迷子編5 いろんなゲームで遊びましょ
これで半分です。
お昼寝からおはようございます。メイです。
私はぐっすり寝ておめめぱっちりですが、隣を見てみるとお兄さんはまだお休みのご様子。
起きる気配がないので、もう少しだけ寝かせておこうと静かに移動を開始する。
というわけでお兄さんが起きるまで私は花冠の作成に取り掛かろうと思います。
ただ結界内に花畑が入ってないので、一度結界を解除してからお兄さんの為に張り直しました。危ないもんね。
ステラとモリアさんの二人を連れて私は花畑に突撃する。
そして二人とも相談しながら使う花を決めて、黙々と制作に取り掛かった。
私が起きてから一時間くらい経ってからお兄さんが起きてきたので、結界を解除し合流。
慣れてきたからか一個だけは完成させられたので、もう一個完成させるまでお兄さんには待っててもらう。
といってもすでに二個目の制作にも取り掛かってたからそんなに時間はかからないはず。
「ところで迷子しゃん。ちゃんと寝れた?」
「まぁな。こんなにしっかり寝れたのはいつぶりかわかんねぇレベルで寝れた」
「それはよかったねぇ」
「……ふっ。そうだな」
やっぱりお兄さん睡眠不足だったね。
お昼寝だから二時間くらいしか寝かせてあげられなかったけど、寝れたみたいで安心。
大人のお昼寝にしては長いかもだけど……。
とにかく、こうなったら今日の夜もちゃんと寝てほしいものだ。
せっかくなので別れる前にトマトジュースの残りを渡してあげようかな。
あれ飲むとよく寝れるってガルラさんが言ってたし。なんでかわかんないけど。
それから三十分程で二つ目の花冠は完成した。紫色のお花があればよかったけど、紫はなかったので赤色のお花メインで作りました。
雑談に付き合ってくれてたお兄さんも褒めてくれたので上々の出来ではないでしょうか。むふん。
出来上がった花冠を崩れないようにカバンに入れ、出したままだったシートも影に片付ける。
最初に作った花冠はお兄さんを始めみんなの頭に乗せておきました。お揃いかわいいね。
でもお兄さんが作った二つ目の花冠はカバンに入れた。あれは私宛じゃない気がするから。
それからいくつか花を摘んで花束にして、これもカバンへ。
最後にゴミなんかが落ちてないか確認してから私達は花畑を後にする。
もう少しいてもよかったけどお兄さんが帰るって言うから早めの撤退です。運動はできなかったけど、なんだかここに来る前よりお兄さんの顔がスッキリしてるように見えるのでまぁいいでしょう。
「お帰りなさい。花畑に行ってたんですね。みなさんお似合いですよ――ふふ」
「笑うなおっさん」
「いやいや、気のせいだろ。お前さんもよく似合ってるぜ」
「……チッ」
門前で出迎えてくれたノランさんがお兄さんを見て笑う。ずっと笑顔だったけど、なんか笑顔の質が変わったって言えばいいのかな。
というよりやっぱ二人仲良くなってる? 雰囲気が昨日より柔らかい気がする。
もしかしてお友達になれそうな予感!? さすがはノランさんだ!
……あっ、わかっちゃったかもしれない。
「ノランしゃんただいまでしゅ。しょれとこれお土産でしゅ!」
私はカバンに入れておいたお兄さんの二個目の花冠を取り出しノランさんに手渡す。
お友達にお土産で作ったけど照れ臭くなったんですね。もう、男の人って素直じゃないですねぇ。
「え、俺にも頂けるんですか?」
「おい、ガキ。それは――」
「あい。ちなみにしょれは迷子しゃんが作ったやちゅでしゅ」
「へぇ……ありがとな青年」
「…………チッ!」
今日一番の舌打ち頂きました。
お兄さんそっぽ向いちゃったけど、きっとそれは照れ隠しですね。
ほら、ノランさんはすっごい嬉しそうに笑ってますよ。いい笑顔ですよ。見ないんですか?
