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番外編 プレゼント

「ねぇステラ、モリアさん。これとこれとこれ。どれがいいと思うー?」


 私は手に持った青色のリボンと赤色のリボン、そして黄色のリボンの三本を足下にいる二人に見せた。


『メイが選んだやつならどれでも喜ぶんじゃないか』


 ステラの体の上に居座るモリアさんが答える。ステラも同意見なのか私の足に軽く頭突きをしてきた。


「むぅー。そうかもだけどさー!」


 ちょっとくらい意見をくれてもいいんじゃないでしょうか?

 私はぶーぶー文句を言いながらリボンを持つ手に視線を向け、また悩み始める。


 私達はいま三人でセラフィトの町にお買い物に来ています。

 今回は久しぶりにステラとモリアさんの三人でのお出かけ。

 カイルが来てからはいつもカイルが一緒に来てくれてたから、久しぶりの三人でのお出かけはとっても楽しい。

 でも買い物に付き合わされている二人はあんまり楽しくなさそうだけどね。


『ならワシは赤に一票だ。オマエやフェルトス様の目の色でもあるしな』

「にゃるほどー。そういう考え方もあるかぁ」

『あの新入りは想像以上にオマエやフェルトス様に傾倒しとるからなぁ。そんな二人の色なら喜ぶんじゃないか?』


 新入りの目の色でもあるしなと続いたモリアさんの言葉に、愛想笑いを返す。

 そうなんだよね。カイルって普段は普通だけど、実はその普通の裏側におもーい気持ちを隠し持ってるんだよね。それに気付いたのはこの間の旅行のときだけど。


 フェルトス様相手の傾倒なら痣を治してもらったって感謝があるからわかる。

 でも私はカイルに対して特別なことはそんなにしてないつもりだし、なんでそんなに想われてるのかちょっと不思議。


 フェルトス様は神様だしこういう気持ちを向けられることに慣れてるんだろうけど、私はまだまだ慣れない。頑張って慣れようとはしてるんだけどね。


「よし。モリアさんの意見も参考にして考えた結果、この赤色のリボンにしようと思いましゅ!」

『うんうん』


 実は今回カイルへのプレゼントを買いに来ています。

 正式に眷属になったお祝い的なのと、いつもありがとうこれからもよろしくねのプレゼントだ。


 もちろんこのプレゼントはサプライズにしたいので、今回のお供はカイルではなくステラとモリアさんについてきてもらった。

 だからカイルにはお留守番を頼んだんだけど、かなり渋られたし、理由も聞かれて大変だったよ。

 素直に理由を言うわけにもいかないし、なんとか誤魔化そうとしたんだけど心配だからついていくの一点張り。

 最終的には元々カイルがいなかったときは私達三人が普通だったし、何か起きたこともないから心配しすぎって説得して渋々納得してもらったけど。


「カイル気に入ってくれるといいなぁ」

『それは心配ないだろう』

「むふふー」


 買うものを決めた私はお店の人に選んだリボンとシンプルな髪ゴムを渡し会計をしてもらってからお店を後にした。


 次に向かう場所はお馴染みの雑貨屋さん。そこで買ったリボンをプレゼント用に包めるものを買います。

 リボンを買ったお店でも包んでもらえるんだけど、今回はやりたいことがあったので自分で包むことにしました。ぶきっちょだけど愛情だけは込めて精一杯やるので、下手くそでも笑って受け取ってほしい。


 雑貨屋のおじいさんと以前作ってもらったシールのことで盛り上がりつつ、目的の買い物を済ませた私はおじいさんとお別れし今度は町の門へと向かう。

 そして門をくぐった先でお仕事中のノランさんに声をかけて、特別に詰所の中に入れてもらいちょっとした作業に取り掛かる。そうしてノランさんにも見守られつつ無事に作業を終わらせた私は、ラッピング済みのプレゼント袋を満足げに見つめカバンへと片付けた。


