42 畑に行こう
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「それではモリア、ステラ、そしてケルベロス。メイを頼むぞ」
「ガウ!」
『お任せを』
「いってきまーしゅ」
「あぁ」
「気を付けて行ってこいよぉー」
「ふぁーい」
お見送りに来てくれたフェルトス様とガルラさんに手を振りながら私達は日課の畑仕事へと向かう。
ケロちゃんズの背中に乗せてもらい畑に向かってるんだけど、眠さで頭がぼーっとしている。
昨日の夜はなぜかガルラさんがすごく構ってくれたから、遅くまでお話ししたり遊んだりしてたせいでまだちょっと眠いんだよね。
しかもガルラさんは自分の家に帰らずに泊っていったみたいで、起きたらガルラさん含めて三人でソファの上で寝てたし。
私はガルラさんに抱っこされるみたいにして寝てたらしく、そのせいでガルラさんの洋服が私の涎で大変なことになっていたのを白状します。すみませんでした。
それにしても、二人ともよくあのソファの上で寝られたなと感心する。
大人――しかも一人はかなりデカい、ガルラさんもそれなりにデカいけど――二人一緒じゃさすがに窮屈だと思うんだけどな。寝る用にも使うならもうちょっと大きなソファ買えばよかった?
フェルトス様はどこでも寝るし、寝心地とか関係なさそうだけど、もしかしてガルラさんもその口なのかな?
『メイ、お前大丈夫か?』
「らいじょーぶー」
『大丈夫じゃなさそうだな。仕方ない。畑に着くまで寝てていいぞ。着いたら起こしてやるから』
「ばう!」
「んー」
ごしごしと目をこするが、やっぱりぼんやりする。
私より遅くまで起きてたはずのフェルトス様やガルラさんは、あんまり眠そうじゃなかったのすごいな。
いや、フェルトス様は微妙だな。
あの人いつも眠そうな目をしてるし。特に朝と昼はしょぼしょぼしてる気がする。気のせいかもだけど。
朝とか夜とか関係なく暇さえあれば寝てる人だけど、基本夜型神様っぽい。蝙蝠だし。
蝙蝠って夜行性だったよね? 違ったっけ? わかんないや。
私がいるから朝とかにも起きてくれるけど、放っておいたらずっと寝てるイメージ。
そう考えると私も夜型なのかもしれないけど、夜には眠くなるし寝るから朝には起きる。元々人間だからそのときの習慣が関係してるのかな?
ガルラさんは……わかんないな。あの人は朝だろうが夜だろうが元気だしね。
「ふわぁぁ」
『だから無理をするな、寝ていろ。そんなことじゃ畑仕事はできないぞ』
「んむぅ……わかっちゃぁ」
ついには大きなあくびが出てしまい、モリアさんに怒られちゃった。
モリアさんの言う通りこのままではちゃんとお仕事が出来そうにないので、お言葉に甘えてちょっと寝させてもらいましょう。
ステラからも背中に頭突きをかまされて、寝るのを急かされている。
「……おやしゅみぃ」
『おぅ、おやすみ』
「ばうばう!」
私はケロちゃんズの背中のもふもふに倒れこみ、しばしの惰眠をむさぼります。おやすみなさい。
『メイ、起きろ。着いたぞ』
「んむぅ?」
『起きたな、おはようさん』
「おはよぉ、モリアしゃん。しゅてら。ケロちゃんじゅ」
「わふん」
体に衝撃を加えられている感覚で目が覚めた。
どうやらステラが起こそうと頑張ってくれてたみたい。ありがとう。
「んんっ……ふぃー」
起き抜けの体をぐいっと伸ばす。
ここに来るまでに寝させてもらったおかげで、さっきよりも頭がしゃっきりしました。
みんなにおはようの挨拶とお礼をすませた私は、さっそく畑仕事に取り掛かるべく行動を開始する。
とりあえずケロちゃんズに伏せの体勢を取ってもらい、彼らの背中から滑り台の要領で地面に降ります。
この瞬間は地味に楽しい。ケロちゃん滑り台最高です。
ちなみに私一人のときに背中に乗せてもらう場合は、伏せの体勢で地面に頭を付けたケロちゃんズの頭をよじ登って背中に行きます。
ケロちゃんズがそうしろって言った――喋ったわけじゃない。態度でそう示した――からそうさせてもらった。
大人組がいるときは大人組に背中に乗せてもらうよ。
そういえば昨日の畑仕事終わりにケロちゃん滑り台で遊んでたんだけど、迎えに来たフェルトス様とガルラさんに遊んでるところを見られた。
そのときのフェルトス様がなんともいえない顔しててちょっと面白かったよ。
ガルラさんはお腹抱えて笑ってたけど。なぜだ?
