23 セシリア様といっしょ
昨日の今日でもう一つの大目標だった感想を頂くという目標を達成できました!
連載のお話で知り合い以外の方に感想を頂けたのが初めてで、本当に嬉しいです!ありがとうございます!
別世界に落ちてから早いもので今日で六日目。そして六日目にして初めてフェルトス様とのおでかけです。
連れてきてもらったのは天界という色々な神様が住んでいる場所。冥界と違ってとっても明るいし、緑も多くて素敵な場所だ。
この天界にはセシリア様のお家があって、天界へ来たのはそのセシリア様のお家へお邪魔する為らしい。
町で倒れて以来ずっと冥界――というか、お家付近から出してもらえなかったので、久しぶりのお出かけにテンションが上がっているメイちゃんでございます。ふんすふんす。
セシリア様のお家は我が家とは違い宮殿のようなお家だった。もちろんお庭もあって、そこには緑がたくさんありました。
しかも綺麗な女の人がたくさん働いていて、とても目の保養でしたね。素敵です。うふふ。
まるで観光名所を巡ってるみたいでなおさらテンションが上がっていくのを感じる。
「はわぁ……リアしゃまのお家はしゅてきでしゅねぇ」
そうしてついこぼれた独り言なんだけど。
「……」
背後から不穏な気配を感じるのは気のせいだろうか。
思い切って振り返ってみれば、そこには心なしかしょんぼり顔のフェルトス様が立っていた。
「はわっ!」
フェルトス様のしょんぼり顔に胸が痛み、咄嗟に駆け寄る。
そして拙い言葉だが勢いよく言い訳を始めた。
「ち、違ましゅよフェルしゃま! たしかにリアしゃまのお家はしゅてきなんでしゅけど、しょれは旅先のお宿がしゅてき! みたいな。しょんなにゅあんしゅで!」
身振り手振りで必死に伝える。
「にゃんだきゃんだ、やっぱい自宅が一番っていいましゅか! しょれに、わたしはしゅてらやモリアしゃんも大しゅきでしゅし、フェルしゃまのことも大大大しゅきでしゅかや! ね! ね!」
というか私の主様はフェルトス様だけですからね。なのでそんなしょんぼりした顔をしないでくださいませ。ものすごく心が痛みます!
「ふっ……ふふふ」
「う?」
フェルトス様の足元をちょろちょろしながら必死に情熱を伝えていただけなのに何故か笑われました。解せぬ。
そうしてなんとかフェルトス様のご機嫌を取った私は、通された中庭でフェルトス様と一緒にセシリア様が来るのを待つ。
中庭には見たことのない綺麗な色の小鳥や蝶々が飛んでいたり、お花が咲いていて、とても華やかだ。
だけどここでまた私が楽しそうにしてしまったら、きっとフェルトス様が再度しょんぼりしてしまう可能性が出てくるので大人しく座ってお茶をしています。私は空気の読める良い子ですから。
ただ、今の私はほぼ幼児。だから普通に椅子へ座るだけではテーブルの上に届かない。なので座ってる場所はフェルトス様のお膝の上だったりします。
フェルトス様も自然に膝へ乗せてくれたし、なんだか機嫌も良さそうなのでウィンウィンの関係というやつですね。
「あらあら。ずいぶん仲良しになったじゃない。おはよう二人とも」
「あぁ」
「リアしゃまだ!」
しばらくフェルトス様と戯れながら時間を潰していれば、突然麗しいお声が中庭に響いた。
視線を向ければセシリア様が微笑みながら私達を見ておられた。今日も素敵な御姿が光輝いております。眩しい。
セシリア様とお会いできて嬉しくなった私は、するりとフェルトス様の膝から降りてセシリア様へと突撃する。
「リアしゃま。おはようごじゃいまーしゅ!」
「ふふっ。おはようおチビちゃん。朝から元気いっぱいね」
「えへへー」
セシリア様の素敵笑顔を間近に受けながらの頭なでなで。これはまさしく子供の特権というやつですね。このポジションは絶対誰にも渡さない!
