番外編 ギルバルト君とシドー
活動報告にも書いてましたが、前話番外編を投稿後に新しくレビューをいただけました!
二度はいただけない奇跡だと思ってたので、二度目があり飛び上がるくらいに嬉しかったです。本当にありがとうございました!
「ギルバルト君。この子が私の使い魔になってくれたシドーだよ。シドー。この人はギルバルト君。わたしのお友達」
久しぶりに遊びに来てくれたギルバルト君に、新しく私の使い魔になったシドーを紹介する。
カイルのときと違い、ギルバルト君にはあらかじめ私に使い魔ができることを言っておいた。
だから以前と同様シドーがここの生活に慣れるまでは、またしばらく遊べなくなる。ごめんね。と、そう連絡をしておいたのです。
でも存外シドーの馴染みが早くて、カイル程の期間はあかなかったけどね。
「闇の精霊か。メイらしいといえばメイらしい、のか? ……まぁいい。俺様はギルバルトだ。カイルと一緒にお前も俺様の子分にしてやるから光栄に思え!」
ギルバルト君はしげしげとシドーを眺めたあと、ふふんと胸を張って元気よくシドーを子分にすると言い出した。
私のときといい、カイルのときといい、君は本当に子分を増やすのが好きですね。会った人みんな子分にする勢いなんでしょうか?
「おれはシドーだ。よろしくなギルバルト様。ちなみに子分にはならない」
「むっ」
「おれ、基本的にあるじの命令しか聞きたくねぇもん」
「むー……それなら仕方ない。お前を子分にするのは諦めてやる。その代わり、しっかり務めを果たせよ」
「おぅ!」
こんな感じでギルバルト君とシドーの顔合わせも無事に終わった。
二人のやりとりにちょっとハラハラしちゃったけど、揉めることもなく終わってホッとしてます。
「紹介も終わったところで、ギル君」
「ん? なんだメイ」
「なんかちょっとおっきくなった?」
ギルバルト君の隣に並び己の身長と比較する。
うん……やっぱり伸びてる気がする。
「ふふん、気付いたか? 俺様だっていつまでも子供じゃないからなぁ! それに、鍛えてるから筋肉だってついてきたし、男らしくなってきただろ?」
そう言ってギルバルト君は半袖シャツの袖をまくり、むんっと力こぶを見せてくれた。
笑顔が素敵です。やっぱり無邪気な子供はかわいいですね。私もつられて笑顔になるというもの。
「なんなら触ってもいいぞ」
「え、ほんと? じゃあ遠慮なく…………おぉー」
たしかに鍛えていると言っただけあって、以前より筋肉がついている気がする。さすがだ。
それに、よく考えればギルバルト君と出会ってもう余裕で一年は経ってる。
人間の子供と同じように考えちゃいけないかもだけど、当然背だって少しくらい伸びるのが普通なのか。そして体つきも変わる、と。
伸びてない、変わらないのは私だけ……うっ。ちょっとだけ悲しくなってきた。大丈夫大丈夫。これからこれから。むしろ伸びしろしかないんだから。平気平気。ははっ……ぐすん。
「どうだ?」
「う?」
「俺様、かっこいいと思うか?」
ギルバルト君の腕と自分の腕の違いを確かめ悲しみにくれる中。問われた質問内容に首を傾げる。
「ギル君は初めて会ったときからかっこいいよ?」
「そっ! うか?」
「うん!」
びっくりした顔と少しだけ裏返っちゃった声がなんだか可愛らしくて笑みがこぼれた。
ギルバルト君をかっこいいと思うのも事実だけど、かわいいと思う方が割合としては大きい気がするけどね。でもこれは秘密。本人はかわいさよりかっこよさを求めているだろうから。
「……そっか。かっこいいか。…………へへへ」
「もちろん、今もかっこいいよ!」
「……ぉぅ。あんがと……」
私の言葉に照れたように視線を逸らすギルバルト君。
うんうん、やっぱり素直でかわいいですね。
ギルバルト君はいつの頃からか体を鍛え始めた。
私の推理ではきっとお父さんの肉体に憧れたんでしょう。わかるよ、トラロトル様は大きくてかっこいいもんね。
ギルバルト君はお父さんに似てるから、このままいけばきっといつの日かトラロトル様並みにいい男になるでしょう。
でもそうなると女の子にもモテちゃうだろうから、そのうち彼女ができて、私とは遊んでくれなくなっちゃう可能性もあるのかぁ。
そうなったらちょっとだけ寂しいけど、お友達としてはちゃんと祝福してあげないとな。まだ先の話だろうけど。心の準備は大事ですからね。
「なぁなぁ、あるじ」
「う? どしたのシドー?」
「おれは? おれは? かっこいい?」
すると、突然シドーがギルバルト君に張り合うように、彼の隣でむんっとポーズを決めた。
「ふへへ、もちろんかっこいいよー」
その姿にむしろかわいいと言いたいところですが、ぐっと我慢して私はシドーに笑顔で答える。
「ふふふん!」
「むっ」
そうしたら何故かシドーがギルバルト君へ勝ち誇ったような笑みを向けました。本当になんで?
ギルバルト君もその行動の意味が分からないのか、気分を害したようにむっとした顔になっている。
「えっと、喧嘩はだめだよ?」
ちょっとよろしくない雰囲気が漂い始めた気がして、そっと釘を刺しておく。
すると二人はしばらく無言で睨み合った後、ぷいっと同時に顔を背けた。
息ぴったりじゃないですか。もしかして実はすでに仲良しになっているのだろうか。
何はともあれ喧嘩にならなくて一安心です。
「ははっ。お嬢は人気者だなぁ」
「う?」
「なーんでもねぇ」
ずっと背後で保護者よろしく黙って私達の様子を見ていてくれたカイル。
そのカイルがギルバルト君とシドーを見ながら笑って告げた内容がちょっとよくわかんないけど、まぁいいでしょう。
その後みんなで遊んでいたときも、ギルバルト君とシドーの二人は競うように勝敗を決めていました。
だからか知りませんが、夕方になりギルバルト君が帰る頃には二人の間になんだか友情みたいなものまで芽生えているように見えたよ。
わりかし歳の近い同性かつ、どっちも体を動かすのが好きだから余計に気が合ったのかもしれませんね。うん。
途中にあった少しばかり険悪な雰囲気もすっかり消え去り和気藹々と終われたのはよかったです。
これからもみんなで仲良く遊びましょうね!
毎度のことながら新章の執筆が難航しています。不甲斐ない作者で申し訳ありません。
気長にお待ちいただけると幸いです…。




