第78話 そして、フロントラルへ
お待たせしました、今章最終話です。
そして、いつもより短めの話です。
翌日、ルーセンティア王国王城の前には、数台の馬車と、それに乗り込もうとしている者達、そしてその人達を見送ろうとする者達が集まっていた。
「では、お父様、お母様、お姉様。行って参ります」
と、乗り込もうとしている者達の1人、イヴリーヌがそう言うと、
「ああ、気をつけて行ってきなさい」
「ええ、共に行ってくれる皆様にご迷惑をかけてはいけませんよ、イヴリーヌ」
と、彼女の両親であるウィルフレッドとマーガレットがそう返事した。
そして、
「イヴ……」
と、イヴリーヌの姉クラリッサはそう呟くと、
「っ」
ガバッとイヴリーヌを抱き締めた。
「お、お姉様!?」
と、驚いたイヴリーヌに、
「ごめんね、イヴ。大好きなあなたに、こんな事をさせてしまって」
と、クラリッサは抱きついた状態で謝罪した。そんなクラリッサに、
「お姉様、これはわたくしの意志で決めた事です。お姉様が気にする程の事ではありません」
と、イヴリーヌもクラリッサを優しく抱き締めながらそう返事した。
その言葉にクラリッサは「イヴ……」と小さく呟くと、イヴリーヌを真っ直ぐ見つめて、
「必ず、帰ってきてね。それと……」
と言うと、最後にイヴリーヌの耳元で何かを呟いた。
その何かを聞いて、イヴリーヌはぼんっと顔を真っ赤にした。その後、
「行ってらっしゃい、イヴリーヌ」
と、クラリッサがそう言うと、
「……はい、お姉様」
と、イヴリーヌは笑顔でそう返した。
さて、王族達がそう話し合ってる一方、
「先生、みんな、行ってきます」
「「「「行ってきます!」」」」
と、イヴリーヌと共に行く事になった歩夢、美羽、暁、野守、夕下の5人が、爽子と他のクラスメイト達に向かってそう言うと、
「ああ、みんな、気をつけて行ってくるんだぞ」
と、爽子は歩夢達に向かってそう言った。
しかしよく見ると、その顔は何処か不安そうにしていたので、
「ごめんなさい先生。でも、心配しないでください。私達は、絶対に帰ってきますから」
と、歩夢は真っ直ぐ爽子を見てそう言い、それに続くように、
「そうだぜ先生。それに俺だけじゃねぇ、雪村も一緒だからよ!」
と、暁も明るい口調でそう言った。
すると、
「みんな……」
と、勇者の1人である少年が、歩夢達の前に出た。
何処か申し訳なさそうにしているその少年に向かって、
「正中君……」
と、歩夢が口を開くと、
「ごめん」
と、「正中君」と呼ばれた少年が深々と頭を下げて謝罪した。
その謝罪を受けて、歩夢が「あ……」となんとなく察すると、
「正中君、私達は本当に大丈夫だから、顔を上げて」
と、正中に向かって優しくそう言った。
その後、正中がゆっくりと顔を上げると、
「先生と、みんなをお願い」
と、歩夢がそう言って来たので、
「ああ、わかった」
と、正中はそう返事した。
その後、イヴリーヌと歩夢達、そして彼女達と共に行く騎士達は次々と馬車に乗った。
そして、全員が乗り込むと、
「出発!」
という掛け声と共に馬車が王城の前から進み出した。
ただその際、
「勇者達よぉおおおおお……!」
という叫び声が聞こえたが、馬車の中の歩夢達は、
『しーん』
と、無視を決め込んだ。
それから馬車は王都内を通り、やがて外へと続く門を潜ると、王都の外へと出た。
「……」
馬車の窓の景色を見ながら、歩夢は心の中で呟く。
(待っててね、フーちゃん)
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ここまでの春風のステータス
雪村春風(人間・17歳・男) レベル:25
職能:見習い賢者
所持スキル:[英知][鑑定][風魔術][炎魔術][水魔術][土魔術][錬金術][暗殺術][調理][隠密活動][体術][杖術][槍術][棒術][鎌術][弓術][鉄扇術][暗器術][鍛治][裁縫][細工][調合][嘘発見]
称号:「異世界(地球)人」「固有職保持者」「神(地球)と契約を結びし者」「神に鍛えられし者」「新米ハンター」
どうも、ハヤテです。
という訳で、以上で第2部第3章は終了し、次回からは少しお休みした後、本編の方も暫くお休みして、派生作品新章となります。
皆様、そちらもどうぞよろしくお願いします。