39 冥界一家の団欒1
ブクマがまさかの35件。ありがとうございます、過去最高記録に並びました。嬉しいです!
町へ買い出しに行った翌日。
朝から畑のお世話をして、昼食とお昼寝を済ませてから、ガルラさんと買ったものの整理をしていた。
だけどちょっと量が多すぎて大変……私は指示をしたりしてるだけだからまだマシだけど。
食器棚や収納棚などの家具や細々したキッチン用品、カーペットやソファなどのもろもろを私の指示のもと魔法も使いながら黙々と設置してくれたガルラさん。
そのおかげもあって早々に作業は終わり、我が家に人並みの生活空間が完成いたしました。
なんか感動……!
劇的なびふぉーあふたーだよ。
ただの生贄の祭壇な広場が、快適な生活空間に変身いたしました。
でも欲しかった私サイズの調理台や流し台なんかは当然のごとく存在しなかったので、代用品で低めのテーブルを設置。流し台代わりの洗い桶はそのままですけど。
この模様替えの許可はちゃんと取ってますから心配ご無用。
というより、フェルトス様はこの作業中ずっとベッドの上に寝転んでこっち見てましたし、文句があるならそのとき言ってると思うので。
何も言われなかったということは、問題ないということ。そう思っときます!
「なぁメイ」
「う? なんでしゅか、ガーラしゃん」
珈琲を出す準備をしていた私の背中にガルラさんから声がかかる。
振り向くと設置したソファに早速身を預けてこっちを見てるガルラさん……と、その隣にフェルトス様。いつの間に移動してきたんだろう。
目を閉じてグダっとしてるフェルトス様とガルラさんで三人掛けソファは満員。
二人とも翼があるから横向きに座っているせいですね。
私の場所がない……。
その翼しまえばいいのに……消せるの知ってるんだぞ。
「残った食料はどこに片付ければいいんだ?」
「しょれなら、わたしのリュックに入れといてくだしゃい」
自分の影を指差しながら聞いてくるガルラさんに、私は置いてあるリュックを指差す。
ガルラさんの影に入れっぱなしだと私が使うときに、いちいちガルラさんを呼ばないといけなくなっちゃうしね。
リュックやカバンに入ってたものは出かける前に一回全部出して整理してカバンに詰め直したし、お出掛けでもリュックの活躍はなかったから今リュックには何も入ってない。
服とかと一緒に入れても、中でごちゃごちゃになっちゃう想像したらなんか嫌だし。
一応そういうことにはならないって聞いたけど……まぁ一応ね。一応。
洋服入れる用の収納も買ってきたから、また時間ある時にでも詰め直してカバンの容量もあけたい。
「うーん」
「う?」
どうしたんだろう。なんかガルラさんが考え込み始めた。
まぁいいか。とりあえず珈琲作っちゃお。
インスタントしか飲んだことない私だけど、こっちにはないっぽいのでお店の人に淹れ方を聞いてきました。メモもあるので、それを見ながら作業します。
豆はすでに挽いてあるのを買ってあるのでそれで。いつかは豆から挑戦してみたいですね。
「なぁフェル」
「なんだ?」
「オレが食糧庫代わりに箱作るから、それに拡張魔法つけてくれるか? でかいやつ」
「かまわんぞ」
「じゃあ後でちゃちゃっと作るから完成したら頼む」
「あぁ」
なにやら背後でお話が進んでいます。
リュックに入れておけばいいと思ってたんですけど、たしかにそれ専用の入れ物があった方が便利なのは便利。
リュックだとお出掛けに使ったりするもんね。
だからそういうの作ってくれるならありがたく頂戴します。
というかフェルトス様も拡張魔法使えるんだ。神様だったら基本的にみんなが使えるのかな?
