05話 第二王子、女たらし。
第一王子、爽やかイメージ持ってたんだけど。まさかタバコ、異世界でタバコを見るなんて、爽やかどころの話じゃないよ。
それに部屋までの案内も侍女がやってくれると思ってたのに、なにこれ、...第一王子ギルベルトから受け取ったのは、蝋燭とそれを支えるためのホルダーだった。
「これは一体なんでしょうか?まだ蝋燭を使って歩くには早い時間ですが。」
「これは明かりのための蝋燭じゃありませんよ。そもそも廊下は魔法具を使っているためこんな火を使わずとも明るいです。」
「それならこちらは何のために?」
「これも一種の魔法具でして、こうやって向けた方向によって明るさが変わるんです。ベルバラ様の部屋と紐づけておりますので、探検家にでもなった気分で歩かれては如何でしょうか?」
ユラユラとオレンジ色の火が大きさを変えて揺れる。
さっき休まれてはって言わなかった!?第一王子直々の案内が面倒なら侍女はどうしたの!?なんで城の中でダウジングなんてしないといけないの!?
これでなにか面倒なバグとかあったら最悪なんだけど。
手元の火と同じように、オレンジ色の光が廊下に差し込む。異世界転生?1日目がもうすぐ終わってしまう。
静か、というか生活音もなにも聞こえない廊下を歩いていくと、不意に音が聞こえてきた。 静かだからこそ、ヒソヒソとした小さな声すら響いてしまう。誰かの声が、...言葉というより、声が聞こえてきた。もしかして色々な部屋に誰かいるのではなく、どこか一室に何人もの人が集まっている?
その声が近づくにつれ、ピタリと足が地面に張りついたかのようにベルバラの足がとまった。
この声ってまさかーーーその扉の前で生唾を飲み、私は扉に耳を押し当てた。
「っ、んっ、っ、っ、はぁっ、んぅっ♡」
一定のリズムで打ちつける音と女性の上擦った声、この扉の先で...一体なにをしてるの?
口をだらしなく開け、目がまん丸になっていたベルバラは気づかなかった。すぐ後ろにまで誰かが近づいていることに。
「そこ、退いてもらえるかしら?」
「ご、ごめんなさい!」
あっ。
その女性は城門が開いたときに目があった女性で、燃えるような赤い髪、夕陽のようなオレンジ色の目、下着しか身につけてない彼女はグラマラスボディをしていた。
これがメロンおっぱい!?
コンコン。
「レナード様、準備ができましたわ♡」
媚びた声だ。その声を聞いた瞬間、胸の内側からゾクゾクとした悪寒が走った。
ガチャ。中から扉が開き、金髪と水色の目をした男性が顔を出した。第一王子ギルベルトが少女漫画に出てくるようなイケメン髪型に対して、この人は一見すると女性に間違えてしまうほどであった。眉が隠れるほどの前髪は綺麗に揃えられており、後ろ髪は胸辺りまで髪を伸ばしていたが、その胸やお腹には男らしい筋肉があり、秘部に続くエロ線っていうやつまであった。
「ローザ...と、あなたは?」
扉の先には赤い髪の女性と黒装束の女性が立っていた。
赤い髪の女性、ローザは鋭い目でベルバラを一瞥すると、自身の手を伸ばしてレナードの腕に抱きついた。
「ギルベルト様に招待された方みたいですわ。」
「ギルに?」
私のこと話してないのかな?
首を傾げてレナードがベルバラに目線を移したとき、ベルバラの赤い目に魅入られた。
「ーーー...きみが、シスターベルバラ?僕は第二王子のレナード。ギルのお客さんかもしれないけど、なにか困ったこととか、聞きたいことがあったら気軽に声をかけて。僕もベルバラさんと仲良くなりたいな。」
「...ありがとうございます。」
レナードとベルバラが微笑み合う様子を側で見たローザは下唇を噛み、スッと笑顔を作るとレナードの腕を強く谷間に押し当てた。
「レナード様♡早くお部屋に入りましょう?私、もう我慢できませんわ。」
「あぁ、ごめんね。ベルバラさんもいい夜を。」
「...はい。」
少女漫画だって、一人くらいは女に手を出してるキャラいるものね。でも、でもさ、上裸で?汗が浮かんでて?これからヤりますって雰囲気が気持ち悪い。実際に女たらし...イケメンなヤリチンを前にするとこんなにも気持ち悪いんだ。
第一王子ギルベルトはタバコ吸ってて、第二王子はヤリチンときたか、素敵な王子様と駆け落ちする路線は厳しいっぽいな。