ケロちゃんズの背中から降りた私はリュックからタオルを取り出して首にかけると、水魔法を発動させて顔を洗う。
これでようやくさっぱりしゃっきりしましたね。
『メイ』
「なぁにー?」
モリアさんに呼ばれて振り返ると、ステラがくわえた麦わら帽子を差し出してくれてた。
『起きたならこれをちゃんとかぶっておけ。また倒れてしまうぞ』
「しょうだった。ありあとー」
ステラから麦わら帽子を受け取った私は、二人にお礼を言ってから荷物置き場に決めた場所に向かう。
お仕事の前にちょっとだけやることがあるんです。
荷物置き場に来た私は、家を出る前に影収納に入れた荷物を取り出した。
取り出し方も調整できるようになったので、飛び出すような出し方はしない。静かに出します。
何を持ってきたかというと、休憩に使うベンチと道具を入れておくちょっとした物置、それとパラソルです。
これも買ったものですね。
昨日ガルラさんが来た時に置いておけばよかったけど、忘れてたんだからしかたない。
とにかく出したものを魔法を使って設置していく。
物置には道具を入れて、背負ったリュックはベンチの上に置いた。
あとはベンチが影になるようにパラソルを設置すれば完成!
「よしっ!」
さて、やることも終わったし、今日も元気にお仕事を始めましょうか。
リュックから軍手を取り出して装着。首にはタオル。頭には麦わら帽子。そして長袖シャツにオーバーオールに長靴。
どこからどうみても畑仕事に最適な格好ですね。やるぞー!
といってもここは普通の畑じゃなくて神様の畑なので、やることは少ない。
雑草チェックに水やり、あとは作物が元気かどうか見回るくらい?
水やりも毎日やる必要はないから、実質雑草チェックと見回りくらいしかやることがない。
動物はフェルトス様の獣避け結界で近寄れないから気にしなくていいからね。
普通ならやらなきゃいけない作業とかもやらなくても大丈夫らしい。
どんな作物でも、最悪放置したとしても、ちゃんと美味しい野菜が育つというミラクルな畑ですよここは。神様チートは恐ろしいですね。
なにもかもお膳立てされた畑だけど、だからこそ知識が皆無な素人の私でもお世話できるようなものなので感謝しかない。
セシリア様のお家にも畑があるらしいし、そこをお世話してる人がいるみたいなのでいつかお話できたらいいな。
いくら放置おっけーな畑でもちゃんと愛情持ってお世話したいし、ちゃんとしたやり方をゆくゆくは覚えていきたい。
とりあえずステラだけ連れて私は雑草が生えてないかのチェックをしてこようと思います。
モリアさんとケロちゃんズはベンチのところでお休みしててください。
「じゃあ行ってくりゅねー。行こうしゅてらー!」
『何かあったら叫んでワシらを呼べよー』
「あーい!」
二人に手を振りながら私とステラは畑に向かった。
「よし。今日も無事しゅーりょーでしゅ」
『おつかれさーん』
「ばうばう」
「ふぃー」
畑の見回りを終えた私はモリアさん達がいるベンチへと帰ってきた。
いくらやることがあまりないといえど、それなりに畑が広いのでこの小さな体では結構な時間もかかるし重労働である。
ベンチに座り一息ついた私はリュックから水筒を取り出しお茶を飲む。
喉が渇いていたのでごくごく飲んじゃうけど、たくさん持ってきているから問題はない。
ステラにもお皿に入れて出してあげると、嬉しそうに飲みだした。
「モリアしゃんとケロちゃんズも飲むー?」
『ワシはいい』
「わふん」
水筒を差し出しながら聞いてみるが断られる。
ケロちゃんズは首を横に振ってるからいらないってことであってるよね?
差し出した水筒を手元に戻しながらベンチでまったり。
ここは地上なので太陽の光が眩しいけど、パラソルのおかげで平気です。
うーん、風が吹き抜けて気持ちいいですね。
「あ、しょうだ。お菓子持ってきたからみんなでオヤツにしよー」
『オヤツか。いいな』
「わん!」
ごそごそとリュックの中から取り出したるは町で買ったお饅頭。中のあんこが美味しいのです。
みんなにお饅頭を配ってもそもそ食べる。
もうちょっと休憩したら帰ってお昼ご飯の用意しないとな。
そんなことを考えながら、私はぼーっと自分の畑を眺める。
初日に比べて随分と成長した作物の数々。小さくだけど実をつけ始めているのだ。
…………うん。やっぱりおかしいよな。
私はその成長速度の速さにすこしばかり遠い目になってしまう。
いくら神様チートな畑といえど、早すぎるでしょう。
初日はなんかまだ小さかった。葉っぱとか。でも今はかなり成長してぐんぐん伸びてるよ。
なんか怖くなってきたな。こういうのにも慣れていかないとなぁ。ははは。
気を紛らわせるように私は口を開き、リズムに乗って音を紡ぐ。
もちろん歌詞はオリジナル。題名は『野菜よ元気に美味しく育て』だ。
思いついた言葉をノリノリで歌い上げる。
モリアさんになんだそれはって笑われたけど気にしない。ノリと勢いが大事なのだ。
畑の作物に聞かせるように、愛情をもって歌い上げた私はみんなからの拍手に頭を下げて応える。
思いっきり歌って気分も良くなった私は二曲目に突入する。
まぁこれはただの鼻歌のようなものだけどね。
「ふふふーん」
そのままリズムを刻みながらノリノリで撤収作業を始め、荷物をまとめた私はケロちゃんズの背中に乗せてもらい帰路につく。
そのあいだもなんだかんだずっと歌ってました。楽しかったです。




