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35 さくさく買い物そして休憩

 気分を切り替えて門へと足を向けると、門番さん達が跪いているのが見えてちょっとビックリした。

 慌てて止めようと口を開きかけたけど、今の私は一人ではなくフェルトス様が一緒なのだ。

 安易に彼らの行動を諌めるような行動はよろしくない。


 そう思い直した私はぐっと口をつぐむ。

 居心地は悪いけど仕方がない、私の感情でフェルトス様が舐められるようなことがあってはいけないのだ。

 とりあえずここだけ我慢。今のフェルトス様はどこからどう見ても人間の姿だし、きっと町に入れば紛れ……ダメだ。モリアさんもステラもいるし見る人が見ればわかるかぁ。


 あんまりにもみんなの邪魔になりそうなら早めに切り上げて帰ればいい。

 もぅどうにでもなぁれ!


『よくできました』


 やけくそ気味になっていたら、モリアさんが頭を撫でてくれてる感覚がした。それとともにお褒めの言葉も。

 嬉しい、でへへ。ちゃんと言われたこと覚えてます。


「あ!」


 跪いてる門番さん達には目もくれず、さっさか町の中へと入っていこうとするフェルトス様とガルラさんのあとを追って私も通り過ぎようとすると、門番さんの中に知っている人を発見しました。

 前にここへ来た時に対応してくれた優しくて男前な門番さんです。


「どうした?」

「フェルしゃまー。あしょこにいる門番しゃんとお話ししてきていいでしゅかー?」


 行儀は悪いけど指を差してフェルトス様に確認をとる。

 フェルトス様は私の指の先に視線を向け目を細めた。


「……かまわんが、手短に済ませろ」

「あーい!」


 オッケーをもらったのでステラとモリアさんを連れて、たったか門番さんへと近付き元気に挨拶を交わす。


「こんにちわ、門番しゃん。お久しぶりでしゅ」


 だいたい一週間とちょっとぶり……くらいでしょうか。今日も男前ですね。


「お久しぶりでございます」

「あにょ。門番しゃんにちょっと聞きたいことがあるんでしゅけど、いいでしゅか?」

「私に答えられることならばなんなりと」


 顔も上げずに答える門番さん。仕方ないんだろうけど、前と違う対応にちょっと戸惑う。

 でもフェルトス様といるときにはこんな感じが当たり前なんだろうし、私もちょっとずつ慣れていかないとな。

 とにかくフェルトス様に手短に済ませるように言われているので本題に入る。


「えっと、この間出してもらったミルクとっても美味しかったでしゅ! それで、わたしもそのミルクが欲しいんでしゅけど、どこで売ってるか教えてもらってもいいでしゅか?」


 ここでは牛乳はミルクらしいので私もミルクに直します。

 あのミルクすっごく美味しかったからもっと飲みたいのよね。


「もちろんです。あのミルクはこの町の西の外れにある牧場にて売りに出されております。もしくは町の中心部にあるミルメルクという店にも置いてあります。よろしければ、そこまでの地図をお書きしましょうか?」

「いいんでしゅか? お願いしましゅ!」

「ハッ。少々お待ちください」


 一度頭を下げてからそっと立ち上がった門番さんは、詰所の中に足早に消えていった。

 そしてわりとすぐに出てくると、二つ折りにした紙を二枚手渡してくれた。これが地図みたい。


「ありがとうごじゃいましゅ!」

「いえ、恐縮です」


 私に地図を渡した門番さんはまたすぐに列に戻って跪いた。

 あんまりここに長居しても彼らの邪魔になってしまうし、フェルトス様も待たせてるからもう戻らないと。

 最後にもう一度お礼とともに軽く頭を下げてからフェルトス様の元へ。

 私が戻ってきたのを確認したフェルトス様が足を進めたので、私もそれに従う。


 さて、まずはどこに行こうかな。

 地図をポケットにしまった私は、代わりに買い物メモを取り出した。



 サクっと必要なものの買い出しの大半を終わらせた私達は、少し休憩するために前にシエラさんと来ていたカフェに来ています。


 本当はフェルトス様達とゆっくりお買い物したかったよ。

 でも町へ入ってからというものあからさまに騒いだり接触したりはしてこないけど、どうにも町の人の視線とか態度が気になる。

 お店の人とか明らかに緊張したりしてたし、これ絶対こっちのこと気付かれてるよね?

