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45 仲直り

2024/10/21追記

誤字報告ありがとうございます!

そして誤字が多く申し訳ございません…推敲はしているのですが、どうしても抜けてしまうので助かります。

 地上に降り立った私はフェルトス様の腕から降ろしてもらい、同じく降りてきたトラロトル様に近付いていく。

 私が自分から近付いてきたことに驚いたのか、トラロトル様は少しだけ緊張をにじませたようだ。


 多分また私が泣きださないかどうかを心配してるんだと思う。

 大丈夫です。さすがに今はもう泣きません。心の準備もしてます。大丈夫。

 でも、泣きじゃくって酷い顔をしているかもしれないので、そこには目をつぶっていただけたら嬉しいです。


 とことこ走ってトラロトル様の足元までやってくると、トラロトル様はわざわざしゃがんで視線を合わせてくれた。

 どことなく笑顔がぎこちない。

 あの自由で豪快な神様にこんな顔をさせて本当に申し訳ないです。


「どうした?」

「えっちょ、トラしゃま……ごめんなしゃい!」


 がばりと頭を下げる。


「わたし、実はトラしゃまがちょっと苦手だったんでしゅ! しょれで、しゃっきトラしゃまが急に近付いてきて、持ち上げられて、不安になって泣いちゃいました……しょの、本当にごめんなしゃい!」


 不敬も不敬なことを言いながら必死に謝罪を繰り返す。

 許してもらえないかもだけど、泣き出した理由をしっかり伝えた。


「なんだ、そうだったのか」

「うぅ、ごめんなしゃい」

「ふっ……かまわん! そんな細かいことは気にするな!」

「ふぁ!?」


 トラロトル様の突然の大声にびっくりして顔を上げると、にっかり笑ったトラロトル様と目が合った。

 そのままトラロトル様の手が私の頭に伸びてきたんだけど、その動きは途中で止まって戻っていった。


「俺の方こそ悪かったな、気が回らんかった。セシリアにも『あんたはデリカシーがない』とよく言われていたのだが、どうにも直らなくてな。悪かった、次からは気を付けるから許してくれるか?」

「ぴゃ?! も、もちろんでしゅ! しょの、わたしもしゅみましぇんでした……お許しくだしゃいましゅか?」

「当然だ! ならばこれで仲直りだな!」


 そっと差し出された右手に、私も自分の右手をそっと重ねる。

 手の大きさが違いすぎて簡単に握りつぶされそうだけど、そんなことはあり得ないと確信できるほどに優しく手を包まれた。


「あ、しょうだ! トラしゃまちょっと失礼しましゅ。しゅぐ戻るのでここで待っててくだしゃ!」

「ん? わかった」


 トラロトル様との仲直りの握手も無事終わり、手が離れた瞬間思いついたことがある。

 それを実行に移すべく、私はトラロトル様に断りを入れて畑に向かった。


 フェルトス様とトラロトル様の喧嘩があったけど無事な畑に安堵する。

 私達が最初に畑を見ていた場所の地面はフェルトス様の襲撃でちょっとぐちゃっとなってたけど、それは見ないふり。

 畑自体は無事だったことを喜ぼう。

 それにほぼ空中戦だったことも幸いしたのかな?


 畑の状況を確認しつつも一直線にトマトが生っている場所へと行き、一番美味しそうな実を手に取る。

 今手元にハサミがないので、代わりに小さな風魔法を使いトマトを収穫した。

 私の両手でも収まらない大きさのトマトは真っ赤に熟してとても美味しそうだ。


 同じ要領でもう二つ美味しそうなトマトを収穫する。

 それを水魔法で綺麗に洗い、三つの大ぶりトマトを抱えてみんなが待ってるところへと走り出す。

 誰もそばにいない状態で魔法使っちゃったけど、小さい魔法だから見逃してもらおう。


 コケてしまったらなんにもならないので、それだけは注意しながら急いでトラロトル様のもとへと戻る。


 あれ、トラロトル様の怪我が治ってる。治療が早い。

 ガルラさんにもらったポーションもあとで渡すつもりだったけど必要なさそうだな。


 とにかく元気になってよかったと、私は満面の笑みで持っていたトマトを一つトラロトル様へ差し出した。


「これ、わたしが作ったトマトでしゅ。ご迷惑おかけしたお詫びにどうじょ!」


 まだ味見してないけど、なんとなく最高の出来だっていうことはわかるんだ。

 それに元はセシリア様の野菜だしね。


 お詫びの品がしょぼい気もするけど、私の手持ちでいま渡せそうなのがこれくらいなんだ。


「いいのか?」

「あい!」

「ふっ――ならばありがたくいただこう!」


 そういってトラロトル様は私が差し出したトマトを受け取り、そのまま豪快にかぶりついた。

 自分で渡しといてなんだけど、神様とかって毒味とかしない感じなのかな。

 もしくはそういうの効かないから気にしないって感じなのかな。


 そういえばフェルトス様も初めから気にしてなかったしね。ものすごく今更な疑問だけど。


「……ん? なんだ、これは?」

「ふぇ? も、もしかして美味しくなかったでしゅか……?」


 ど、どうしよう。最高の出来だと思ったけど勘違いだったのかな?


