番外編 おやつの時間
急に食べたくなる。
「…………ガレット食べたいにゃ」
午後二時。突然の思いつき。
衝動的にじゃがいものガレットが食べたくなってしまった私は早速キッチンへ立つのだった。
「――というわけで、今からじゃがいものガレットを作ります!」
「わーい、おやつだ!」
「どういうわけかわかんねぇけど、了解。おやつだな」
お揃いのエプロンをつけた私とシドーとカイル。この三人で今からじゃがいものガレットを作りたいと思います。
材料はじゃがいもとハムとチーズ。以上。
ハムをベーコンにしても美味しいけど今回はハムで。サクッと簡単に作りたいと思います。
「それじゃあ私はハムを切るから、カイルはじゃがいもの皮を剥いてくれる?」
「はいよ」
「なぁあるじ。おれは?」
「シドーは応援ね」
「まかせろ!」
シドーの「がんばれー」という声援のもと、私とカイルは分担して作業を進める。
私はハムを千切りに。チーズも削っておく。ピザ用チーズがあれば楽なんだけど、ないから自分でそれっぽく仕上げます。
それが終わったら次はカイルが剥いたじゃがいもも千切りにしていく。
フェルトス様とガルラさんの分も作る予定だから、その分たくさん用意しないといけない。個人的にこのガレット作りで一番大変な作業がこの千切り作業だと思っている。
でも切り終えたらあとは混ぜて焼くだけだ。それまではひたすら切ることに専念するとしましょう。うぉりゃー!
「……ふぃー。こんなもんかにゃ?」
「だな。お疲れさんお嬢」
「ふへへ。カイルもね」
途中で皮剥きが終わったカイルも加わり、二人でひたすらじゃがいもの千切りを量産した。その結果、千切りじゃがいもの山ができました。ちょっとした達成感。むふん。
「なぁあるじ。おれの応援どうだった?」
「最高だったよ、ありがと!」
「そか! ふふふん!」
誇らしげに胸を張るシドーの頭を軽く撫でたあと、次の作業に意識を移す。
切ったじゃがいもに塩を入れて揉み込んで、出てきた余分な水分を絞る――という工程は今回省略。テーマは簡単サクッとなので。
でもこのひと手間でじゃがいもの余分な水分が抜けてカリッと焼き上がるから、時間があるならオススメだ。
「ねぇカイル。このじゃがいも軽く水にさらしたあと、水気きっといてくれる?」
「わかった。シドー、手伝ってくれるか?」
「ん、いいぞ! 任せろ!」
「よろしくねー」
本来なら、この水にさらすという工程は必要ない。じゃがいものでんぷんが接着剤の役割を果たしてくれるから、そのまま切った材料を混ぜて焼けばいい。だけど私はやる。
まぁ、ここは個人の好みということで一つ。
カイルがじゃがいもを水でさらし、シドーがじゃがいもの水気をきる。そんな連携プレイを横目で見ながら私も自分の作業を進める。
まずさっき切ったハムと、用意していたチーズをボウルに入れて軽く混ぜる。はいおしまい。さて休憩休憩……なんちゃって。冗談です。てへっ。
水気をきり終わったじゃがいもをシドーから受け取り、それもボウルへ投入。
塩胡椒と、繋ぎの小麦粉を振り入れる。片栗粉でも良いと思う。それをまた軽く混ぜ混ぜ。これで本当に終了です。あとは焼くだけ。
フライパンに油を引いて火にかける。温まったら混ぜた材料をフライパンに広げて焼き色がつくまで焼きます。
良い感じにじゃがいもに火が通ったら裏返してまた焼く。時々押さえながら焼きましょう。
火が通って両面に焼き色がついたらメイ特製『ハムとチーズが入ったじゃがいものガレット』の完成だ! いえーい!
