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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第3章 そして、「世界」は動き出す
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第68話 ギデオンの報告・2


 「その異端者の名は、雪村春風。固有職能『見習い賢者』の固有職保持者です」


 『……え?』


 ギデオンの口から出たその名前に、王族達や勇者達(あとその他)は目を大きく見開いた。


 その状況にギデオンら断罪官が、「ん? 何だ?」と言わんばかりに頭上に「?」を浮かべていると、


 「……今、其方は何と申したのだ?」


 と、ウィルフレッドがそう尋ねてきたので、


 「陛下、どうかなさいましたか?」


 と、ギデオンがそう尋ね返すと、ウィルフレッドは歯をギリッとさせて勢いよく玉座から立ち上がり、


 「その異端者の名は何と申したと聞いている!」


 と、怒鳴るようにそう返した。


 その怒鳴り声を聞いて、謁見の間にいる誰もがビクッとなったが、ただ1人、ギデオンだけは動じる様子もなく、


 「雪村春風、『見習い賢者』の固有職保持者と申しました」


 と、冷静な表情で真っ直ぐウィルフレッドを見てそう言った。


 その瞬間、ギデオンが嘘を言ってないという事が理解出来たのか、


 「そ、そんな……馬鹿な……」


 と、ウィルフレッドは顔を真っ青にし、まるで力が抜けたかのようにドサっと玉座に座った。


 ウィルフレッドだけではない、彼の家族は勿論、爽子ら勇者達に、ジェフリー・クラーク教主ーー以下ジェフリー、そして、騎士達も、ウィルフレッドと同じように顔を真っ青にした。


 その後、


 「そんな……雪村が?」


 と、爽子がそう呟いたのきっかけに、


 「う、嘘だ……」


 「ゆ、雪村君が?」


 「な、なぁ、おい、『見習い賢者』って……」


 「え、ちょっと待って……」


 と、他の勇者達からそんな声があがり、


 「ば、馬鹿な……馬鹿な馬鹿なぁ!」


 と、ジェフリーが「ありえない!」と言わんばかりの表情でそう喚いた。


 そのあまりの異様な光景に、断罪官達は「何だ?」と全員顔を顰めると、


 「……ギデオン・シンクレア」


 と、ウィルフレッドがギデオンに向かってゆっくりとそう口を開いたので、


 「? 陛下、いかがなされましたか?」


 と、名前を呼ばれたギデオンがそう尋ねると、


 「其方は先程、その別の異端者を()()しようとしたと申したな?」


 と、ウィルフレッドは暗い表情でそう尋ね返した。


 その質問に、ギデオンは「訳がわからん」と言わんばかりに目を細めた後、


 「はい、そうですが」


 と答えると、


  「それはつまり……その雪村春風という人物を()()()()()()……という意味でいいだろうか?」


 と、ウィルフレッドは暗い表情のまま再びそう尋ねてきたので、ギデオンはなんの躊躇いもなく、


 「その通りです。それが我ら断罪官の任務ですから」


 と答えた。


 次の瞬間、


 「うわぁあああああああっ!」


 『っ!』


 その叫び声と共に、勇者の1人である黒髪の少女が、ギデオンに向かって駆け出した。


 「っ!?」


 『大隊長!』


 突然の事に驚いたルークら断罪官の隊員達は、すぐに立ち上がってギデオンの前に立ったが、少女が彼らのもとに着く前に、


 「駄目だ海神!」


 「よせ!」


 「駄目、歩夢ちゃん!」


 と、他の勇者達が彼女を床に押さえつけた。


 目の前で起きてる事にルーク達が戸惑う中、


 「よくも! よくも()()()()()をっ!」


 と、黒髪の少女は押さえつけられてる状態のまま、ルーク達……いや正確には彼らの後ろにいるギデオンを睨みながらそう叫んだ。


 その叫びに周囲が呆然としている中、

 

 「やめるんだ海神さん!」


 「おい、落ち着けって!」


 「駄目だよ海神さん! 落ち着いて、落ち着いて……!」


 と、勇者達は黒髪の少女を宥めようとしたが、


 「殺す! 殺してやる! ぶっ殺してやる!」


 と、黒髪の少女は必死に踠きながらそう叫び続けた。よく見ると、表情は明らかに「怒り」と「憎しみ」、そして強い「殺意」に満ちているが、その瞳からは大粒の涙が出ていた。


 そこで漸く我に返ったのか、


 「い、いかん! 騎士達よ、彼女を頼む!」


 と、ウィルフレッドが騎士達に向かってそう命令し、


 『は、はっ!』


 と、命令を受けた騎士達は、黒髪の少女を引き摺るように謁見の間から連れ出した。勿論、勇者達の中から数人程、騎士達を手伝って黒髪の少女を連れ出していたが、その際、


 「離せ! 離してぇ!」


 と、最後まで黒髪の少女はそう叫び続けていた。


 その後、少女が騎士と勇者数人に連れていかれて、謁見の間の扉がばたんと音を立てて閉まると、謁見の間は静寂に包まれた。


 その場に残されていたのは、ウィルフレッドら王族達とジェフリーに断罪官、それと他の勇者達に、騎士数人で、皆、謁見の間扉をじぃっと見つめていた。


 それから少しして、


 「さて、一体何処から話せばいいのだろうなぁ」


 と、ウィルフレッドは疲れた表情でそう呟いたが、


 『……』


 残念な事に、それに答える者は誰もいなかった。

 前回の話を一部修正しました。

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