番外編 ごっこ遊び
期限を過ぎたので相談内容は取り下げさせていただいてます。お目汚し失礼しました。
「ようこそ冥界カフェへ。ご注文はお決まりでしゅか!」
新調したソファに座るフェルトス様とガルラさん。そして鍛冶神デュロイケンフィーストス様。もといロイじーちゃ達に向かって私はノリノリで注文を聞く。
手にはエアメモ帳とエアペン。エアなので、いわゆる持っているフリってやつですけど。
ソファに座る三人みんなニッコニコで――フェルトス様だけは微笑み程度だけど――私を見ています。
ロイじーちゃに頼んで新しくしたコの字型ソファ。
体の大きなこの三人が並んで座っても、まだ余裕がある大きさに仕上がっております。
「えーっと。ここのお店には何があるんですか?」
「ふふん。なんでもございますよ。ないものはあんまりないでしゅ!」
「あるにはあるんだ。くくく」
胸を張って答えた私を見て楽しそうに笑うガルラさん。
「ふむ。ならば、とりあえずオレはトマトジュースを貰おうか」
「あーい。トマトジュースがお一つですね。残りのお客様は何にいたしましょー」
「んー。そんじゃオレもトマトジュースをくださいな」
「トマトジュースがもう一つ。そちらのお客様はどうしますか?」
メモメモ。と手元のエアメモ帳に記入するフリをしつつ、今度はロイじーちゃに視線を向ける。
「ふふふ。主は何を着てても愛いのぉ。似合っておるぞ」
「ふぇ? へへへ。しょうでしゅか? 照れましゅー!」
私が今着ているのはメイド服。それを見て褒めてくださいました。照れる。
「ふふ。それではワシは清酒を頂こうかの?」
「あーい!」
照れつつも手元のエアメモ帳に記入するフリをしていたら、ガルラさんが驚いたようにこちらを見た。
「え、酒アリなの?」
「アリでしゅね」
「まじか。じゃあ次は酒頼もっと」
「変更しましゅか?」
「うんにゃ。飯んときでいいや。とりあえずそのままで」
「はーい! ではご注文繰り返させていただきますね。トマトジュースがお二つに、清酒がお一つ。以上でお間違えなかったでしょーか?」
最終確認をすれば、三人からそれぞれ是の返事が返ってくる。
「かしこまりました! では少々お待ちくださーい!」
そう言ってルンルン気分で私はキッチンへと向かった。
私達が何をしているのかといえばただのごっこ遊びだ。カフェごっことでもいいましょうか。
そして何故そのような事をしているかといえば、答えは簡単。メイド服を手に入れてしまったからである!
まぁ、なんでそんな服を持っているのかと聞かれたら、セシリア様から頂いたから。としか……。
この間。私の冥界姫としての正装衣装を作ってもらった時に、衣装作りを担当してくださったジェーンさんが滾った勢いでメイド服も作ったらしい。
ちなみにこのメイド衣装。私用に可愛くデザインされたもので、私が知っている感じの正式なメイド服というわけではない。いわゆるなんちゃってメイド服といった感じですね。
フリルマシマシで大きなリボンなんかもついてます。
かわいいは正義。とはジェーンさん談。
とはいえ、それだけが理由でもないんですが。
本来はロイじーちゃへのお礼を兼ねた、ただのお食事会の予定だったんですよ。
冥界にある我が家のキッチン、ソファやテーブルなんかの一式をロイじーちゃに頼んで新しく作ってもらったので。
それで、そのお礼にご飯をご馳走する約束をしていたんです。
ですが。突然ガルラさんが思いついたように、しまっていたメイド服を取り出してきてこう言ったのです。「せっかくだからメイド服着てみないか」と。
というのが、メイド服を着ることになった経緯ですね。
ちなみにごっこ遊び形式にしたのは私。だってせっかくメイド服着るならそっちの方が楽しそうだったから。
実際かわいい服を着られてテンションも上がってますし、楽しいです。
