06話 薔薇美しき中庭に地下牢へ続く扉あり。
今何時だろ。
目覚まし時計なく、たっぷり睡眠をとっての自然起床。服は上下お揃いの黒のレース下着のみ、白いベッドの上でゴロゴロと行ったり来たりする。
「はぁー。」
もっと眠っていたい。
ゆっくりと体を起こして、ユラユラと酔っ払いのように歩き、部屋の窓枠に手をかけてカーテンを開ける。
光が眩しい。目の前に広がる街並みに心臓がドクンッと跳ねる。まだこの光景に慣れそうにないかな。
ベルバラは窓枠に両腕を乗せて、街並みを眺めていた。
さて...と、図々しいにも程があるけど、朝食をーーー別にお腹空いてないかな。
それなら、どうせ予定なんてないし第三王子のエリスに会ってこようかな。地下室っていってたし、夜は不気味で行きたくないから朝のうちに済ますのもありかも。
カーテンを閉め、椅子にかけていた黒装束を手にとって羽織るようにして身につける。
そういえばこの十字架がついたネックレス、どこかカチャカチャとした感じでオモチャっぽい?のだ。ま、とりあえずこれは服の中に隠して、髪を後ろにやってフードを被る。
さて、第三王子のところまでは侍女が案内してくれるんだっけ?
部屋を後にして、適当に廊下を歩いていると、あの赤い髪の女性、たしか名前をローザといった女性が歩いていた。
「ローザさん!」
「...なにかしら?」
「これから第三王子のエリス様の元にお伺いしたいのですが、ご案内をお願いしたくて、今時間は空いていますでしょうか?」
「ギルベルト様から話は聞いておりますわ。今案内しますわ。」
「ありがとうございます。」
ローザの後をついて中庭に出た。そこは外からでも見て分かったように、本当に色鮮やかな薔薇が花開いていた。その薔薇は私の知っている姿をしていた。街の至るところにある大樹とは違い、茂みのようなところから生えていたのだ。
薔薇が咲き誇る中庭。そして日差し避けの屋根がついた休憩スペースまであり、そこにはテーブルと椅子まであった。
一度くらいはあそこで、読書でもしながら紅茶でも飲んでみたいものだ。
難しい小説は読めないから、恋愛とか、ファンタジーものの小説に限るけど。それに紅茶は紅茶の味が無理で飲めないから、代わりに甘いジュースを飲みたいかな。
...いや、これ完全に形だけじゃん。でも形だけでも一度はお姫様プレイやってみたいよ。
「ここから先が地下牢となります。」
薔薇に隠されたように、井戸横の地面に簡易的な板が乗せられており、ほんの少しの土と葉が乗っていた。
ローザはこちらですと手で指しているのだが、開ける素振りが見られない。えっ、まさか私が開けるの?汚そうだし触りたくないんだけど。
「それでは、失礼致します。」
「案内ありがとうございます。」
あー、マジで私が開けるんだ。
嫌で顔が引き攣りながらも、なんとか愛想いい微笑みスマイルでローザを見送って、私は袖を捲った。
は、はは、こうなったらヤケクソだ。
完全に土が乗っているわけではなく、多分風とか何かの拍子で乗ったような土と葉が乗っているため、板を掴む取手が見えており、右手でそれを掴んで持ち上げようとするがーーー嘘でしょ!?重すぎ!!今度は両手で取手を掴んで、下半身にグッと力を入れてガニ股スタイルでゆっくりと板を持ち上げると、ザザーッと土と葉が落ち、私は板を近くにおろした。
「ふぅー。」
これで、これでやっと地下室に行ける!!
ーーー私がここまで頑張ってるのは、言われるがままに流されているのは、この城で素敵な王子様と暮らすためである!!
だってせっかく異世界転生したのなら!こんな素敵なお城に来ちゃったのなら!素敵な王子様とらっぶらっぶな生活送りたくない?でも残念なことに、第一と第二は理想の王子様像とはかけ離れており、あと希望があるのは第三王子のエリスだけだ。他にも王子がいるのか分からないけど、この先に囚われの素敵な王子様が~いるんじゃないの~!?