それにしても今日は花畑行って、花冠しか作ってないや。完全にピクニックでしたね。
私は楽しかったけどお兄さんは楽しめたかな。
お兄さんを見上げてみるけどムスっとしてよくわかんない。
「……んだよ?」
そんな私の視線に気が付いたのか、お兄さんが視線だけで見返してくる。
「ねぇ迷子しゃん。今日、楽ちかった?」
「……悪くはなかったな」
「しょっか!」
及第点は頂けてましたよ!
ノランさんがお仕事終わるまでまだ時間があるそうなので、せっかくだし町をお散歩しつつ案内でもしてあげようかなと提案してみたけどお兄さんに却下された。
理由を聞いたら私の花冠も早く相手に渡してやれとのこと。
やだ、お兄さんそんなお気遣いできたんですか……なんか子供の成長見た気分。
そんな私の考えが透けて見えちゃったのか、お兄さんにほっぺたをむにむにと潰されてしまった。
むーやめれー!
とにかくお兄さんが早く帰れと私に向かって手を払ってるので、今日はもう帰ろうと思います。
その前にノランさんに今日の分のご飯代を渡して、お兄さんにはトマトジュースが入った水筒を渡すのも忘れない。
「しょれは寝る前に飲んでね。ノランしゃんもよかったやどーじょ」
「はいはい。わぁーったからさっさと帰れよ」
「ありがとうございます」
「うん。じゃあまた明日、同じ時間に来ゆかやね」
「あぁ」
今日は素直なお返事を返してくれたお兄さんにまたねと手を振り箒に乗り込む。
最後にもう一回振り返って手を振ってからお家に帰りました。
帰宅後。
帰ってきたフェルトス様とガルラさんに花冠のプレゼントをしたら、とっても喜んでもらえました。
不恰好だったけど上手だって褒めてくれて、寝るまでの間ずっと被っててくれたよ。えへへ。
そして翌日。
今日もステラとモリアさんを連れて私は町へと赴く。
実は今日はまだ何をしようか考えていないので、ノープランです。
いやー。昨日はフェルトス様をお花で飾り立てるのに忙しくてですね……でもその甲斐あって素敵なフェルトス様が誕生しましたよ。カメラがないのが残念なくらい。
ガルラさんもかわいいって褒めてくれたから、調子に乗った私はガルラさんも飾り立てましたとも。
フェルトス様も笑って上出来だと褒めてくれたんですよ。えっへん。
そんなこんなで寝るまで楽しく過ごしていたせいか、すっかりプランを練り忘れました。
でもせっかくなんでノープランでも楽しく遊べる場所へと行ってみようかな。
「こんちゃ、迷子しゃん」
「おぅ」
今日はノランさんから少し離れた場所の壁に寄りかかって待っていたお兄さん。
ノランさんの方に目をやると、いい笑顔で手を振ってくれてるから喧嘩とかじゃないと思いたい。
「迷子しゃん。夜は寝れた?」
「あぁ。いつもは寝付きが悪いんだけどな。驚くぐらいすぐ寝れたよ」
「しょっか! 良かった!」
「ほらよ。これ返す」
「あい」
そういってお兄さんは持っていた水筒を差し出してくれたので、受け取ってカバンに片付けた。
なんだか少しだけお兄さんの言葉遣いが変わった気がする。多分本来のお兄さんに戻ってきてるのかな?