 なので予定通りさっくりと買うものを買って撤退したいと考えてサクサク行動しました。


 欲しかったものとか必要なものはあらかた買えたし、あと買うものは食料品のみ。

 なんだかんだフェルトス様を連れまわしちゃってるから申し訳ないけど、フェルトス様自身は気にしてないみたいなので助かる。

 むしろ私が抱っこして移動してもらって楽したりしてるのは内緒。へへっ。


 ちなみに買ったものは全部ガルラさんが自分の影に入れてくれた。

 ありがたいけど、せっかくの私のお宝リュックの見せ場はなかった。いや無くていいのか、変な人に目を付けられて盗まれたら嫌だもんね。


 カフェの注文時、注文を取りにきてくれたおじ様がなんだか妙にソワソワキラキラした視線をフェルトス様に注いでたのを私は見逃しておりません。この人もファンの方でしょうか。


 でもフェルトス様はいらないって言って何も頼まなかったから少ししょんぼりしてた。

 私とガルラさんが注文するとウキウキした顔になったけど。忙しい人だ。

 ちなみにミルクと珈琲をそれぞれ頼みました。もちろんステラとモリアさんにもミルクあります。


 私の現在位置はフェルトス様のお膝の上。なのでフェルトス様に視線を向けてるのがよくわかるのです。

 最初はちゃんと椅子に座ろうとしてたんだけど、その前にひょいっと持ち上げられてとても自然にお膝の上に座らせられました。だんだん定位置になってきてる気がする。


「なぁメイ。あとはどこ行くんだ?」


 注文したミルクがきたのでちびちび飲んでると、対面に座ったガルラさんが聞いてきた。


「んちょねー……だいたいメモに書いたやちゅは買えたから、あとは市場とかで食料品買ってー、牧場でミルク買いましゅ。それともう一箇所行きたいとこがありましゅ」

「行きたいとこ?」

「騎士しゃん達のとこでしゅ。この間町に来たときにシエラしゃんって騎士のお姉しゃんに案内してもらったんだけど、途中で倒れちゃったからまだお礼言えてないの。ごめんなさいもしないと」

「へぇー」

「果物のちゅめあわせでも買ってお土産にしましゅ!」

「そっかそっか。んじゃあ美味そうなの選ぼうな」

「あい!」


 ずっとシエラさんのことは気になってたから、遅くなっちゃったけど挨拶に行きたいと思ってたんだよね。

 せっかく町に来れたんだし忘れないうちに行っておきたい。

 フェルトス様にお伺いしたらいいよって言ってくれたので遠慮なく寄り道します。


「……ガルラ」

「ん、どうした。フェル」

「あいつらをどうにかしてこい。さっきから鬱陶しくてたまらん」

「お、ようやくか。フェルにしては我慢した方か?」

「いいから早く行け」

「あいよー」


 フェルトス様が急によくわからないことを言い出したので見上げてみると、何故か頭を撫でられた。


 うへへ、もっと撫でて。


 私がにへにへしながらフェルトス様の手に頭を擦り付けてる間に、ガルラさんは笑いながらどこかに行ってしまった。

 なんなんだろう。アイツらって誰だぁ?


「どしたのー?」

「気にするな」


 気にするなと言われたら、なおさら気になるのが人の心というものだ。

 フェルトス様の手が頭に乗ったまま、きょろきょろと周囲を見回す私。


 やっぱり変な人はいない。仕方ないので諦めてミルク飲みます。

 ちょっと眠たくなってきた。



「ただいまー」

「んむっ! はぇ……あ、ガーラしゃ、お帰りなしゃー」


 気が付いたら寝てたみたい。ガルラさんの声で目が覚めました。


「ただいまメイ。涎出てるぞー」

「はぇ!?」


 慌てて服の裾で口元を拭う。本当だ。

 あ、フェルトス様の服にもべっとり涎の跡がついちゃってる。


「フェルしゃま、ごめんちゃい……」

「気にするな」


 しょんぼりしつつ謝ると、フェルトス様は優しく頭を撫でて慰めてくれた。

 そのあと指を鳴らして魔法を発動させると、涎の跡は綺麗さっぱり消えてました。便利ね、その魔法。私も早く覚えたいな。

 もう一度音が聞こえたと思ったら、今度は私の服が綺麗になりました。ついでに口周りのベタベタも……。ありがとうございます。

ガルラが蹴散らしに行ったのは、遠巻きに見ていた神官達。

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