34 再び町へ
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「ガーラしゃん、ガーラしゃん! 町が見えてきたよー!」
「そうだなー。落ち着けー」
乗り込んでいる籠から身を乗り出し、町を指差しながらぴょんぴょん飛び跳ねガルラさんに報告をする私。
そんな私の報告を本から視線すら外さず、はしゃいでる私の服を引っ張って籠の中に連れ戻すガルラさん。
ちょっと興味なさすぎでは? 別にいいけどさー!
今日の私はデカモリアさんに乗って久しぶりに町へお買い物です。やっとですよ!
前回買えなかったものとか、必要だと思ったものとか、食料とか、とにかくいっぱい買いにきました。
メモも書いてきたので抜かりはありません。
今回はもう正体がバレているのは知っているし隠しても意味がない。
なので町の人には申し訳ないが、お騒がせするのは承知の上で町のすぐ前までモリアさんで乗りつけようと思います。
ただ理由はそれだけではない。
「フェルしゃまー。もうしゅぐ着きましゅよー!」
「……ん、あぁ。……わかった」
ずっと寝ていたフェルトス様を起こすと、大口を開けてあくびをしだした。
そう。実は今回はフェルトス様も一緒なのだ。
なのでフェルトス様を歩かせるわけにはいかないから町まで乗っていきます。
私、フェルトス様、ガルラさん、モリアさん、そしてステラ。
今日は冥界家族五人揃ってお出掛けなのです! うふふふふ、私のテンションが上がってしまうのも無理はないでしょう?
ちなみにフェルトス様はいつもの姿じゃなくて、人間の格好に変身してます。
いつものねむねむおめめに、テンションの低さが相まってなんかダウナー系お兄さんって感じです。……使い方合ってるのかな?
日光除けに目深にかぶったフードがまたいい味を出しています。
ガルラさんは翼を仕舞っただけで、ほぼ姿は変わってない。
サングラスと帽子をかぶったチャラ男って感じですかね?
そして私はというと、セシリア様から頂いたチビ蝙蝠の衣装! ではなく、今日はなんとフェルトス様と親子コーデです!
実はセシリア様が持ってきたリュックの中にこのコーデ一式が入ってました。何故?
でもせっかくの機会なので、今回はお願いして親子コーデでお出掛け。うふふ。
カバンは蝙蝠羽のリュックを採用しています。
私達の格好を見たガルラさんが「ずるい!」って叫んでたけど仕方ないじゃないですか。ガルラさんの分はなかったんですから。諦めてください。
「んじゃフェル。オレはそろそろ行くわ」
「あぁ」
読んでいた本をパタンと閉じたガルラさんが立ち上がる。
「う? ガーラしゃんどこ行くの?」
もうすぐ町だよ。まさか帰るの?
立ち上がったガルラさんのズボンをぎゅっと握りながら聞く。
「んな顔すんなって。ただたんにオレが先に行って、町のヤツらにフェルが行くけど気にすんなって言いに行くだけだからさ」
「はぇ、にゃるほど」
いわゆる先触れってやつですか。
たしかに事前に知らされてたら心の準備ができていいもんね。お気遣いだ。
「んじゃあとでな」
「あぁ」
「いってらっしゃい。気を付けてねー」
しかしどうやってここから町へ?
ここは空の上だし、今のガルラさんには翼がないじゃん。出すとしても洋服破けちゃわない?
もしかして魔法的な何かで服はいい感じになるのかな。
そんなことを考えながらガルラさんを見ていたら、ガルラさんは普通に籠を乗り越えてそのまま下に落ちていった。
飛び降りたと言った方が正確かもしれないけど、何やってるんですかあの人!
「ガーラしゃん!?」
慌てて下を覗き込み生存確認をするが、ガルラさんの姿が見えない。どこ行った?
え、大丈夫なの? 結構高いけど死んでないよね?
きょろきょろ視線をさまよわせてガルラさんの姿を探していると、後ろからフードを引っ張られて籠の中に戻された。
「危ないからやめろ。落ちたらどうする」
「でも、ガーラしゃんが」
「アイツなら大丈夫だ。大人しくしていろ」
「……あい」
フェルトス様がそう言うなら……でも心臓に悪いので急に飛び降りるのはやめてほしいなぁ。
その後は町に着くまでフェルトス様のお膝の上で過ごしました。
「とうちゃーっく!」
「……やっとか」
「おつかれーい」
門の少し前に着陸した私達は、先行していたガルラさんのお迎えを受けて合流した。
「ガーラしゃんガーラしゃん」
「ん? どしたメイ」
ガルラさんのズボンをつんつく引っ張ってこちらに注意を向けさせた私は、気になっていたことを聞く。
「ガーラしゃん大丈夫だった? 怪我してない?」
見た感じどこにも怪我はなさそうだからフェルトス様の言った通りだけど、やっぱり心配なんだもん。
「へ? 怪我? なんで?」
「モリアしゃんから飛び降りたでしょー。へいき?」
「…………あぁ、なるほどそういうことか。だいじょぶだいじょうぶ。オレ実は翼がなくても飛べるんだよ」
「え、しょうなんでしゅか!? どうやって飛ぶのー?」
「ふふふ。実はな……」
「……ごくり」
「普通に杖で、だろう。何を勿体ぶっているんだ?」
「へ、杖?」
杖で飛んできた……はっ! 冷静に考えれば当たり前じゃないですか!?
空の飛び方教えてくれたのガルラさんだし、そのガルラさんが飛べないはずがない! 杖だって持ってるだろうし。
うわぁ、どうしよう。馬鹿な質問すぎてすっごく恥ずかしい!
「おいおいフェル、ノリが悪いぞー!」
「そうか」
「ったくぅ。ま、フェルの言う通り杖に乗って飛んできたんだよ。ただメイ的にはオレやフェルが飛ぶってなったら自前の翼でってイメージが強すぎて、杖に乗るって発想はなかったわけだな」
「みぇ……」
「おいおいおい。真っ赤じゃねぇか。なんだよかっわいいなぁーメイはー」
ガルラさんに頭ぐりぐり撫で回されてるけど、今はそんなこと気にならないくらい恥ずかしいです。ぴえぴえ。
「……もういいか。さっさと買い物とやらに行くぞ。それとメイ、貴様はキチンと帽子をかぶれ。また倒れるぞ」
「ぁぅ……ごめんちゃ」
そういってフェルトス様は私の服についてるフードをバサリをかぶせてくれた。ありがとうございます。
モリアさんでの移動中はモリアさんで影になってたけど、いまはガンガン日光が当たってますもんね。気をつけます……。
よし、気持ちを切り替えていきましょう!
リュックよし! フードよし! お金よし!
足元にはステラ。頭の上にはモリアさん。両脇にはパパとお兄ちゃんを伴って、いざお買い物!




