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50 お味はいかが?

ついに50話です。長いお話にお付き合い感謝します。

「リアしゃま……どうでしゅか? 美味しいでしゅか?」


 私はドキドキしながらセシリア様にお伺いを立てる。

 本当は催促とかしない方がいいとはわかってるけど、我慢できませんでした。


「えぇ、とっても美味しいわ! ありがとうおチビちゃん!」

「にへへ……! いっぱい食べてくだしゃいね!」

「もちろん。せっかくおチビちゃんが私の為に作ってくれた料理ですもの。食べ尽くす勢いで食べるわよ!」

「でへ、でへへへへへ」


 セシリア様のお褒めの言葉に私の顔面が大変なことになっていますが知りません。

 頑張って準備しただけあって、これほど喜んでもらえたのなら感無量です。大変だったけどやり遂げましたよ!


 美味しそうにサラダを食べるセシリア様。

 サラダに使った野菜はもちろん畑で採れたものです。ドレッシングはレシピを見ながら手作り。

 市販品もあるんだけど、何故かみんなが私の手作りの方が美味しいって言うから作ってます。

 それに自分でも市販品より、自分で作った方が美味しく感じるんだよな。

 元の世界ではそんなことなかったからこっちの世界に落ちたときに、何か変化でもあったのかな?


 本当になんででしょうね。特殊能力的なものでしょうか。

 不思議ですけど料理をすること自体は苦痛じゃないし、美味しいって言ってくれるなら私も満足なので不満はないけどね。


 そのままニコニコしながらお隣でサラダを食べてるジェーンさんに視線を移す。


「とっても美味しいですよメイ様!」

「え、えへへへへ。どうもでしゅ」


 私の視線に気付いたジェーンさんがすかさず感想を言ってくれた。

 そろそろ私の顔が溶け始めている気がします。大丈夫かな。


 心配でほっぺをむにむにしてみる。

 うん、大丈夫そうだ。


「なぁメイ。このパンに肉が挟んであるやつはなんだ?」

「しょれはチキンカちゅしゃんどでしゅ」

「チキンカツサンドか。いいなこれ気に入ったぞ」

「よかっちゃ! まだまだあるので遠慮なく食べてくだしゃいねー」

「おぅ!」


 チュンチュン肉は本当に大量に手に入ったので大量に作りましたよ。

 特に私が唐揚げとチキンカツが好きなのでその二つをね。大量にね。ふふん。


 オヤツにもできるし、たくさんあっても困らないからいいよね。

 いつでも揚げたてが食べれるし、最高だよ保存箱。私はもう保存箱無しの生活には戻れない体になってしまっています。

 唯一持ち運びが面倒だって点も、影と魔法を使えばクリアできるし、そもそも持ち運ぶ予定はほぼ無いのでなんの問題もない。


 カツサンドの他にも唐揚げや生姜焼きなどをお皿一杯に盛って、モリモリ食べているトラロトル様。

 それだけで食べても美味しいけど、やっぱりお肉にはご飯でしょ。


 ということで、炊いておいたご飯をよそってトラロトル様にお出しします。

 よく考えたらおにぎりを作っておけばよかった気もする。まぁまた今度でいいか。


「ん、なんだこれは?」

「お米でしゅよ。唐揚げとか生姜焼きはこれといっちょに食べるともっと美味しいんでしゅ!」


 パンでもいいけど、私はお米を推します。お米大好き!


「あぁこれが米か。――――うむ、初めて食べるが美味いな!」

「食べたことないんでしゅか?」

「ないぞ。というより基本的に俺はあまり食事をしない。面倒だからな」

「はぇー」


 信じられない。私なんて一食抜くだけでも嫌なのに。


「食べないってのも(俺ら)の間じゃ珍しくはないしな。基本食事はしてもしなくてもどちらでもいい。ただの娯楽といっても過言じゃないな」

「お腹しゅいたりしないんでしゅか?」

「俺はしないなぁ」

「えぇー?」


 ふと隣にいるフェルトス様を見上げてみれば、トマト増し増しタマゴサンドをモグモグしながら頷いた。その次にセシリア様に視線を向ければにっこり笑いながら頷いた。


 まじすか? 特にフェルトス様。あなた食いしん坊キャラじゃなかったんですか……!?


「ただ、メイの飯を前にすると腹が減る……気がする。他のやつが作ったものなら、あれば食うといったところだが。わざわざ自分から食いたいと思うものは今のところメイの作る飯だけだな」

「たしかに。私も基本的には自分の作った野菜以外はあまり好きじゃないのだけれど、おチビちゃんが作ったものならどれもすごく美味しく食べられるわ」

「……大袈裟じゃないでしゅかぁ?」


 トラロトル様とセシリア様の言葉に首を傾げる。

 なんだか持ち上げられすぎて少し怖くなってきちゃったよ。


「しょれに、フェルしゃまと初めて会ったときに、わたし食べられそうになっちゃよ?」


 アレはお腹空いてたんじゃないのかな? それともトラロトル様はお腹空かないけど、フェルトス様はお腹空く感じなのかな?

