番外編 お昼寝
こんにちは、メイです。
今日は昨日の夜からガルラさんが天界に出張に行っちゃったので、フェルトス様と二人だけのお昼ご飯です。
なんでもガルラさんはかなり有能だからと、人手不足のところに引っ張りだこでしばしば駆り出されることが多いらしい。
わかるよ。ガルラさんは何やらせても人並み以上にできるもんね。
私もいつかあんな風に器用になりたいもんだ。
そしてそんな時は二、三日帰ってこないことも珍しくはないみたいだけど、今回はお昼には帰って来れるそうだからもうすぐ帰ってくるとは思う。
でも一応お昼はいらないって言ってたから用意はしてません。
二人だけの昼食を終えると私は後片付け。
そして片付けを終えて振り返ると、フェルトス様がガルラさん用布団の雲クッションに埋まって寝ていたのを発見。
私より早いお昼寝。さすがです。
近付いてみるけど起きる気配もなくスピスピとお昼寝中。
そんなフェルトス様を見ていると私も眠くなってきて欠伸がでた。
「ふぁあ」
私もお昼寝をしようと自分のベッドに向かい、途中でその足を止める。
そして目を擦りながらフェルトス様が寝ているところまで戻り、そのまま大の字になって寝ているフェルトス様のお腹の上に乗り込んだ。
一瞬フェルトス様が何か反応した気がしたけど、眠気がピークに達していたので何も聞こえない。
フェルトス様のお腹の上で丸くなった私は、おやすみなさいと小さく呟くと、そのまま意識が落ちた。
「ただいまー……ってなんだ。二人とも寝てるのか」
仕事から戻ったら家族二人ともが寝ており出迎えはない。
時間的にメイは寝ているだろうから期待はしていなかったが、主人であるフェルトスまで一緒になって寝ているとは……想像に難くないな。うん。
それにしても……。
「かわいいな、おい」
オレの雲クッション布団に両手両足投げ出すようにして寝ているフェルと、そのフェルの腹の上で丸くなって寝ているメイ。
そして難しい顔をして寝ているフェルとは対照的に、幸せそうにすぴすぴと眠るメイ。
フェルだけならなんとも思わんが、そこにメイが加わるだけで自然と頬が緩む。
大丈夫だとは思うが念のためにメイが使っているタオルケットを持ってきたオレは、二人を起こさないように静かにタオルケットをかけた。
「よし」
オレはその光景に満足すると、彼らの隣に腰を下ろす。
そして雲クッションを背もたれにし、静かに本を読み始めた。
「……帰ってきていたのか」
オレの腹の上で寝ているメイ以外の気配が増えていることに気付いたオレは、視線だけを隣に向ける。
そこには本を片手に眠りこけているガルラの姿。おそらく今回もこき使われていたのだろう。
視線をガルラから腹の上のメイに移す。メイごとオレにかけられた布切れは、十中八九ガルラの仕業だろう。
このまま寝ていたとしてもオレは人間のように病になるわけではないが、メイはどうかわからん。まぁ妥当な判断だろうが……少々煩わしい。
だがどけてしまえばメイが寒がるかもしれん。
……我慢するか。
そう結論付けたオレはもう一度ガルラの方を見る。
しばらく考えたのち、オレ達にかかっている布切れとはまた別の布切れを浮かせてこちらへと持ってくる。
そしてガルラを起こさぬように布切れをガルラにかけ、オレはまた瞼を閉じた。
「むぅ?」
ぱちりと目が覚めたので体を起こす。
目をこすりながら周囲を確認すると、下には当たり前だがフェルトス様。
そしてクッション布団の隣には、いつの間に帰ってきたのかガルラさんが寝ていた。
ぐしぐしと目をこすり、欠伸をかみ殺す。
私はフェルトス様のお腹から降りて、ガルラさんとフェルトス様の間に体を滑り込ませた。
クッション布団に沈む体を動かし、せっせと寝床を作りあげる。
投げ出されたフェルトス様の腕を動かして腕枕のように設置。そしてクッション布団に背を預けているガルラさんの体を傾けて私の近くに寝かせた。
「よち!」
理想の寝床を作りあげた私は一つ頷くと、二人にタオルケットをかけ直してから、大好きな二人の間にぽふんと寝転がる。
「むふふふふふふ」
少しばかり長いお昼寝だが、今日くらいはいいだろう。
「ふぁぁ……」
大きな欠伸を一つすると、私はまた眠りについた。
「…………なんでこんなかわいいんだコイツ?」
「……知らん」
メイがごそごそと何かをやっていたから、オレとフェルは好きにさせつつ寝たふりを続けていた。
しかしまさかこんなかわいい事をやらかすとは。
すやすやと眠るメイにタオルケットをキチンとかけてやり、腹をぽんぽんと軽く叩く。
「オレこのままで大丈夫か?」
メイ的には大好きな二人の間に挟まって寝るという現状を作り上げたので満足だろうが、オレとフェル的には少しばかり問題がある気がする。
だってそうだろう。
成人男性とされる男二人が至近距離で並んで寝ているのだから。
オレはあまり気にしないが、フェルが嫌なら離れなければ。
そう思ってフェルに問いかけるが、フェルはフェルで何も気にしていないのかこちらも見ずに答えた。
「かまわん。メイの好きにさせておけ」
「さよか」
「あぁ」
ご主人様の許可も頂いたので、オレは気兼ねなくメイと添い寝する。
いつの間にか腹に置いた手をメイが握っていたので、自然と頬が緩んだ。
「今日は寝ててもいいのか?」
「問題ない」
「ならもうちょい寝るか」
「あぁ」
メイを挟んで三人仲良く昼寝を再開したオレ達だった。




