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番外編 ギルバルト君とカイルさん

「ねぇ、カイしゃん。今日ギル君来ゆって」

「ギル君?」


 朝の日課中、久しぶりにトラロトル様の蝶が姿を見せた。

 今までも何回かギルバルト君からの遊びのお誘いがあったんだけど、忙しいのとカイルさんが慣れるまではってことでお断りしちゃってたんだよね。

 でもそろそろ良いかなって思って今回のお誘いはオッケーしました。


「風神しゃまのむしゅこで、わたしのお友達のぎゆばゆと君」

「ふ、風神様のご子息……」

「うん。いい子だかやカイしゃんもしゅぐ仲良くなれるよ」

「あー、うん」


 私の説明を聞き、顔が引き攣ったカイルさんに頑張れと親指を立てておく。

 そろそろ本格的に私の日常が戻ってくると思うからまた慣れていきましょう。


 でもギルバルト君が来るのは私のお昼寝後なので、そのことをカイルさんに伝えて私達は日課に戻った。



「ギル君ひしゃしぶりー! 今までおしゃしょい断ってごめんね」

「おぅ、久しぶり! お前は気にしなくていいぞ。それに、これからはまた遊べるんだろ?」

「うん!」


 久しぶりに会うギルバルト君ときゃっきゃしながら挨拶を交わす。


「トラしゃまもおひしゃしぶりでしゅ!」

「おぅ、久しぶりだなメイ。元気だったか?」

「ふへへ。おかげしゃまで!」


 久しぶりに見るトラロトル様は相変わらずで、わしゃわしゃと豪快に私の頭を撫でて笑ってらっしゃる。


「そりゃ良かった。ところでフェルに聞いたんだが、お前面白いモノを作ったらしいな?」

「う? 面白いもの?」

「あ、それ! 俺様も気になってた!」

「う?」


 トラロトル様の質問に疑問符を浮かべた私に、さらにギルバルト君が乗っかってきた。

 面白いモノ……もしかしてボードレースのことかな?


「フェルしゃまのしゃいきんの流行りといったやボードれーしゅだけど、しょれかなぁ?」

「ボードレース?」

「あい。このくやいの板に乗ってきょうしょうしゅゆんでしゅ」

「あ、それだそれ。俺もやってみたいんだがいいか?」

「俺様もやりたい!」

「もちろんでしゅ。あっちにこーしゅあゆんで行きましょ――っと、しょの前に……お二人に紹介ちたい人がいるんでしゅけど、いいでしゅか?」

「ん? もしかして後ろにいる人間か?」

「あい」


 危ない。危うく紹介し損ねるところだった。

 私は二人に許可をもらってカイルさんをそばに呼ぶ。


「この人はかいりゅしゃんっていって、わたしのお友達兼、護衛をちてもらってましゅ! ほや、自己紹介ちて」

「……カイル、と申します。恐れ多くもメイ様に拾われ、人の身でありながらこうして護衛の任を仰せつかっております」

「うむ、大義である。わかってはいると思うが、メイはフェルトス以外の神々にも可愛がられている。そのこと、ゆめ忘れるでないぞ」

「ハッ!」


 跪いて頭を下げるカイルさんに仰々しく言い放つトラロトル様。

 なんだろう。ここだけ見るとすごく神様っぽいな。


「う? ギル君どちたの?」

「……べつに」


 トラロトル様の後ろでギルバルト君がカイルさんを睨んでいるのを発見してしまった。

 初対面だし、カイルさんはまだ挨拶しかしていない。だからなにがそんなにギルバルト君の気に障ったのかわからず、私は首を傾げる。


「フフッ。メイはしばらくギルの誘いを断っていただろう? その理由がこの人間だから面白くないんだろうよ」

「ふぇ?」


 するとギルバルト君がトラロトル様の後ろから出てきて、ズンズンとカイルさんに近寄ってきた。

 何をするつもりかはわからないけど、いじわるするつもりなら止めないといけない。

 そう思って私がカイルさんの前に出ようとしたら、トラロトル様に視線だけで止められてしまった。

 仕方ないので黙ってカイルさんの隣に立って二人の様子を伺う。


「おい、お前! カイルとか言ったな!?」

「ハッ」

「言っとくけど、俺様の方がメイと早く友達になったし、仲が良いんだからな!」


 ズビシっとカイルさんに指を突きつけ声高々にそう宣言したギルバルト君。

 一体なんの宣言でしょうか?

 たしかにギルバルト君の方が先に友達になったけど、優劣はないよ?