やさぐれモードが解除されてきててちょっと嬉しい。ノランさんのおかげかな。
「それで。今日はどこ行くんだ」
「今日は町のあしょびばに行こうと思ってゆ」
「遊び場?」
「行けばわかるよ! 行こう!」
私はお兄さんの手を引いて門へと近付く。箒も一緒だ。
「こんにちはメイ殿。今日は町の中ですか?」
「あい!」
「ごゆっくり。あ、そうそう。トマトジュースご馳走様でした。とても美味しかったです」
「えへへー。お口にあって何よりでしゅ」
ノランさんと軽い雑談とついでにちょっとした質問を交わし私達は町へと入る。そしてまっすぐ遊戯エリアへと足を運んだ。
前にガルラさんが射的でぬいぐるみを掻っ攫っていったとこだね。今もちゃんと飾ってあるし、抱っこしたりもしてます。
さて、今日はどこで遊ぼうかな。
「迷子しゃん何か気になるものあゆ?」
「……いや。こういうのはよくわかんねぇ」
「しょうなの? じゃあ端から順にやってみよう!」
この辺りのエリアは遊戯エリアとして、いろんなゲームが遊べる施設が集まってるし結構広い。
射的以外で私がやったことあるのはお化け屋敷、迷路、脱出ゲーム、謎解き・推理とかの体験型ばかりかな。
他にも鬼ごっことか乗り物使ったレースとかの体をメインで使って遊ぶゲームもあるけど、私は体力ないからムリです。でもお兄さんには丁度いいかも。
あとは私は入ったことないけどカジノとか闘技場とかもある。カジノはともかく闘技場はちょっと怖いので遠慮したいけど。
だいたいエリアに入ってすぐくらいの場所は私がよく遊ぶ体験型ゲームの施設。中程は体使って遊ぶ施設。奥に行くとカジノとか闘技場の大人が遊ぶ施設。みたいな感じで分かれてる。
というわけでお昼までは浅いエリアを回りましょう!
「ハンバーガー美味しかったねー」
「そうだな。でもお前の作ったカツサンドの方が美味かった」
「しょう? えへへーありあと」
お兄さんから私への呼称がテメェからお前に変わった。
ガキ呼びは変わんないけどお兄さんの中で気持ちの変化が出てきてるね。うんうん。
そうしてお昼ご飯を済ませた私達は一旦遊戯エリアから撤退。
理由はお昼寝をする為。お昼食べると眠くなっちゃうから仕方ない。
外ならともかく、さすがに町中で寝るわけにもいかないしね。
それならお昼食べてから来たらいいのかもしれないけど、それだとお兄さんと会う時間が減っちゃうから嫌だった。
そんな私達が向かってるのは、騎士団本部がある建物。
普段なら宿屋さんとかの選択肢があるかもだけど、今はお祭り前なのでムリだ。
それ以外でどこかお昼寝できそうないい場所はないかってノランさんに聞いたら、まさかのノランさんの家を提案された。
さすがに家主がいないのに勝手には入れないから遠慮すると、その次に提案されたのが騎士団ってわけです。
めちゃくちゃ私用に使うことになるけどいいのかなと思わなくもない。
でもどこか適当な場所でお昼寝されるくらいなら、護衛も兼ねて信頼できるところで寝てくれって言われちゃったのよね。
まぁ今の町はお祭り前でいつも以上に人がいるしわからなくもないけど……やっぱりわがままで迷惑かけてるのには違いないし、明日売るお酒とは別に後日お礼用にお酒を持っていくことにしよう。
騎士団への許可はノランさんの方で取っておいてくれたので、騎士団に着くとスムーズに中に入れてくれた。
すでに私は半分以上お休みモードだったので、お馴染みとなったいつもの部屋に案内されるなりソファに吸い込まれるように足を運んで寝てしまいました。
目が覚めるとそばにはステラとモリアさんがいてくれたのでおはようの挨拶を交わす。
「よく寝てたなガキ」
「んむ? あ、迷子しゃん、おはよー。迷子しゃんは寝てないの?」
「お前の子守唄がなかったからな」
「ふへへ、しょれは悪いことしちゃったなー」
ニヤリと笑って冗談を言ってくるお兄さんに、私は笑顔で答える。
お兄さんそんな軽口も言えるようになったのね。私は嬉しいです。
そんなこんなでお昼寝の間護衛をしてくれた騎士のお兄様とお姉様にお礼を言って、私達は再び遊戯エリアへ。
今度は体を使ったゲームでも遊びに行こうって誘ったら、あんまり乗り気じゃなかったみたいで断られた。
じゃあどうするかと言えば、悪い顔してカジノ行こうって言われちゃったよ。お金持ってないくせに。
でも私もちょっと興味あったからとりあえず行ってみた。入れるかはわかんなかったけどね。
カジノ前に到着すると、入り口の前に強面のお兄様が立っていたのでちょっと尻込みしちゃった。
だけどお兄さんは関係なさそうにズンズン進んでいくので私も一緒についていく。
そして年齢制限ありそうだと思ったら案の定ありました。
強面お兄様が言うには私はまだ入れる年齢じゃないけど、大人と一緒なら入っていいんだって。ただし大人と一緒に行動が条件らしいけど。
というわけで無事中に入るとすっごい内装が豪華でした。
入り口近くに両替所と景品交換所があって、その奥にいろんなゲーム台が並んでる。カードにスロット、ルーレット。イメージ通りの場所になんだかテンションが上がってしまうぜ!
