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番外編 ある日のカイル

ブックマークがじわじわ増えててびっくりしてます。

すぐ減っちゃうかもしれませんが、いつの間にかブクマ260件突破してて嬉しいです感謝します!

満点評価応援も増えててすごく嬉しいです。励みになります!

 ある日の夕方。俺はお嬢に断りを入れてから、セラフィトの町へと繰り出した。

 目的はノランのおっさんと酒を飲むため。そしてもう一つが――。


「これ、一つ頂けますか?」

「毎度アリィ……ってカイル様じゃないすか! え、もしかして俺怒られたりします?」

「いえ。良く出来ているので買っていこうと思っただけです」

「まじすか? いやぁカイル様に褒めていただけるなんて光栄っす! ありざす!」

「……ちなみに、他の種類があったりは?」

「すんません。今はまだそれだけっす……」

「そうですか。出来が良いだけに残念です」

「え? まじすか? いやぁ照れます」


 新作が出たらまた買いに来るとの旨を伝え、俺は青年に代金を払い目的のモノを入手した。


「……っし。売り切れてなくてよかった」


 毛糸で作られた手のひらサイズのお嬢ぬいぐるみ。

 それを落とさないよう大事にカバンの中へ片付けながら、小さく拳を握る。


 昼間にこの店の前を通った時に見かけて欲しいと思ったが、お嬢が一緒にいたから買えなかったんだ。

 お嬢の目の前でお嬢グッズを買うとお嬢が恥ずかしがるので、いないところでこっそり買うしかないのだ。


「ふふっ。良い買い物をした」


 この町には冥界関連グッズ――大抵は無許可だが、お嬢達からは黙認されている――が沢山ある。特にお嬢やフェルトス様をモデルにしたものが人気だな。

 最近では俺やシドーのグッズなんかも出てきているらしいが、正直そこはどうでもいい。


 とにかく。お嬢はかわいいし、慕われてるのもあって、お嬢のグッズは色々出ている。

 大事なのはそこだ。色々ある故に当たり外れなんかももちろんあるが、当たりのグッズは売り切れるのが早い。


 今回のぬいぐるみ(これ)も一目見ただけでかなり出来が良いとわかった。

 だから売り切れてやしないかと、ずっとひやひやしていたものだ。

 幸運にもラスト一個だったそれを手に入れられた俺は、ホクホク顔でノランのおっさんの家へと向かった。


「……なぁカイル。お前さんなんか良いことあった?」


 おっさんの家で飲み始めてしばらく。突然おっさんが俺の顔をじっと見ながらそんなことを言ってきた。


「ふっ。わかるか?」

「いやさすがにわかるわ。ずっと機嫌良さそうにしてるからな」

「ふふふ……何があったか聞いてくれ」

「うーわ、めんどくさ。別にいいけど……で、何があったのさ」

「よくぞ聞いてくれた」

「お前さんが聞けっつったんだろう。え、もしかしてもう酔ってる? 早くね?」


 おっさんが何かを言っているがそれらを全て無視して、俺はカバンからお嬢ぬいぐるみを取り出し見せつける。


「見ろよこれ。すげぇ出来がいいだろう?」

「へぇー。よくできてる。メイ殿のぬいぐるみか」

「おうよ。たまたま見つけてな。ラスト一個を手に入れた! どうだ、羨ましいだろう?」

「そだなー。すげーうらやましーわ」

「そうだろう! やらねぇけどな!」

「そっかー。そりゃ残念だなー。水飲む?」

「大丈夫だ」


 水の入ったコップを差し出されたが、そっと押し返す。俺はまだ酔っていない。


「つか。お前さんメイ殿大好きだな? いや、俺も人の事言えないけどさ」

「当たり前だろ?」


 何言ってんだこいつ。とでも言いたげにおっさんを見る。お嬢は俺の友人兼ご主人様だ。嫌いなはずがない。大好きだ。


 なのにおっさんはそんな俺の視線を無視して笑っている。何がおかしい。


「……んで笑うんだよ」

「いやぁ悪い悪い。約一年前のお前さんとは別人だなぁと思ってさ」

「ぐっ!」


 痛い所を突かれて胸を押さえる。

 たしかに違うが、別にいいだろう人は変われるんだ!


「ところで。そのぬいぐるみってどうするんだ?」

「は? どうするって……そりゃ飾るが?」

「メイ殿に見つからないのか?」

「自室があるから大丈夫だ。あそこならお嬢も滅多に入ってこないからな」


 コツコツ集めたお嬢やフェルトス様グッズが飾られた自室の棚を思い浮かべる。

 お嬢は気を遣って俺の自室には入らないようにしてくれているから、バレる心配はないだろう。

 それに、いざとなれば簡単に隠せるようにもしてあるから大丈夫なはず。


「へー。ははっ」

「……んだよ?」


 さっきから人の顔を見てニヤニヤと。おっさんこそ酔ってるんじゃねぇのか?


「いやなに。お前さんが楽しそうで良かったなと思っただけさ」

「…………そうかよ」


 からかっているのではなく、本心から言ってそうなのがやりにくい。

 このおっさんには一生勝てない気がするのは気のせいか?


「……うし、自慢は終わりだ! 飲むぞ!」

「大丈夫か?」

「ったりめぇだろ。特別にお嬢の酒も分けてやる。ありがたく飲め!」

「まじかよ! よっ! さすがカイル様、太っ腹!」 


 気恥ずかしくなった俺は誤魔化すようにカバンから酒瓶を取り出す。

 そうすればノランのおっさんからも過去を懐かしんでいた変な空気は消えた。

 なのでその空気に乗りつつ、俺達は他愛もない話をしながら酒を酌み交わした。


 そして日付が変わる少し前に俺は町を出る。

 すでに門は閉まっているので、ボードに乗って空からの帰宅だ。良い感じに酔っているのも相まって、いつもなら恐怖がある空も多少なら平気だ。


 さて。明日も早い。帰ったらさっさと風呂に入って寝るとしよう。

 その前にお嬢ぬいぐるみを飾るのを忘れないようにしなければ。


 お嬢の眷属になったことで夜目が効くようになった俺は、暗い夜道を軽やかに進んだ。

新章の経過報告です。

現在通しで最後まで書けました。ですがまだ推敲作業が残っておりますので今しばらくお待ちくださいませ。

今月中か、遅くても来月の頭までには投稿を開始したいと思っています。その時はよろしくお願いします。

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