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湖上の月城編8 とある月神の独り言

「……バレたか」


 今しがたクロノス様に視られた感覚があった。恐らくはフェルトスの娘を連れ去ったことが露見したのだろう。

 遅かれ早かれフェルトス(ヤツ)はここへやってくる。ならば早々に対策をしておくことに越した事はない。


 軽く指を鳴らし、我が領域にとりあえずのフェルトス対策を施した。

 せっかくヤツの娘をここまで連れてきたのだ。簡単に取り戻されても面白くないというもの。


「ふむ……そうだな。そうするか」

「またボスが独り言言ってるー」

「いつものことじゃん」

「きにしなーい」


 前方を歩く赤と青と黄色。それぞれ愛らしい髪色をした小さな子供達が呆れたように笑う。

 歩くたびに我と同じだが小さなラビビ耳がぴょこぴょこと動くさまがとても可愛く、知らず口元が緩むのを感じた。


「シュウ。テック。トーリ。次の仕事が決まったぞ」

「えー? またなのー?」


 赤い髪を揺らしながらこちらを見上げたシュウが不満そうに頬を膨らませる。


「ボスは人使いが荒いと思いまーす!」


 続いてテックが手を上げながら我へと主張をぶつけてきた。


「そうだそうだー」


 テックに続き同意と不満の声をもらすトーリ。


 我の声に三人は運んでいた檻から手を放し腰に手を当てる。

 そして非難の声と共にさらに我へと文句を言い始めた。


 そんな三人の姿を眺めつつ、我は思案顔で小さく呟く。


「あとで黄金にんじんをやろうと思っていたがやめ――」

「やったー! 黄金にんじん。アタシ黄金にんじん大好き!」

「何やってんだボス! 早く次の命令くれよ!」

「はやくはやくー!」


 不満を口にしていたわりに、褒美をチラつかせてやればすぐに手の平を返す。


 やはり子供は単純だ。


 少し扱い易すぎて心配にもなるが子供なのだから致し方なしと飲み込む。最低限の躾はできているのだから問題はない。


 我は改めて子供らへ新たな任務を与え、次に必要になる物資を持たせる。

 そして激励と共に意気揚々と去っていく背中を見送った。


「……さて」


 この場に残された檻へと視線を向ける。


「――――ッ!」

「……」


 中にいるのはフェルトスの娘とトラロトルの息子の二人。

 息子の方は何やら喚いているようだが、檻には防音を施してあるのでこちらまで声が届くことはない。


 反対に娘の方はなんとも大人しい。

 今の現状に恐怖を感じているのだろうか。下がった眉がなんともいえない悲壮感を漂わせているように見える。

 我が作った特別製の檻をじっと眺めたあと、娘は我に視線を向けた。


「……」


 フェルトスと同じ髪色と瞳の色をしているが、ヤツとは違い可愛らしさがある。

 やはり子供は可愛いものだ。


「さっさと運ぶとするか」


 時間が勿体ないと気付いた我は二人の子供から視線を逸らし、廊下の先を見据える。

 目指す部屋はもう少し先だ。

 我は三匹に代わり檻を運ぶべく持ち手にそっと手をかけた。

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