 後片付けをし、詰所から出た私はノランさん達門番さんにお礼を伝え、ステラとモリアさんを箒に乗せてお家へと帰る。

 早くカイルの喜ぶ顔が見たくて急いで神域まで帰宅しちゃいました。


 箒を影に片付け、カバンからプレゼント袋を取り出し、意気揚々とカイルの家の扉をノックする。もちろんプレゼント袋はカイルに見つからないように後ろ手に隠しています。


「おかえりお嬢。先輩方もおかえりなさい」

「ただいまカイル!」

『……先回りお疲れさん』

「え、先回――」

「――あぁー! なんでもないなんでもない! 気にしないでくれお嬢!」

「んー?」


 カイルの様子がおかしい。先回りってなんのことだろうか。


 そうそう。カイルは私の眷属になってからモリアさんの声が言葉として聞こえるようになったので、意思疎通が可能になっています。


「そんなことよりお嬢。俺になんか用か?」

「んむ? むふふー。しょうだよー! おうち入っていい?」

「どうぞどうぞ」


 カイルの反応は気になるけど、早くプレゼントを渡したい欲が勝ってしまったのでそっちに意識が切り替わる。

 カイルが扉を開けてくれたので私達はそのままリビングへとたったか向かい、扉を閉めているカイルに早く来いとせっついた。気持ちが先走ってますかね。


「えへへー。はい、カイル。これあげゆ! ちょっと遅くなっちゃったけど、正式に私の眷属になったお祝いのプレゼント! これからもよろしくね!」


 カイルにソファの真ん中に座らせてもらった私は、早速とばかりに隣へ腰掛けたカイルに持っていたプレゼントを渡す。

 ステラとモリアさんは私の隣で丸くなってボケっと私達を見てる。


「……ありがとな、お嬢! 開けてもいいか?」

「いいよー!」


 プレゼントを見てちょっとだけ固まったカイルに一瞬不安になるも、すぐに綺麗に笑ってプレゼントを受け取ってくれたので一安心だ。


「髪ゴムとリボン?」

「うん。カイル最近髪伸びてきたでしょー? あると便利かなって思ったのと、カイルに似合うと思ってさ! よかったら使って!」

「そっか――大切に使わせてもらうわ」

「うん!」


 そしてカイルはそのまま軽く髪をまとめると、真っ赤なリボンをつけて私に見せてくれた。

 カイルは手先が器用だからこういうのを簡単にやってのけるな。


「どうだ?」

「わぁ、素敵! とってもお似合いよカイルー!」

「ふふ……そういやこれ、お嬢の目の色だな」


 私の褒め言葉に嬉しそうに笑うカイル。


「そうだよー。それにフェルトス様とガーラさんのおめめの色でもあるし、カイルの右目もそうでしょ。みんなの色だから赤にしたんだけど、気に入った?」

「……あぁ――すっげぇ気に入った。あんがと、お嬢」

「えへへー。眷属記念のプレゼント。気に入ってもらえてよかった!」


 ニッと笑って私の頭をわしわしと撫でてくれるカイル。

 なんだか想像以上に喜んでもらえたみたいで私も嬉しいです!


『メイ。あのことは言わなくていいのか?』

「あ、わしゅれてた!」

「ん? まだ何かあんのか?」


 モリアさんからの指摘に連絡事項を伝え忘れていたことを思い出した私は、にやつくほっぺを引き締めカイルに向き直る。


「えっとねぇ。実はそのリボンにはちょっとした細工がしてあるんだー」

「細工?」

「うん。それには私の魔力が込めてあって、いざってときはカイルを護ってくれる御守りになってるんだよ。ただし一回だけだけど」

「え、すごっ」

「ふふん! でしょー! だから、使わなくてもいいから体のどこかに身に付けておいてね」


 フェルトス様とガルラさんにカイルのプレゼントの相談をしたときに、この御守りの作り方を教えてもらったのです。それをモリアさん監修のもと町の詰所で実践。頑張りました。


「了解。一生大事にする」

「大袈裟だよー。それに、効果がなくなったらまた魔力込めるし、ぼろっちくなったら新しいの買うから言ってね」

「……なんか、勿体無いから使いたくなくなってきた」

「いや使ってね!?」

「……」

「なんで黙るのー!」


 カイルはそういうとこあるよね! まったく!


 そして軽い攻防の末、渋々であるがちゃんと身につけることを了承させました。


 その後みんなで仲良く温泉に入っていると、途中でフェルトス様達保護者二名も合流。

 久しぶりにフェルトス様とのお風呂にテンションが上がった私はフェルトス様の背中を流して一緒に温泉を満喫しました。ちなみにガルラさんの背中はカイルが担当した。


 ただ大人組はそのまま酒盛りを始めちゃったので、私はステラとモリアさんを連れ先にあがっちゃいました。

 そして服を着たあと大人組が出てくるまで暇だったので、三人でコーヒー牛乳を飲みながらおしゃべりを楽しむ。


 大人達が出てきたら一緒におうちに帰って、ご飯を食べる。

 みんな仲良しで、穏やかな、そんないつもの日常を過ごせることがとっても幸せです!

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