「それにメイは神の眷属で、お前は人族だからそもそも住む世界も違う! メイが優しいからって勘違いするなよ!」

「――ハッ」


 その発言はちょっといただけません。例え事実だとしても言い方ってもんがあるでしょう。

 カイルさんだって人と眷属の違いはわかってるだろうから、いちいち指摘して傷付けるような言い方しなくてもいいと思います。


「むー、ギル君。カイしゃんいじめないで」

「ちがっ! 俺様は別にいじめてないぞ!」

「じゃあいじわゆ言わないで仲良くちて」

「むぅ……わかった」


 意外と素直に頷いてくれたギルバルト君。

 ちょっとガキ大将的なところがあるけど、根は良い子なんだよね。


「ふへっ。ありあとギル君。大しゅき!」

「だっ、大す……ッ!」


 フェルトス様達にするように感謝の気持ちを込めつつ大好きだと告げたら、ギルバルト君の顔が真っ赤になってしまった。


 照れちゃって、かわいいなぁ。


「ふ、ふん! まぁ? メイの友達っていうなら特別に俺様も遊んでやる。ついでに俺様の子分にもしてやるから光栄に思えよ人間!」


 機嫌が直ったのか、むふんと鼻息荒くそうカイルさんに言い放ったギルバルト君。

 そういえば初めて会ったときも私のこと子分にしてやるって言っていたことを思い出した。

 子分を増やすのが好きなのかな。さすがガキ大将。


「ハッ! ありがたき幸せ!」

「カイしゃん。嫌なら断ってもいいんだよ……」


 そんなギルバルト君の宣言に素直に頷いちゃったカイルさんを呆れつつフォローする。

 たしかにカイルさんの立場で断るのは難しいかもしれないけど、意思表示くらいはしてくれたらちゃんと私がなんとかするから安心してほしい。


 そういえば風神親子にカイルさんを紹介したけど、カイルさんには二人を紹介し損ねちゃってることを思い出した私は許可を得てカイルさんに二人を紹介した。


 そして気を取り直して風神親子を広場へと案内し、ボードレースの説明を始める。


 フェルトス様とガルラさん用のボードがボード置き場にあるので二人にはそれを使ってもらいつつ、私も自分のボードを手に取った。

 実は私もフェルトス様達が作ってもらったときに一緒に自分用のボードを作ってもらっていたのです。


 トラロトル様はやりながら覚える派らしくとりあえずボードを乗り回しておられました。

 自分の翼で飛ぶのとはまた違って楽しいと言いながら、ビュンビュンコースを駆け巡ってる。


 反対にギルバルト君はどうにもコツが掴めないらしく、少し時間がかかった。

 どうやら自分の翼以外で飛ぶのに違和感があるみたい。でも慣れてきたらすぐに乗れるようになってたけど。さすがは風神の子。


 そしてなぜかフェルトス様達を呼んでのレースが開催される事になりました。本当になんで?

 ギルバルト君と競争してたらいつの間にかフェルトス様達が来てたんですよ。びっくりした。


「トラロトル。貴様、暇なのか?」

「おぅ!」

「……そうか」

「あ、あはははは」


 元気に言い切ったトラロトル様に、呆れた視線を隠しもせず向けるフェルトス様。

 これにはガルラさんも苦笑いしております。


 フェルトス様対トラロトル様の父親対決。審判はガルラさん。

 そしてそんな保護者達の熱い勝負を、我ら子供組は懸命に応援する。

 私はフェルトス様を。ギルバルト君はトラロトル様を。カイルさんはどっちも。

 私達はそれぞれの親に声援を送り、白熱した試合を観戦する。


 ちなみに勝負の結果は、風の神でもあるトラロトル様の勝利。

 やはり速さ勝負ではトラロトル様に分があったようだ。……ちょっと残念。


 フェルトス様も悔しかったのか、今度また再戦をする約束を取り付けてました。

 うん、次こそは勝ちましょう!


 そのあとは冥界大人組は解散。トラロトル様は帰る時間になるまでお昼寝をすることに。

 我ら子供組とカイルさんは大人組の白熱さには及ばないけど、それなりに楽しく一緒に遊びました。


 そしてトラロトル様が起きてきたので解散することになったんだけど、帰る前にギルバルト君がカイルさんを連れて内緒のお話を始めた。

 男同士のお話だから私はダメって言われちゃったので、大人しくトラロトル様と待ってたんだけどなんのお話でしょうか。気になる。

 トラロトル様はわかるのかなんだかニヤニヤしておられましたけど。


 またもや仲間外れの気配を感じて少しだけ面白くありません。


 しばらくして戻ってきたギルバルト君は、お別れの挨拶をしてすぐにトラロトル様と帰っちゃいましたし。

 そのあとカイルさんに何の話をしていたか聞いてみたんだけど、笑うだけでやっぱり教えてもらえなかった。

 でも嫌な内容じゃないことだけは確かだから、心配はしなくて良いとも言ってくれたのでちょっと安心。


 それにしても最近同じようなことをフェルトス様にも言われたなと思い出しつつ、私はカイルさんともお別れして冥界に帰るのだった。

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