「うまそー」
「あ、まだダメだよシドー。食べるのはこれ全部焼いてからね」
「ちぇー」
完成した途端手を出してきたシドーのおててをパチンと叩き引っ込めさせる。まったく油断も隙もない。誰に似たのでしょうか。
「良い子で待ってたら、あとでちょっと味見させてあげるよ」
「まじで? やった!」
私の言葉にテンションを上げたシドーが一気に良い子になったので私は心置きなく作業の続きを始めた。といっても混ぜた材料を焼くだけなんだけどね。
「お嬢。ガレット切り分けたら皿に盛って良いんだよな?」
「うん、おねがーい」
「はいよ」
「まだかなまだかなー」
カイルと手分けをして黙々と作業を進める。私が焼いて、カイルが焼き上がったガレットを切り分ける。そしてお皿へ。
私達がおやつで食べる分以外は保存箱へ入れておく。
フェルトス様とガルラさんには晩酌のおつまみとして提供する予定だ。
「よし完成ー! パチパチパチ」
「いえーいぱちぱちぱち」
「お疲れさん」
焼いている途中、味見と称して切れ端をみんなでつまみつつ無事全てを焼き切った。
そろそろおやつにありつけるので気分はルンルンだ。
鼻歌なんかも歌いつつ、そのままの勢いで私とカイルが簡単に後片付け。その間にシドーにはテーブルの準備をしてもらう。
それも終わったら私とシドーは先にテーブルへ移動。カイルの配膳をそわそわしながら待つ。
「お待ちどー」
「わーい!」
「待ってましたー!」
目の前に置かれる焼き立てガレットと冷たいお水にテンションが上がる。食べすぎると晩御飯が食べられなくなってしまうので注意が必要だ。
食べる準備も完了し、カイルも席に着いたところでおててを合わせて、はいせーの。
「いただきまーす!」
三人で声を揃えて食前のあいさつをすませた私は、早速とばかりにフォークを手に持った。
「ふへへ」
オヤツを前に思わず頬が緩む。
焼けたチーズの香ばしい匂いが食欲をそそります。
私達が食べやすいようにと予め一口サイズに切り分けられたガレット。カイルの気遣いを感じながらそれを口へと運ぶ。
「あむっ――んんー、おいちー」
ホクホクしたじゃがいもの甘み、ハムとチーズの塩気が口の中でハーモニーを奏でており最高です。
熱々なので火傷だけには注意しつつ二口目。
次はケチャップを付けていただきましょう。ピザっぽくなって好きなんですよね。
「んー! んまいぞあるじ! おかわりしてもいいか?」
「にぇへへ、ありがと。良いけど食べすぎちゃダメだよ。晩御飯が食べられなくなるからね」
「はーい」
素直で良い子なお返事は大変助かります。
にこにこ食べ進めるシドーを親目線で見つめる。可愛いですね。
「なぁお嬢」
「う? どしたのカイル」
「これも悪くねぇんだけど、次作るときは俺の分もう少しチーズと胡椒多めで頼むわ」
「いいよー。カイルはチーズと胡椒多めね。覚えとく!」
「あんがとな」
「いーえー。にぇへへ」
チーズ多めも美味しいよね。わかります。チーズが焼けて香ばしくなってる部分とか特に好きです。
カイルからのリクエストを心のメモ帳へと書き記しながらおやつタイムは過ぎていく。
そして夜。
おやつを少し食べすぎてしまったのか、私は晩御飯が少ししか食べられなかった。
シドーに注意していたくせに自分がやらかしてしまうなんて……無念です。だって美味しかったんだもん!
フェルトス様とガルラさんの呆れつつのお叱りは甘んじて受けましょう。
もちろん反省はしています。だから今度はちゃんと食べる量をセーブしますとも!
これとは関係ないんですが、湖上の月城編の視点移動は大丈夫そうでしたか?問題なさそうなら次からも同じようなスタイルで書いていこうと思っていますのでご了承いただければ幸いです。
以下、読まなくてもいいお知らせ
次に書くことが決まらないので投稿あきます。ネタがあれば番外編は投稿するとは思いますが…。
毎度のことで本当に申し訳ありません、気長にお待ちください。