「ガーラしゃんありがとー。フェルしゃまも」
「どいたまー。あ、オレの分は砂糖もミルクもなしで頼む」
「オレのはどちらも入れてくれ。甘めで頼む」
「あーい」
フェルトス様は意外と甘党。そう心のメモに書き残しつつ人数分の珈琲を入れる。
当たり前だけどインスタントと違って結構手間がかかるけど、この手間でフェルトス様やガルラさんが美味しいって笑顔になってくれるなら実質手間はゼロみたいなもんでしょ。
「できたよー」
三つのコップをお盆に乗せて運ぼうとしたけど、意外と重い。
でも大丈夫。今の私には素敵な裏技が使えちゃうんだからね。
秘技、お盆に魔力を流して浮かせてから運ぶ魔法!
そのままですが、これが便利なんです。
この浮かせる魔法は本当になんにでも使えちゃう。料理中とかも大活躍だから、今では一人でなんでもできちゃうね!
もちろんフェルトス様かガルラさん、もしくはモリアさんが近くにいるとき限定だけど。
初めはなかなか難しかったけど、今ではわりと簡単に使えるようになってきた。
いつかは私もフェルトス様達みたいに指パッチンで魔法発動させるのが夢です。へへへ。
お盆と一緒にテーブルに移動して、二人の前に珈琲を配ります。
「はい。こっちはフェルしゃまのー」
「あぁ」
フェルトス様のはシックな紫色で無地のコップ。ご注文通り砂糖もミルクもマシマシ甘党用珈琲に仕上げました。もはやコーヒー牛乳。
「こっちはガーラしゃんの分」
「サンキュー」
ガルラさんのはフェルトス様のと色違いで赤色のコップ。中身はブラックコーヒーでございます。
「これはわたしのー」
せっかくなので私も二人とお揃いのを買いました。色は黒です。元の髪色が黒だからね。
明るい黄色とか、青とか良いなぁと思ったけど、お揃い感がないので却下しました。
ちなみに私のはカフェオレです。
二人のコップの間に自分のコップを置いてから、ソファによじ登る。
ほらほら、その無駄に長い足をどけて場所を開けてください。
ぺしぺし叩いて二人の足をどかせた私は満足げに真ん中に陣取った。
あらかじめ置いておいた私の雲クッションがガルラさんに奪われていたので、それを取り返して背中側に設置。
よし、準備完了。
フェルトス様にコップを取ってもらって、三人揃って一服です。
なんだか休日の家族みたいでいいですね。
これでテレビがあれば映画でも見ながらまったりしたいところ。
三人で他愛もない話をしながら束の間の休息を楽しむ。
珈琲を飲み終わったあとは、私は後片付け。
ガルラさんは食糧庫を作ってくれるということで一旦離脱。
どこでどうやって作るんだろう。
魔法かな? 日曜大工かな?
フェルトス様もお仕事のため一時離脱。
晩御飯までには帰って来るらしい。
その間一人でお留守番かと思いきや、モリアさんとステラを召喚してくれたので三人でお留守番です。やったね!
しかしここには遊び道具が何もない……のは昔の話。
そう。抜かりのない私は町でボールや積み木なんかのおもちゃを買っていたのだ。
テレビゲームとかあったら一番だし無限に時間潰せるんだけど、それはやっぱり贅沢だよね。そもそもないし。
モリアさんがいるので、ある程度の魔法の使用と近場のみだけど外出も許可されてるし、魔法の練習がてら遊びに出掛けましょう。
さっそくリュックに遊び道具を詰めてから、杖をカバンから取り出す。
「よし、準備完了。二人とも乗ってー」
杖に乗り込んだ私は二人に声をかけると、二人はそれぞれの場所に乗り込んだ。
モリアさんは私の頭の上。ステラは杖の先端部分の装飾が多いところ。
たしかに棒の部分より安定感ありそうだけど、落ちちゃったら危ないし、自分とステラをちゃんと固定してから飛び立ちます。
目的地はガルラさんと魔法を練習したあそこです。
良い時間になったら帰って晩御飯の準備と、今日の分のトマトジュースを作りますかね。




