03話 夢に見た、花美しき、ローズ国。
門の前に立っていた衛兵を前に、私はこの国に、ローズ国に足を踏み入れたーーー。
衛兵が両門にスッと手の平で触れたとき、ゴオォッという重低音とともに扉が動き出した。何十人で開けるような扉も、この異世界では一人で、それどころか触れるだけで勝手に開けることが可能になってる仕様。
ローズ国。その名に相応しい国の姿が目の前に広がっていた。
平坦ではなく、段差や坂が多い地に、何重にも入り乱れる水路があった。国を囲んでいたのは海だったはず...それなら、この水は海を濾過したもの?透き通った水には色とりどりの鮮やかな花が浮かんでいた。それもそのはず、まるで雨風を凌ぐ傘のような大樹が家にかかっており、何百...何千あり、それらには薔薇のような花が咲いていた。薔薇そのもののように見えるのに、あんな大樹に薔薇が咲くなんてありえないから、薔薇のように、似たなにかに見える。
黒装束に身を包み、口をポカンと開けて間抜けな顔を晒しながら歩くベルバラを、人々は不思議な顔をしてコソコソと耳打ちをしていた。
あれはなにかな?お団子...でも、お花がついてる!後で食べる時間とか...って、お金はどうすればいいんだろ?
「衛兵さん、私はこれからお城で暮らせるのでしょうか?それともどこか別の宿?を用意されているのでしょうか?」
いきなりこんな質問、ちょっと図々しいかしら?
「お城に一室用意されているはずです。」
わぁーお!最高じゃない!!まるでリゾパじゃない!
修道服じゃなくて、黒装束を着ているよく分からない女をお城に置いておくなんて、どこか注意に欠けているような気がするけど、私の気分は最高だから...ヨシ!
「あのお金とかはーーーすごぉい。」
まるで街を見下ろすかのように、崖の上に建つ城。御伽話に出てくるような、お姫様と王子様が今にも出てきそうな夢見たお城が今、私の目の前に!
城の城門は国の両門よりも大きく分厚いものではないけれど、だからといって人一人で開けられるような扉ではなかった。両門と同じ、衛兵がただ手の平で触れるだけで扉が勝手に動き出した。
門が開きーーーガシャンッ!!
突然開いた門に驚いたのか、通り過ぎようとしていた...侍女?がその手に持っていた食器を地面に落としたようだった。
ーーー赤い髪の侍女はまるでバケモノでも見たかのようにベルバラをその目に映し、落とした食器には目もくれず、その場から逃げるようにして走り出した。