02話 だって私が主人公
ーーースッと目を開く。
両の手の平を前に持っていくと、その手は私の手じゃなかった。太陽にあたったことがないような白すぎる肌がそこにはあったのだ。
周囲に目をつけてみれば、車が一台分通れそうな道と緑いっぱいの森。田舎といえば田舎なのかもしれないが、この白い肌とコスプレのような黒装束で2度目の人生だと確信する。
でも、もしこれが2度目の人生だとしたらーーーどうして私は赤ちゃんじゃないんだろうか。それも、150cmくらいの背丈ってことは16歳くらい?いや、低身長な大人っていう線も捨てきれない。
私はあの新人女神様の言葉を思い出す。
「転生先、ローズ国。役職、聖職者ベルバラ。種族ーーー」
緑いっぱいの自然が目の前には広がっていた。国...街はどこにも見えない。
誰もいない。
嫌な予感。まさかこのまま適当に進んで、人がいる街?...あぁ、ローズ国を目指して歩かなくてはいけないの?
と、りあえず、前、振り返って後ろ、同じにしか見えない。……向いてる方を歩けばいいか。
日射しはそれほど強くなく、風も程よく吹いているおかげか汗はかいていなかった。
道はただの砂道で整備された感じではないけれど、底が分厚い黒いブーツをはいているおかげか、歩くのに不便を感じるほどの苦は感じなかった。
かなり歩いたと思うのに、喉は以外にも渇く気配なし。
ーーー1日で辿り着かなかったらどうしようという不安が吹き飛ばされ、私の視界にそれは映った。
海に四方八方を囲まれ、塀によって中を隠されたそれはあった。直感だ。多分あれがローズ国だ。
砂道から石を積み上げられて造られた橋に移り変わる。海に囲まれ、まるで島ごと大きな監獄のように見えてしまうのは、漫画の見過ぎだろうか。
橋の先、両門の前に鎧を着た...がたいのいい男が立っていた。
「どこから来て、このローズ国にはどのような件だ?」
今更だけど、こんな全身真っ黒、黒装束の女なんか通してもらえるんだろうか。
と、とりあえず顔を見えるようにフードを外した瞬間、フワッと揺るやかな巻き髪...金髪が舞い、チャラッと首から下げていたネックレスの十字架が顔を出した。
私の目と衛兵の目線が重なる。
「ーーー...これは、……遠路はるばるご足労ありがとうございます。シスターベルバラ様でありますか。」
ベルバラってあの女神様が言ってた名前だよね!?
「は、はいっ!私がベルバラです。」
「お話は伺っております。それではお城までご案内致します。」
お城って言ったよね!?もしかして、これから絢爛豪華なお城生活が待ってるの!?
異世界転生って言ってたけど、実際は誰かの体から始まった転移っぽいけど、気になることは全部あの女神様が新人ってことで片づけられるよね!?
お城!お城!素敵な王子様が私を待ってるのかしら~!!