今日も眩しいくらい美しいセシリア様に撫でられつつ、私は顔をあげる。
「リアしゃま。おしょくなりまちたけど、お布団あいがとうごじゃいまちた! しゅっごく寝心地がいいでしゅ!」
「あら、それは良かった。気に入ったかしら?」
「あい!」
それはもう。あの布団以外は考えられないというくらいには気に入りましたとも。
「さて」
そうやってセシリア様とニコニコ笑い合っていたら、急にセシリア様がフェルトス様に視線を向けた。
「それじゃあフェル。このままおチビちゃん借りるから、あんたはもう帰っていいわよ」
「う?」
セシリア様の言葉に首を傾げる。
どういうことでしょうか。私は何も聞いていないんですけれど、何故フェルトス様だけお帰りになるんですか。
私を置いて話は進んでいく。
「……ちゃんと返せよ」
「わかってるわよ。ほら、しっしっ」
「え? え?」
セシリア様がまるで虫でも払うかのようにフェルトス様を追い払う仕草をする。
フェルトス様は去り際に私のところへ来て、無言で頭を一撫でしてから去っていった。一人状況についていけない私を置いて。
「ふぇゆ、しゃ?」
呼びかけても応答はない。本当に一人で帰ってしまったようだ。
別世界に来てずっと一緒にいてくれた人が、何も言わず自分を置いて去ってしまった。そのことがずしんと心に重くのしかかってしまった私は急速に不安に襲われる。
どうして、と疑問が頭がをぐるぐる回る。
やっぱり私はうるさかったのかな。鬱陶しかったのかな。もしかして捨てられてしまったのかな。
そんなことはないと理解しているけれど、どうしても不安になってしまう。
フェルトス様はちゃんと迎えにきてくれるのだろうか。さっき「返せ」と言っていたからきっと大丈夫なはず。
「……あぅ」
そうやって自分に言い聞かせるも、寂しさと悲しさが膨れ上がってどうしようもなくなる。
大人の自分だったらこんなに不安に思うことも、特別何かを思うこともなかったはずなのに。どうしてこんなに悲しくなるのだろう。
やっぱり子供になった影響が強く出ているのかな。
「リアしゃま……なんでフェルしゃま、帰っちゃった、でしゅか?」
セシリア様のお洋服をぎゅっと握り見上げると、困った顔をしたセシリア様が滲んで見えた。
「あらあら」
わざわざ屈んでくれたセシリア様がハンカチで私の顔を拭ってくれる。
そのあと宥めるように私の頭を撫でてくれた。
「泣かないでおチビちゃん。大丈夫よ、あとでちゃんとフェルと会えるから」
「……ほんと、でしゅか?」
「えぇ、もちろん。というか、まさかとは思うんだけど。……おチビちゃんは今日のことフェルから何も聞いてなかったりするの?」
「あい」
「はぁー。あの男は……まったく」
「う?」
頭痛を耐えるようにセシリア様が眉間を押さえる。
とりあえず捨てられたわけではなさそうなので一安心。だけど何故ここへ置いていかれたのでしょうか?
「あのね。今日はおチビちゃんの服を作るため、ここに来てもらったの」
「おようふく?」
「えぇ。あなた、この前倒れちゃったでしょう? だから私がおチビちゃんの日光対策用の服を見繕ってあげようと思って。フェルが「そういうのはオレにはわからん」って言って私に頼んできたのよ」
「はぇー」
そうだったんだ。
もしかして冥界から出してもらえなかったのも、私の服が出来てからって思ってたから、なのかな。そうだとしてもちゃんとそう言って欲しいものですけどね、まったく。
完全に不安が解消されたからか、すっかり涙も引っ込んでいきました。
フェルトス様は報告連絡相談略して報連相をもっと大事にした方がいいと思います!
「む?」
そこまで考えてふと思う。
ここに来た理由が私の服を作る為なのだとしたら、もしかしなくともオーダーメイドなのだろうか。それとも服屋さんが来てくれるのだろうか。天界式のお買い物はまだよくわからないや。
「さ、おチビちゃん。もう準備はできてるからさっそくお部屋に行きましょうか! おチビちゃんは可愛いから飾り甲斐もあるし、今からすっごく楽しみだわ!」
「はわっ」
セシリア様のお顔がとてもキラキラ輝いていらっしゃいます。
どうしよう。嫌な予感しかしない。個人的には帽子でも被ればいいかな、ぐらいの感覚だったんだけど……もしかしてそれじゃダメな感じなのでしょうか。だとしたら日傘も追加しておいた方が良いかな。うん。
「こっちよ」
「あい」
そんなことを考えながらセシリア様と手を繋いで通路を進む。
冥界とは違い、歩いていると人とたくさんすれ違う。しかも綺麗なお姉様ばかり。
この人達はセシリア様の眷属的な人なのかな。それとも天女? 天使? さん的な人でセシリア様に雇われているのか。うーん、わかんないや。
「わぁー」
セシリア様のお家は豪華で、歩いているだけでもいろんな情報が入ってきます。
思わずキョロキョロ見回していたらセシリア様に笑われちゃったけど、別にもう良いんです。好奇心に素直に生きることにしましたから!
そうして辿り着いた部屋は、なんとお風呂でした。
そう、お風呂です。念願のお風呂です! やったー!
「お風呂だぁー!」
すごいぞ広いぞ綺麗だぞ!
あとなんだかお湯にバラみたいな真っ赤な花びらが散らされているよ! とてもいい匂いです!
こんなの二次元の世界でしか見たことがない!
……ふぅ。少しテンションが上がり過ぎてしまったようだ。落ち着こう。
「ふふっ。どうせあの馬鹿蝙蝠のことだから、碌にお風呂にも入れてもらってないんでしょ。さぁ。作業の前にお風呂に入って綺麗になりましょうね」
「ふへへ。あーい!」
元気よく手を上げる。
しかもセシリア様と一緒にお風呂。なんというご褒美。最高です!
こうして私はセシリア様と至福のひと時を過ごしました。




