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番外編 ポーション作り

特に記載がない場合、この後の番外編は迷子編終了後の時間軸となります。

「うーん」

「どしたーメイ。難しい顔して」

「あ、ガーラしゃん。うんとねぇ、おしゃけの他に売れる物作れないかなぁって考えてたの」

「売るもの? これまた何で急に」

「カイしゃんのお給料分を稼ごうと思っちぇ」

「はぁー。なるほどねー」


 最近の私の悩み事。それはカイルさんのお給料問題!

 何もしなくてもまだまだお金に余裕はあるんだけど、稼がないと減る一方だしね。

 お酒の売り上げもあるといえばあるけど、もっと安定的に稼げる収入が欲しいのです。


「何かいい物ないかにゃー」

「……なら、ポーションでも作って売るか?」

「ぽーしょん? ポーションって前ガーラしゃんがくれた怪我治るやちゅ?」

「そうそうそれ。ポーションなんていくらあっても良いだろうし売れんじゃね?」

「たしかに。よち、しゃいよう!」

「あざーっす」


 というわけで、ガルラさん指導の下ポーション作りを始めることにした私。

 まずは材料の薬草採取をしに、ガルラさんとカイルさんの二人を連れて町の近くの花畑へと来ました。


「よち。しょれじゃリチェしょうとクラレしょうをしゃがしゅぞー! おー!」

「おー!」

「では私はルコの実を採ってきます」

「よろちくカイしゃん。気をちゅけてね!」

「よろしくカイル君」

「はい」


 私達は手分けして材料を集める。

 私以外の二人は材料がどんな草や実か知ってるけど、私は知らないのでガルラさんに教えてもらいながら一緒に採取する。

 最初はガルラさんが絵に描いて資料を書いてくれたんだけど、ガルラさんの画力はまぁお察しレベル。まったくわからないので一緒に来てもらいました。


 リチェ草は細長い葉っぱで、クラレ草はギザギザした葉っぱらしい。

 どっちもガルラさんが採った実物を見せてもらい、さらにそれらを貰って実物と見比べながら採取を始めた。


 私がちょっとずつ集めている間にガルラさんがたくさん摘み取ってくれたので、短い時間で二種類の薬草がザルいっぱいに集まった。

 私が集めたやつはガルラさんに最終チェックをしてもらってからガルラさんのと纏めたよ。素人判断は危ないもんね。

 そうやってる間にカイルさんがルコの実を採って戻ってきたので、採取したもの全部をカバンに片付けて今度は町へと向かう。

 ポーション作りに必要な道具を買いに行くのだ。


 ちなみにルコの実は一口サイズよりちょっと大きめの赤い木の実で、そのまま食べても甘くて美味しいらしい。


「よーち。しょれじゃ、しゃっしょく作っていくよ!」

「イェーイ。ぱちぱちぱち」

「ぱちぱちぱち」


 ガルラさんが盛り上げる為に拍手をしてくれたんだけど、そのことに対してカイルさんが謎の圧みたいなのを感じたようでガルラさんに追従していた。


「カイしゃんムリちなくていいよ」

「……おぅ」


 必要な材料と道具を手に入れた私達は、カイルさん家の一室でポーション作りを始める。

 これからはこの部屋はポーション作成部屋にするつもり。カイルさんには許可取ってるから大丈夫。


 まずは薬研でリチェ草をある程度潰していく。

 ゴリゴリと潰していくたびに独特の匂いが広がっていくね。

 終わったら部屋全体に浄化の魔法かけよっと。


 次は鍋に魔法で出した水を入れて、その中にすり潰したリチェ草を全部入れて魔力を込めながらゆっくり混ぜる。地味にここの作業の出来で完成度が変わるらしいから一番丁寧にやるようにとの教えをいただきました。

 一気に魔力を入れちゃうと爆発して失敗しちゃうらしいから、魔力はちょっとずつ流し込むのが大事とのこと。

 しかし爆発とは穏やかではありませんね……気を付けよ……。


 水とリチェ草が綺麗に混ざったらここで鍋を火にかけて煮ていく。火傷に注意!