 私があわあわしながらトラロトル様を見上げていると、びっくりした顔のトラロトル様が私の方を見た。


「これ、チビ助が作ったってのはマジか?」

「あい……しょうでしゅ。リアしゃまからいただいたものを、わたしが育てまちた……」

「セシリアの……だが、うーむ?」


 なになになんだ? その反応どっち? わかんない。なんか不安になってきた。


 私は腕の中にある残った二つのトマトに視線を下げる。

 フェルトス様とガルラさんにと思って持ってきたけど、自分の分も持ってきたらよかった。

 そうすれば今ここで味見できたのに。


「なぁ、チビ助。お前さんが持ってるその二つはどうするつもりだ?」

「う? これはフェルしゃまとガーラしゃんにあげようと思って持ってきまちた」

「そうか。そいつは残念」

「ざんねん?」

「あぁ。美味かったからもっと食いたいと思ったんだが、フェル達の分ってことなら諦めるさ」

「おいしい? ほんとでしゅか?」

「あぁ。最高に美味かったぞ。俺的にはセシリアんとこのより、チビ助の作ったやつの方が好みだ」

「ふぁ!?」


 美味しいと言ってくれたのは嬉しいけど、元々は同じものなんだから味に違いってあるのかな?

 育成方法で違いが出るのはまぁわかるけど、ど素人が作った野菜とプロが作った野菜を比べてど素人の方が好みって……大丈夫なのだろうか?


 私はトラロトル様の言葉に「嬉しいけど、褒めすぎだ」って慌てて否定するけど、トラロトル様は顎に手を当てながら首を傾げている。


「そうか? 俺が事実そう感じたのだから褒めすぎもクソもないと思うがな」

「うーん?」

「とにかくそのまま褒め言葉として受け取っておけ!」

「あ、あい……」


 なんだかなぁ?


「おい、フェル、ガルラ! 二人ともこっちに来い! チビ助――いや、メイが美味いもんくれるとさ!」

「あっ……名前」

「ん? ダメか?」

「しょ、しょんなことないでしゅ!」

「そうか、なら問題はないな!」

「あい!」


 トラロトル様に初めて名前を呼んでもらえた。

 まだこの神様のことちょっぴり苦手だけど、それでも少しだけ距離が近くなったみたいで嬉しいな。


 いきなり出てきたり、いきなり驚かしてきたり、いきなり近付いてきたり、いきなり持ち上げたりされなきゃ結構平気だ。悪い人じゃないし。


 つまり心の準備があれば平気なんです私。


 フェルトス様達がこっちに近付いてくるのを横目に私はトラロトル様に話しかける。


「トラしゃま」

「どうした?」

「あにょね、わたしまだちょぴっとトラしゃまのこと苦手でしゅ」

「……そうか。まぁ仕方な――」

「――でも! ……でも、しょの、変に驚かせてきたり、急に近付いてこなかったら平気でしゅ! だから、今はまだ無理だけど、ゆっくりでもいいんで、わたしトラしゃまとも仲良くなりたいんでしゅ……ダメでしゅか?」


 都合が良いことを言っているのはわかってるけど、苦手意識をすぐに無くすことはできない。

 でも仲良くなりたいのも本心だし、ゆっくり時間をかければきっと仲良くなれると思うんだ。


 神様と仲良くなりたいだなんて、ただの眷属風情が身の程知らずと言われるかもしれないけど。ダメなら諦めます……。


「――クッ」

「トラしゃま?」

「ハハッ! アーッハッハッハッハッハ!」

「ぴゃ!」


 急に笑い出したトラロトル様に体ごと跳ねる。びっくりした。


「良い! 許す! 俺もメイを驚かせないよう気を付けようじゃないか! できる範囲で、だがな!」

「あ、ありがとごじゃましゅ……」


 アーッハッハッハッ。ってものすごく豪快に笑ってるトラロトル様。ちょっと怖い。

 そばまでやってきたフェルトス様の足にピッタリくっついて、笑ってるトラロトル様を見上げた。


 ずっと笑ってるなこの神様。


 ボケッと眺めてたらフェルトス様とガルラさんに順番に頭を撫でられて顔がニヤける。えへへ、もっと撫でて。


「むっ、やはりフェル達だと表情が違うな」

「当然だ」

「ふむ。ならば俺もせいぜい嫌われんようにするか!」

「言っておくが、メイはオレのだからな。やらんぞ」

「ハハハハハ! 細かいことは気にするな!」

「……やらんぞ」

「ハハハハハ!」


 せっかく仲直りをしたのになんだかフェルトス様から険悪な雰囲気を感じます……気のせいかな?


「フェルしゃま!」

「なんだ?」


 とにかくこれ以上こじれさせないためにも、私はフェルトス様に声をかけてこちらに意識をむけさせる。


「あい、これどうじょ!」


 そしてにっこり笑って持っていたトマトを差し出した。


「あぁ」

「ガーラしゃんもどーじょ!」

「さんきゅー。美味そうなのが出来たな」

「へへへー」

「美味かったぞ。もっと食いたいと思うほどにはな」

「ありあとでしゅ、トラしゃま! あとで差し上げましゅ!」

「おっ、いいのか? 悪いな」

「あい!」


 もきゅもきゅトマトを食べ出したフェルトス様を確認した私は安堵に胸を撫で下ろす。

 どうやら意識を逸らすことに成功したようだ。よかった。


 そういえばモリアさん達はどこにいったんだろうか。

 探してみると離れたところで控えるように頭を下げてじっとしてた。


 あとでみんなにも謝らないとな!

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