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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第3章 そして、「世界」は動き出す
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第77話 「行く」と決めた者達


 ウィルフレッドの自室での「話し合い」から翌日、王城内謁見の間では、ウィルフレッドら王族達をはじめ、爽子ら勇者達の他に数人の騎士達が集まっていた。


 「……という訳で、話し合いの末、春風殿がいるかもしれない『中立都市フロントラル』に向かう事となり、今、我が娘イヴリーヌ、勇者歩夢殿と美羽殿が行く方向となっているが、皆の意見も聞きたい」


 と、玉座に座るウィルフレッドが、謁見の間にいる者達全員に、昨夜の「話し合い」で決まった事を言うと、爽子、歩夢、美羽以外の勇者達と騎士達が一斉にザワザワとどよめき出した。


 因みに、「フロントラルに行きたい」と言った歩夢と美羽はというと、イヴリーヌの傍に立っている。


 そんな状況の中、


 「あのぉ、先生は行かないんですか?」


 と、勇者の1人である眼鏡をかけた少年が、「はい」と手を上げながらそう尋ねてきたので、


 「勿論、私も行きたいと思っている……」


 と、爽子がそう答えようとしたその時、


 「あ、ごめんなさい先生。先生にはこっちに残って欲しいんですけど」


 と、それを遮るように美羽がそう言ってきた。


 その言葉を聞いて、


 「え、な、何故だ天上!?」


 と、爽子が美羽に向かってそう尋ねると、


 「まだ彼がそのフロントラルにいるかどうかはわかりませんし、先生にはここでみんなの支えになって欲しいんです」


 と、美羽は真っ直ぐ爽子を見てそう答えたので、爽子は「うぐ……」とそれ以上何も言えなくなった。


 そんな彼女達を他所に、


 「イヴリーヌよ」


 と、ウィルフレッドがイヴリーヌに話しかけた。


 「はい、お父様」


 と、イヴリーヌが返事すると、


 「あれから私達も考えたのだが、本当に其方が行くというのか?」


 と、ウィルフレッドが真剣な表情でそう尋ねてきた。ウィルフレッドだけではない、マーガレット王妃とイヴリーヌの姉クラリッサも、心配そうな表情でイヴリーヌに視線を向けてきた。


 しかし、そんなウィルフレッド達を前に、


 「はい、わたくしの意思に変わりはありません」


 と、イヴリーヌは真っ直ぐウィルフレッド達を見てそう答えたので、その表情を見て観念したのか、


 「……そうか。では、イヴリーヌよ、頼んだぞ」


 と、ウィルフレッドは「やれやれ」といった感じでそう言った。


 そんなウィルフレッドに、


 「はい、ありがとうございます」


 と、イヴリーヌは深々と頭を下げた。


 その後、


 「さて、歩夢殿と美羽殿。こうしてイヴリーヌが行く事が決まったが、其方達の方はどうだ?」


 と、ウィルフレッドが歩夢と美羽に向かってそう尋ねると、


 「はい、私達もイヴリーヌ様と共に行きます」


 と、歩夢イヴリーヌと同じように真っ直ぐウィルフレッドを見てそう答えた。隣に立つ美羽も同様だった。


 そんな2人を見た後、


 「それでは、彼女達の他に行くという者はいないか?」


 と、ウィルフレッドは残りの勇者達を見てそう尋ねた。


 それから数秒程、謁見の間が沈黙に包まれていると、


 「俺が行きます!」


 「勿論、俺も行きますよ!


 「……私も、行きます」


 と、勇者達の中から2人の少年と1人の少女が名乗り出た。


 1人は創作物に出てきそうな「熱血漢」を思わせるような雰囲気をした短髪の少年。


 もう1人は先程「はい」と手を上げて質問してきた、眼鏡をかけた「お調子者」を思わせるような雰囲気をした少年。


 そして最後は、歩夢程ではないが長い髪をした大人しそうな雰囲気の少女だ。


 そんな3人を、


 「あ、(あかつき)野守(のもり)、それに夕下(ゆうした)も」


 と、爽子が驚いたように目を見開きながら見つめていると、


 「暁君達……いいの?」


 と、歩夢がそう尋ねてきたので、


 「ああ、海神達だけじゃ心配だからな」


 と、「暁君」と呼ばれた「熱血漢」風の少年がそう答え、それに続くように、


 「そうそう。それに俺達、去年雪村君と一緒のクラスだったし……」


 と、「野守君」と呼ばれた眼鏡をかけた「お調子者」風の少年と、


 「……うん。雪村君も、私達ならきっと話しやすいと思うから」


 と、「夕下さん」と呼ばれた大人しそうな少女もそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「「ありがとう」」


 と、歩夢と美羽は3人に向かってお礼を言った。


 その様子を見て、


 「うむ、それでは他に行くという者はいないか?」


 と、ウィルフレッドがそう尋ねたが、暁達以外に名乗り出た者がいなかったので、


 「そうか。ではイヴリーヌよ」


 と再びイヴリーヌに話しかけた。


 「はい」


 と、イヴリーヌが返事すると、


 「其方と行く勇者達は決まったが、我々としてはやはり心配なので、騎士を数名程連れて行ってほしい。出来れば、其方が最も信頼する騎士達をだ」


 と、ウィルフレッドはそう言ったので、


 「わ、わかりました」


 と、イヴリーヌは「あはは」と苦笑いしながらそう言った。


 その時だ。


 「あの、ウィルフレッド陛下!」


 という声があがったので、ウィルフレッド達が「ん?」と声がした方へと視線を向けると、そこには1人の若い騎士が「はい」と手を上げていた。


 「む、其方は……」


 と、ウィルフレッドが口を開くと、若い騎士はウィルフレッドの前に出て跪き、


 「ウィルフレッド陛下、無礼を承知で申し上げます! 私も、フロントラルに行かせてください!」


 と言った。


 その姿にウィルフレッドは「おお、そうか!」と感心したが、


 『……』


 歩夢と美羽……というより勇者達は、その若い騎士に対して警戒心を抱いた。


 しかし、そんな勇者達を他所に、


 「うむ。ではフロントラルに行く者達は決まったので、出発は明日としよう!」


 と、ウィルフレッドは周囲に向かってそう宣言した。


 


 

 次回で今章最終話(予定)です。

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