 適度にかき混ぜつつ、煮ている間にルコの実を四等分に切り分けて、これも薬研で潰しておく。


 沸騰してきたら一度火から下ろして潰したルコの実を入れる。

 そしてこれも魔力を込めながら混ぜ混ぜ。

 しばらくすると濃い緑がだんだん薄い色に変わってくるから、そこまできたら魔力を止めてもう一度火にかける。


「よし、ここで隠し味だ」

「ふぇ? 何入れゆの?」

「ふふん。じゃーん! コレです!」


 そういってガルラさんは机の上に布巾をかけて置いてあったザルを手に持ち、私達に見せつけるように布巾を取り払った。


「しょれって……もちかちて世界樹の葉っぱ?」

「えっ!?」

「大せいかーい。さすがメイちゃん。これを一欠片だけ千切って鍋に入れてくださーい」

「あーい!」

「え!?」


 作り始める前にすでに机に置いてあって気にはなってたけど、まさか世界樹の葉っぱだったとは。

 あの子もすっかり大きくなって今では立派な大木へと成長しました。

 この葉っぱにはかなりの回復効果があるらしいから隠し味としては確かにアリなのかも。


 実は世界樹にはブンちゃんって名前を密かにつけてたりします。

 世界樹の分霊だからブンちゃん。わかりやすくて気に入っています。


「ところでカイしゃん。しゃっきからどちたの?」


 私は鍋をかき混ぜながら、さっきから驚きの声を上げてるカイルさんに顔を向ける。


「……いや、うん。ちょっと自分の常識とはかけ離れたことがあって驚いただけだ。大丈夫だから気にしないでくれ」

「まぁ、神々的には普通だから慣れてくれやカイル君」

「あ、はい」


 そういえばあまりにも身近にありすぎて、世界樹が人間達にとって珍しくてすごい木だってのを忘れてた。

 それをこんな簡単に使うって言われたら驚くか。


「今回はお試し作成で自分達用だから世界樹の葉を入れるけど、入れなくても出来る。というか普通は入れないからコレが例外だな」

「なるほどー」

「何か隠し味とか追加材料があればここで入れればいいぞ」

「あーい」


 弱火でじわじわ火を入れつつ、またまた魔力を込めながらかき混ぜる。

 すると薄い緑色がだんだんと綺麗な水色に変わってくるので、色が完全に変わったら火から下ろす。

 それで粗熱を取ってから目の細かいザルか布で濾したら――ポーションの完成です!


「おぉ。見覚えのある色だ」

「へぇ。神々のポーションはやっぱ色も違うんだな」

「しょうなの?」

「あぁ。普通は緑のままだな。上位のポーションになると青にはなるがここまで薄い色にはならねぇ」

「へー」


 やっぱり人間界のとは違うみたいなので、これは外には出さない方がいいっぽい。

 自分達で使う範囲に留めておこう。


「ちなみにこれは怪我を治す薬だな。んで、リチェ草をクラレ草に変えて同じように作ると今度は状態異常を治す薬ができるぞ。毒とか麻痺とかだな。これの色は黄色だ」

「ふむふむ」

「さらに言うと、今メイが作ったのは劣化ポーションだな」

「えっ。これ劣化なの?」


 ガルラさんの言葉に耳を疑う。カイルさんもびっくりした顔してるよ。


「天界基準で言えば、だがな。天界じゃ世界樹の葉だけで作るから、他の材料と混ぜたコレは劣化ってわけ。天界仕様だと瀕死の重傷だろうが、欠損部位があろうが、毒だろうがなんだろうがとにかく完璧に治っちまう。でもこれだとせいぜい瀕死の重傷治すくらいだな」


 いや、それでも十分すごいと思うけど。

 というかそんなすごい薬を手を擦りむいたくらいで使ったんだ私。なんか勿体無いことした気分。


「そんじゃそれを瓶に移し替えたら次はクラレ草でも作ってみるか」

「あい!」


 その後、数日かけて売り物用のポーションを二種類用意した私は意気揚々と町へと赴いた。

 そして門番さん達からジェイドさんへ連絡してもらい、無事アポイントが取れたら領主様のお家へ向かう。

 いきなりの訪問なのに快く迎え入れてくれたジェイドさんにお礼を言って、私は早速ポーションの話を切り出した。



 一時間後、私はジェイドさんとのお話を終え、カイルさんに抱っこされつつ領主邸を後にする。


「いやー。結構いい値段で売れたね!」

「そりゃそうだろ。お嬢のは全部上級ポーションなんだ。それくらいするっつーの」

「えへへー。褒めても晩御飯がちょっと豪華になるだけだよー」

「そりゃいい。んじゃもっと褒めねぇとな」

「むふふふ。あ、ちゅぎは冒険者ぎりゅどね」

「はいよ」


 ジェイドさんとのお話で、冒険者ギルドなどにも売ってあげてほしいと言われたので次はそっちに行ってみるつもり。

 冒険者は危険なお仕事だからポーションはいくらあってもいいもんね。

 その次はラドスティさんのお店かな。


 普通だったら直接冒険者ギルドや魔道具店や薬屋さんとかに持ち込んで売ってもいいらしいけど、私の場合は一度ジェイドさんを経由する事になってる。

 ポーションに限らないけど、そういうお約束をジェイドさんと交わしているのだ。いろんな大人の事情というやつらしいです。


 そうして持ってきたポーションを各所で売り切った私達は、お金を手にウハウハしながらお家へと帰る。

 みなさん定期的に買い取ってくれるらしいので、安定収入の目処が立ちました。


 それに伴って私は神域内に薬草園を作ることにした。

 毎回外まで材料を採りに行くのは大変だし、定期的にポーション作るなら自前で育てた方が早いもんね。


 なので世界樹の近くの土地を整地して、そこを薬草園にしました。

 整地はさすがにガルラさんにやってもらったけど、他は私とカイルさんで頑張ったよ。

 いつまでもおんぶに抱っこではいけませんから。

 そのおかげか、かなり愛着のある場所となりました。うふふ。


 せっかくなので前から考えてた果樹園も、フェルトス様やガルラさんと相談しながら頑張ってみようと思います。


 それにしてもなんか神域内がごちゃごちゃしてきたけど大丈夫かな。

 畑に始まって世界樹に酒蔵に平屋に薬草園……うーん節操がなさすぎますね。


 せっかくの神秘的なイメージが私のせいでイメージダウンしてないか心配だけど、もう今更だし好き放題やりたいと思います! へへっ。

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