表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/187

湖上の月城編2 とある幼女の独り言1

 そろそろ外の世界も夏の訪れを感じるようになったとある日。

 私、メイは初めての経験に胸を躍らせていた。

 フェルトス様とガルラさんが長時間留守にするから、その間カイル達とお泊りパーティを開くのだ。


 これは前から聞かされていた『神様達の集まり』とやらがようやく開催されることになったから。


 天界へと出かけたフェルトス様、そして付き添いのガルラさんが帰ってくるのは早くて明日の朝。

 もしかしたら丸一日は冥界に帰ってこられないかもしれない。そう聞かされている。


 今回の話はずっと前から聞いていたし心構えはすでに出来ている。

 それに前と違って私にはカイルやシドーが一緒に居てくれる。だから寂しくはないのです。むふん。


 むしろ「あ、ようやく開催されるんですね。それ」という気持ちの方がはるかに強かったりして。


 だってフェルトス様から「近々集まりがある」という話を初めて聞いてから、もう半年くらいは経っていると思うんですよ。

 やっぱり神様というのはスケールというか時間感覚というか、それらが違いすぎますよね。ちょっと怖いです。


 私もいつかこんな感じにのんびりした時間間隔の持ち主になってしまうのだろうか。今はまだ想像できないけれど、長く生きているとそうなってしまうんだろうなぁ、きっと。


 ちなみに今回のお留守番。カイルとシドーだけでなく、約束通りステラもお留守番組に加えてもらえた。人数は多い方が良いですからね。


 さらに急遽ギルバルト君という参加者も増え、楽しいお泊り会を開催することと相成りました。


 なんでも今回の神様集会にはトラロトル様も参加されるらしく、その間ギルバルト君を預かってもらえないかと打診を受けた。

 もちろん即オッケーのお返事を返し、今に至ります。


 大人達が完全にいなくなった、いつもとは違う非日常。


 これにはさすがの私もワクワクを隠しきれない。だからいつもよりテンションが高くても仕方ない仕方ない。むふふ。


「ふへへぇ。ねぇギル君。美味しい?」

「ん。んまいぞメイ! 特にオムライスが最高だ!」

「えへへー。お口に合ってよかった。いっぱい食べてね」

「おぅ!」


 カイルの家のリビングにて。美味しそうにお子様ランチを頬張るギルバルト君をニコニコ眺めながら私も同じものを頬張る。


 今日のお昼はメイちゃん特製のお子様ランチ。

 内容はオムライスにエビフライ。ハンバーグにパスタ。デザートはちょっと豪華に飾りつけたプリン。


 そんな子供が大好きなメニューをワンプレートに乗せた夢の昼食となっております。


 オムライスのてっぺんには旗を立ててみた。

 手作りの旗でギルバルト君の旗にはトラロトル様のお顔を。私達冥界組の旗にはフェルトス様のお顔を描いてみた。


 サプライズを喜んでもらえるかと、私はドキドキしながらギルバルト君の様子を窺う。

 彼はまずお子様ランチを見て美味しそうだと顔を綻ばせてくれた。


 ここでまず一安心。安堵の息を吐いた。


 さらに旗に描かれたトラロトル様を発見した瞬間のギルバルト君の顔。それはもう嬉しそうにキラキラと目を輝かせていた。私は見逃しませんでしたよ。


 これには製作者の私もニッコリ大満足。しかも旗を持って帰っても良いかとまで聞いてくれた。

 これだけ喜んでくれたのなら製作者冥利に尽きるというものです。

 小さくて描きづらかったけれど、頑張って描いた甲斐がありましたね。むふふん。


「あるじ。おかわりしてもいいか?」

「あっ、俺様もハンバーグおかわりしたい」

「いいよー。ステラもおかわりいる?」


 もぐもぐと食べ続けるステラへ視線を向けると、小さく頷いて尻尾まで振ってくれる。

 お返事の仕方がかわいいです。


「わかった。持ってくるね」

「お嬢、俺が行くから食べてていいぞ」

「いいの? ごめんね、ありがとう」


 おかわりは各メニューごとに大皿で纏めてあるので、好きなものを好きなだけおかわりしてもらう方式だ。

 今は全部キッチンに纏めて置いてあるので、それを持ってきてくれるようカイルへとお願いした。


「おぅ。ギルバルト様、少しお待ちください。シドーもな」

「わかった」

「はーい」


 そうしてキッチンへ向かうカイルの背を見送る。


 カイルのご飯は私達とほぼ同じだけど量と味付けが少し違う。大人様プレート、とでも言っておきましょうか。

 最初は違うものをと考えていたんだけど、カイルが同じものでいいって言ってくれたからこうなりました。


「そうだギル君。食べ終わったらまったりしつつお昼寝って感じでいーい?」

「ん、いいぞ。なら外で遊ぶのは昼寝が終わってからだな」

「今日はお泊りだから遅くまで一緒に遊べるね! ふへへ、楽しみ!」

「へへ、そうだな!」


 歯を見せて元気よく笑うギルバルト君に私の笑顔も深まる。


 いつも夕方には帰ってしまうギルバルト君だけど、今日はお泊り会。しかも大人達はお仕事で不在。

 さらに、お泊り会は神域内のカイルのお家が会場。


 つまり、だ。遅くまで騒いでも怒られないのです! もうこれはパーティをするしかないじゃないですか!


 もちろん保護者枠としてステラとカイルがいるけれど気にしない。

 今回は二人ともパーティの参加者! 今日は夜中まで騒ぐんだぜい! ふぅー!


 ちなみに何故お泊り会の会場が冥界のお家ではなく神域にあるカイルのお家なのかというと理由は簡単。ギルバルト君が暗い所は苦手らしいから。なんでも暗いと物が見えづらくなるんだそう。


 彼と初めて会ったときに、冥界の中へご招待したことがあったけどあの時は言い出せなかったらしい。

 あと普通に楽しかったから言い出すタイミングがなかったとも言っていましたね。


 今回は前回と違い長い時間のお留守番ということもあって、冥界の外にあるカイルの家が会場として選ばれたというわけです。


「あるじ、ギルバルト様。今日は何して遊ぶんだ?」

「んー。俺様はなんでもいいぞ。メイは何かしたいことあるか?」

「う? うーん……じゃあ、たまにはかくれんぼなんてどうかな?」


 かけっこや鬼ごっこ。魔法の球での的当て。ボードを使ったレースゲーム。などなど、いつもの遊びが頭を駆け巡ったけど最終的に出した答えがかくれんぼ。たまには静かに遊ぶのも悪くないよね。


 それにお昼に体力を使い果たしちゃったら、せっかくのお泊まりパーティなのにすぐ眠くなってしまう可能性だってある。


 遅くまでおしゃべりしたりカードゲームしたりと遊びたいからなるべく体力は温存しておかなくてはいけません。それには今からちゃんと計画を立てて遊ばなくては。


 ふふん。私はなんて策略家なのでしょう。自分の才能が怖いですね……なんちゃって。てへっ。


「かくれんぼか。じゃあ誰が最後まで見つからないか勝負しようぜ!」

「望むところだ。絶対おれが勝つもんね!」

「わたしだって負けないもんねー」


 午後からの予定を話しながら子供同士わちゃわちゃ騒ぐ。


 キッチンから戻ってきたカイルがそんな私達を優しい顔で見つめていたのをバッチリ見てしまったのは内緒。

 ちょっと恥ずかしくなった私だけど、最後まで笑顔と勢いで乗り切りましたよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