番外編 魅惑のほっぺ
息抜きに思いついたまま書いてしまいました…。
凄く短い小話的なものですが、楽しんでいただけたら幸いです。
とある日の昼下がり。
お家でまったり過ごしていたときの事。
ふと、顔を上げたらベッドの上で横になっているフェルトス様がこっちをじっと見つめていた。
「…………」
「フェル様?」
何か用でもあるのかと呼びかけるも、何も反応はなく無言で返される。
「どちたの?」
「……………………」
「んー?」
「…………………………」
もしかしたら私の後ろに何かあるのかと思って振り返るも、特に何かがあるわけでもない。
強いて言えば私の声に反応したガルラさんがこっちを見ていたくらい。
首を傾げつつその場から動いてみれば、フェルトス様の視線は私を追ってきた。
うん、やっぱり私を見ているのは間違いないですねこれ。
でも私のどこを見ているのかがわからない。
たぶん顔のあたりだとは思うんだけど、目も合わないしわからないや。
「なんですか?」
「………………」
話しかけてもやっぱり何も答えてくれないフェルトス様。
その代わり、ちょいちょいと手招きをされた。
やっぱり何か用事があるのかと思い、私はフェルトス様が待つベッドへと登る。
「なぁにフェル様ー?」
「…………」
起き上がらず横になったままのフェルトス様の顔を覗き込むように見下ろす。
するとフェルトス様の視線がどこに向かっているのかなんとなくわかった。
うん。これは口元あたりですね。もしかして食べかすでもついているのでしょうか?
確かめるようにむにむにと口元を拭ってみる。でも何もついていない。
「んー?」
どうやら違ったみたいだ。
だとしたら本当になんでじっと見られているのか? そして何故私はここに呼ばれたのか?
そんなことを考えつつ首を傾げていたら、フェルトス様の手がすっと頭に伸びてきた。
もしかして撫でてもらえるのか! と思い期待して頭を差し出すも、望んだ感触はなく、フェルトス様の手はそのまま私の後頭部へと伸びていった。
「むぇ? フェルしゃま?」
そして気が付けば私とフェルトス様の距離はゼロになり、何故かフェルトス様にほっぺをはむはむされていた。
何を言っているのかわからないと思いますが、私にもわかりません。
後頭部に添えられた手に力が入ったかと思えばグイッと引き寄せられ、そのままの流れでフェルトス様にあむっとほっぺを食べられていたんです。……なぜ?
「ぁえー?」
「ふむ……当たり前だが喰えるわけではないな」
「え? えぇー……」
少しだけはむはむした後、私のほっぺを解放したフェルトス様はそう言った。
なんで食べられると思ったのか甚だ疑問なのですが……。
あとガルラさん。隠してるつもりっぽいですが、普通に笑い声漏れてますよ。笑わないでください。まったく。
「むー……」
「そうむくれるな。貴様の頬があまりにも丸く、美味そうに見えたから試しに喰ってみただけだ」
お試しで食べられる私の頬とはいったい……。
まぁ子供のほっぺがぷくぷくしてるのは否定しませんけど?
でもだからって本当に口に含まなくてもいいと思いますが?
それとガルラさん。ボソッと「わかる」って言ったの聞こえましたからね。食べないでくださいね。
というか、そんなことを考えてたってことはもしかして――。
「フェル様……お腹空いてます?」
「ん? そう言われてみれば……少し?」
「それじゃあ何かオヤツでも食べますか?」
時間的には三時のオヤツの時間だし丁度良いですね。
「ふむ……ならば何か甘い物が喰いたい」
「いいですよー。ガーラさんも甘い物食べるぅ?」
「食うー!」
「はーい!」
元気にお返事をしてくれたガルラさんに私も笑顔で返す。
カイルとシドーは鍛錬中だから今ここにはいないけど、声をかけたらきっと食べにくるだろう。
よし。そうと決まればさっそくオヤツ作りですね。
そう考えた私はベッドから降りてキッチンへ向かう。
さて、何を作ろうかな。プリンがいいかな? どうせなら豪華にプリンアラモード?
あ、でもその前に――。
「フェル様、トマトジュースどーぞ!」
「ム? まぁ、貰っておく」
「にしし」
とりあえず何よりも先にフェルトス様にはトマトジュースを差し出しておく。
少しでもお腹を満たしておけば、もう私のほっぺを齧ろうなんて変な事考えないでしょうからね!
まったく……困ったパパですこと!
前回のお話に沢山のリアクションありがとうございました。
いいね以外のリアクションも新鮮でとても嬉しかったです。構っていただいた皆様本当に感謝申し上げます!




