ごめんね」
と、春風は穏やかな笑みを浮かべてピートを許しながら、自身もピートに向かって謝罪した。
それを聞いてピートが「ああ、そんな!」と焦っていると、
「ちょっとそれ、見せてもらって良いかな?」
と、タイラーがピートが持ってる「あるもの」……春風特製の回復薬が入った瓶を指差しながらそう尋ねてきたので、春風とピートはお互い顔を見合わせた後、
「「は、はい、どうぞ」」
と、その瓶を渡した。
タイラーは「では失礼」と言ってその瓶を手に取り、蓋を開けると、自身の掌に数的垂らし、クンクンと臭いを嗅いだ後、ペロリとそれを舐めた。
そして、目を閉じて少しすると、
「なるほど。これは良い回復薬のようですね」
と呟いて、
「これを君が作ったのですか?」
と、ちらっと春風を見てそう尋ねた。
それに春風は一瞬ビクッとなったが、すぐに真面目な表情になって、
「はい。もうはっきりと答えますが、俺は4種の属性の魔術を使えるだけじゃなく、『錬金術』というスキルを持ってまして、それを使ってその回復薬を作りました」
と、タイラーに向かってそう答えた。
それを聞いて周囲の人達は「え、マジで?」と言わんばかりの表情になる中、タイラーだけは、
「ほう、それは凄いですね。他にも作れるものはありませんか?」
と、落ち着いた表情で再びそう尋ねた。
その質問に対して、春風はすぐに答える。
「まだ小さいものですが、火、水、土、風4種類の『魔石』を作ったり、それを核にした『魔導具』を作れます」
そう答えた後、春風はすぐにスキルで魔石を生み出し、それを核にした魔導具を作った。
この時春風が作ったのは、魔力を流す事によって身を守る『障壁』を作る事が出来る魔導具で、それを見たタイラーは「おお、これはすごい!」と絶賛したのだが、
「う、うーん。これだけでも素晴らしいですが……もうひと押し! もうひと押し何かが欲しいです! 他にも何か出来る事はありませんか!?」
と、タイラーは今にも春風に掴みかかってきそうな勢いなのだが、
「え、えぇ? もうひと押しですか?」
と、春風は困った顔をしながらも、「うーん」と考え込んでいると、
「あ、そうだ!」
と、それまで黙って話を聞いていたレベッカがそう口を開いたので、春風達が「ん?」となってレベッカに視線を向けると、レベッカは春風に向かって、
「なぁ、そういえばアンタ、この子達に何か料理を振る舞ったそうじゃないか。それ作ったらどうだ?」
と、ピートやアメリア達を指差しながらそう尋ねてきたので、
「え、それって……」
と、春風が答えようとすると、
「あら、それは興味深いですね。では、その料理、私達にも振る舞ってもらいましょうか。ああ、作る場所でしたら、ここには職員達の為の食堂がありますので、その厨房をお借りしましょう」
と、オードリーがそう提案してきたので、春風はすぐに「え、待ってくだ……」と抗議しようとしたが、周囲の人達が「自分も食いたい」と言わんばかりの熱い視線を向けてきたので、
「わ、わかりました」
と、春風は早速厨房を借りて、かつてピート達に振る舞ったハンバーガーを作り、それをタイラーだけでなくオードリー達、そして、市役所で働く職員達にも振る舞った。
その結果、
「ようこそ、『黄金の両手』へ。僕達は君を歓迎します」
見事、タイラーは満面の笑みを浮かべながらそう言った。
思わぬ形で合格(?)を貰った春風は、
(こ、こんなんで……良いのか?)
と、タラリと汗を流しながら不安そうな表情になった。
こうして春風は、『紅蓮の猛牛』だけでなく『黄金の両手』の、2つの大手レギオンのリーダーに認められ、異例の「2つのレギオンに入ったハンター」となった。
因みに、
「あぁ勿論、あなた達もですからね」
と、レナだけでなく、何故か「ハンター」としてギルドに登録していないディックまでもが、一緒にレギオンに入る事になったので、
「「え、えぇ?」」
と、2人は首を傾げながらも、春風と共にレギオンに入った。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。
この話の展開を考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ず、結局1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。