とりあえず私は一万ガルグ分のチップを両替してお兄さんへと託す。ルールとかいまいちわかんないから見て楽しむ方向で。
「よし、倍にして返してやるから楽しみにしてろよ」
「いぇーい、がんばえー!」
そしてポーカーのテーブルに向かうお兄さんとともに私も向かい、応援を始めた。
「…………いやー。びっくりするくらいスッたな」
「迷子しゃんよわいねぇ」
「最初は勝ってただろ」
「最初だけね」
「ぐっ」
ビギナーズラックとでも言いましょうか、最初は堅実に勝ってたお兄さん。
元手の一万が五万ほどになり、二人でうはうは言ってたんだよ。
それで調子に乗ったお兄さんはレートを上げて挑戦。びっくりするくらいあっという間に儲けた分がなくなりましたとさ。しかも実はちょっとマイナスが出ちゃいました。ちゃんちゃん。
「でも、迷子しゃんのおかげでカジノにも入れたし、楽しかったからいっかぁ!」
「…………足出たのにか?」
「勝負は時の運とも言うかやね。大負けしたわけでもないかや気にしない気にしない」
「……ふーん」
「しょれに、わたしは勝ちゅのが目的じゃなくて、迷子しゃんとあしょぶのが目的だかやね。目的は達成してるもん」
「はぁー。さっすがお金持ち様は言うことが違いますなぁ」
「たしかにしょうだけど……むぅ、いじわりゅ」
お兄さんの言う通り私はお金を持ってるから多少負けようと余裕もあるし、金持ちの道楽に見えるかな。
嫌味のつもりはなかったんだけど、お兄さんにそう受け取られても仕方ないのは確かか……反省します。
「冗談だよ。んな顔すんな」
「むにぇ」
「ほらほらお前にんな顔は似合わねぇぞ」
「みゃー、にゃめちぇー」
お兄さんがしゃがんだと思ったら急に私のほっぺをむにむにし始めた。やめろー!
やられっぱなしは癪なのでむにむにされつつも、お兄さんへの反撃として私もむにむに仕返します。
「むぇー!」
「ははは。くすぐってぇ。仕返しのつもりかよ」
「むぃー」
ちくしょう。お兄さんのほっぺはあんまり伸びないし、私の力では満足にむにむにできません!
そうやってしばらく戯れあいは続いて、ようやく私のほっぺたは解放された。
途中でステラとモリアさんも私に加勢してくれたので、若干私の方が優勢に傾いていたことを報告しておきます。ふははは!
「んじゃ今日はこれで終わりか」
「んー。しょうだね。もういい時間だし」
「……そうだな。じゃあ門まで行くか」
「うん!」
明日はついにお祭りです。
すでに私の予定は決まっているので、今日と同じ時間には来れないことを門への道すがらお兄さんへと伝える。
お兄さんも了承してくれて、私が来るまでは適当に祭りを回ってるという返事をもらった。
そういうことならとお金を渡そうとしたけど断られた。今日のご飯代もいらないらしい。今までのがまだ残ってるそうだし、それでいいそうだ。
一人にして大丈夫かまだちょっとだけ心配だけど、お兄さんが笑って明日のお祭りのこと言ってるから大丈夫って信じてみようかな。
さて、明日の終わりにはどうなってるか。
こればかりはお兄さんの気持ち次第だから、私にはどうしようもできない。
でも大丈夫。どうなろうと受け入れるし、責任は取るからね。