 それにさっきの質問だって、フェルトス様は何に対して頷いたかわかんないしね。うんうん。


「フェルお前……こんなチビを……」

「最低ね」


 トラロトル様とセシリア様の視線を平然と受け止めながら、フェルトス様はもぐもぐと口を動かし続ける。

 そしてごくんと口の中のものを飲み込んでから口を開いた。


「あの時はたまたま喉が渇いていたのだ。それに結果的には喰ってないだろう?」

「フェルしゃまはお腹しゅくのー?」

「時々な。だが腹が減ったとしてもわりとどうでもいい。喰っても喰わなくても、時が経てば忘れている」

「はぇー」


 忘れるってなんで?

 お腹空きすぎたら逆にお腹空いてる感じが薄れるみたいな、あの感覚かな?


「それに最近はメイの飯を喰っているからか、血を飲みたいと思うこともなくなっている」

「ほんとでしゅか!?」

「あぁ」


 良い事を聞いた! もうこれからは絶対にフェルトス様の食事は欠かさないぞ!

 私は心のメモ帳にその事をしっかりと書き記す。


 今のところフェルトス様が実際に人間を食べているとこは見たことがないけど、見なくていいなら見たくない。グロいのはノーサンキューでございます。


「メイが作る料理は特別だからなぁ」

「う? しょうなの?」

「そうだぞ。メイの手が入ったものには祈りのようなものが込められてるから」

「いのりー?」


 ガルラさんの言葉に首を傾げる。さっきからずっと傾げてるな。


「言葉にするのは難しいけど、それに近いものだとは思うぞ」

「ガルラの言う通りだ。むしろメイの手が入ったものというより、メイの存在自体が特別と言ってもいいかもしれん」

「私もトラロトルと同じ意見ね。おチビちゃんのそばはとても心地が良いもの。フェルが執着する理由もわかるわ」


 ガルラさん、トラロトル様、セシリア様と続く言葉に開いた口が塞がらない。

 フェルトス様やジェーンさんもうんうんと頷いている。


 もしかしてそれは落とし子となにか関係がある感じなのでしょうか?

 私は知らない間に存在が特別化していたのですか?


 というか、もしかして……だけど、みんなが私に優しいのは、別に私のことが好きなんじゃなくて……私が、その変な、特別って、やつだから……?

 私自身はどうでも良かったり、しちゃうの、かな?


 そんなことを考えていたからか、私はいつの間にか下を向いていた。


「言っておくが」

「みゃ!」


 フェルトス様が私の顎を掴んでムリヤリ顔を上げさせる。

 見上げた先にはいつもより真剣な顔をしたフェルトス様。

 その赤い目に不安そうな顔をした私が映ってる。


「オレはお前だから執着している。能力があろうがなかろうが、だ。だから変なことは考えるなよ」

「…………」

「返事は?」

「……あい」

「よし」


 まるで考えていたことを見透かされていたかのように釘を刺されてしまった。

 でも、よかった……安心したら嬉しくて涙が出てきた。


「あー、フェルがメイを泣かせたー!」

「フェルの今の言い方ちょっと気持ち悪かったものね。わかるわおチビちゃん。怖かったわね」

「もっと言い方ねぇのかよ」

「……その、(わたくし)も今の言い方はどうかと……」

「……オレが悪いのか?」


 みんなから一斉に責められてるフェルトス様に少しだけ笑ってしまう。

 そんな中ボロボロ出てくる涙を拭い、私はムリヤリにでも言葉を絞り出した。


「ち、ちがうの。しょの、嬉しくて……」

「嬉しい、か?」

「あい。フェルしゃまに特別って言ってもらえて嬉しかったんでしゅ」

「そうか」

「あい!」


 ちゃんと笑えてるか不安だけど、それでも笑顔を向ける。

 良かった。ちゃんと『私』を見てもらえてるんだ。


「おチビちゃん」

「あい?」


 セシリア様に呼ばれてそちらを向く。そこには慈愛の塊のような笑顔を携えたセシリア様が私を見ていた。


「フェルも言っていたけれど、私達はあなたが『特別な存在』だから仲良くしているわけじゃないのよ」

「そうだな。いくら『特別な存在』だったとしても、本人が気に食わないやつだったとしたら俺は近寄りたくもないしなぁ」

「そうですね。(わたくし)もそう思います。といいますか、そもそもそんな人間なら初めから『特別な存在』にはなれていないと思いますが……」

「違いない!」


 ジェーンさんの言葉に豪快に笑うトラロトル様の笑い声が耳に響く。

 みんながみんな私の不安を吹き飛ばそうとしてくれてる。


 やっぱりみんないい人達で優しい人だ。

 涙がまだ溢れてくるけど、それは暖かい涙で不安なんかこれっぽっちも含まれていない。


「オレもみんなと一緒で、メイだからそばにいるんだからな。忘れるなよ」

「あいっ、ありあとガーラしゃ……みなしゃんも、ありあと……ッ!」


 自然と笑みが溢れる。

 あぁ本当に、私は出会いに恵まれたなぁ。


 フェルトス様に頭を撫でられて、しばらくしてからようやく私の涙は引っ込んだ。


 雰囲気を悪くしたことを詫びてから、食事を再開。

 みんなすぐに許してくれて和やかな時間が過ぎていきました。

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