「カイ子ちゃーん。オーダー入りまーっす。トマトジュースが二つ。清酒が一つでーす」
キッチン内に待機しているカイルへオーダーを飛ばす。
「はーい」
それを聞いたカイルがいつもより少し高くした声で答える。
今のカイルは私とお揃いでメイド服――形は違うけど――を着用している。
カイルのメイド服は私のとは違ってシンプル。スカートが長い露出ゼロタイプのやつですね。
肩幅とか、どうしても男性性が出るようなところは上手く隠す工夫がされたメイド服となっております。そしてもちろんこちらもジェーンさん作。
私が冗談で「カイルもお揃いでメイド服着よー」って言ったら少し悩んで「良いぜ」となり、私が「え?」ってなってる間にガルラさんとカイルの間でお話が進んでました。
カイルの為に作られてるから当然といえば当然なんだけど。びっくりするほどメイド服がお似合いですよカイルさん。黙って立っていたら背の高い綺麗なメイドお姉さんにしか見えません。仕上がりが凄すぎる……。
私のごっこ遊びに付き合ってくれるのは嬉しいんだけど、本当にカイルはこれで良いんだろうか。自分で吹っ掛けておいてなんですが、少し心配になります。
カイルは執事服持ってるから、そっちでも良かった気がするけど可愛いから良しとしておきましょう。
「あるじ! それおれ――じゃなかった。わたしが持ってく!」
「大丈夫? こぼしちゃダメだよ」
「おう!」
そして私達がお揃いでメイド服を着るということになった時、仲間外れが嫌だったシドーもメイド服を着ると言い出しまして。
今ここには三人のメイドさんが存在していることになります。
ジェーンさんもノリノリで二人のメイド服を仕上げてくださったし、セシリア様は小物で可愛さアップな飾りつけもしてくださったしで。女性二人組のパワーはすさまじかった。
「準備できましたよシド子ちゃん。持って行ってくださる?」
「まかせろー」
広くなったキッチン内。大人サイズで作られたから作業しやすくなった場所にて、手際よくトマトジュースと清酒とおつまみ類を用意したカイル。
にこりと微笑みながらそれらをシドーに渡し、シドーが意気揚々と運んでいく。
ちなみにキッチンはなんちゃってアイランド型となっております。作業スペースが確保できたのと、複数人でも楽々作業が出来るのが気に入ってます。
あとはカウンターみたいになっていて、こっちでもご飯が食べられるようになっている。
やっぱりちゃんとしたキッチンは使いやすくていいですねぇ。むふふん。
以前にもまして生活空間がグッと良くなりましたよ。
使いやすくてとっても満足です。
「おじょ――メイちゃん。みなさまのお食事はまだ出さなくてもいいのかしら?」
「うん。まだ大丈夫!」
「わかったわ」
今回出す予定の料理はもう作ってあるので、保存箱から出すだけ。当日バタバタせずに済むし、楽なんですよね。
もちろん予定外のモノが急に食べたくなったとかになれば、当日作るのも吝かではありませんけど。
「あるじ。出してきたぞ!」
「ありがとシド子ちゃん」
「おう!」
ちらりと大人達を見れば、和やかに談笑しながらおつまみをつまんでいる。
うんうん。上出来じゃないでしょうか。
その後。二杯目のおかわりでお酒類を出し、本来の食事タイムへ。
もちろん私達もご一緒させてもらい賑やかに過ごしました。
余談ですが。お揃いでメイド服を着たのだし、せっかくだからノランさんに見せに行こう。とカイルに提案したところ全力で拒否されましたとさ。
次回は未定です。
号泣?リアクションにてお返事を返してくださった13名様本当にありがとうございます。さらにはコメントまでくださったお二人にも深い感謝を申し上げます。
おかげさまでこれからは無駄に悩まずに安心して創作できそうです!




