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番外編 プレゼント再び

「うーん」

「どしたお嬢?」

「あ、カイル。あのねー、シドーに何かプレゼントしようと思ったんだけど、何がいいかなぁって迷ってるの」

「へぇ、プレゼント」

「うん。ほら、カイルには眷属記念でリボンあげたでしょ。だからシドーにも何かあげようと思ってるんだぁ」

「そりゃいいな!」

「うーん。なにがいいかなぁ……」


 朝の日課を終わらせたあと、鍛錬に行くと言ってシドーはケロちゃんズと一緒に出て行った。なので今はカイルの家でカイルと二人きり。

 本人がいないのでプレゼントの話も心置きなくできるというもの。


「カイルのリボンみたいにお守り効果も付けたいから、できれば身に着けられるものがいいんだけど……」

「あいつ服どころか、何も身に着けてないしな」

「しょーなんだよねぇー! むー……アクセサリーくらいならつけてくれるかにゃぁ?」


 持ってないから着ない。つけない。とかなら良いんだけど、町に行っても欲しがったりもしない。

 シドーと初めて神域の外に出るってなったときに、外はまだ冬だし寒いからと服とか防寒具とか勧めたこともある。

 でも「おれは強いから平気だ!」って言って結局なにも着なかった。そして実際寒がったりもしなかった。本当に強い子だった。


 もしかしたらそういうのに興味ないだけって可能性もあるんだけど、何かつけたりするのが嫌いって可能性も無きにしも非ずだしで……悩ましい。

 一番手っ取り早いのは本人に聞くことだけど……なんで、と理由を聞かれそうでなんとなく尻込みもする。

 こんなことなら早めにこういうことも聞いておけばよかった。後悔先に立たず、ってやつですかね?


「てか、あいつならお嬢がくれるもんだったら、それが何であれ喜んで身に着けると思うぜ」

「ほんとにぃ?」

「おぅ!」

「んー。にゃら…………うん。よち決めた! せっかくだからカイルとお揃いのリボンにする!」


 自信満々なカイルの返答と笑顔に後押しされた私は、シドーへのプレゼントを決めた。

 そうと決まれば善は急げ。午後からはお買い物に出発だ!



「むふふふふ。リボンも買えたし、ノランさんのところで細工もできた。あとは渡すだけだねぇ」


 お昼寝後。さっそく町へと繰り出した私とカイルは、前回カイルのリボンを買ったお店で赤色のリボンを買った。

 統一感を出すためにカイルのリボンの色と同じ色にしたけど、シドーの方には紫の差し色が入っている。

 これでどっちがどっちのリボンかわからなくなる。なんてこともないだろうから安心ですね。


「んじゃま、用事もすんだしさっさと帰るか。シドーのやつが追いかけてくるかもしれねぇしな」

「あ、あはははは。さすがにお留守番くらい……できる、はず……。だけど、なんか心配になってきたから急ごっか……」


 カイルのときと同様に今回もサプライズプレゼントにしたかった私は、ついてこようとするシドーにお留守番を頼んだ。

 しかし、予想通りというかなんというか、普通にごねられちゃいました。

 カイルは行くのになんで自分だけ留守番なんだとか、護衛として連れて行ってくれとかなんとか。

 カイルの場合は大人だったのでゴリ押しで納得してもらったけど、やっぱりまだ子供のシドーにはそれが通用しなくて、説得に時間がかかっちゃった。


 どうやら自分から離れるのはいいけど、置いていかれるのは嫌らしい。

 さらに、私の影の中で大人しくしておくから連れてってとも提案された。


 でもそれだと私の行動がシドーにバレちゃうんだよね。

 まだまだ未熟な主なので、なんとなくとはいえシドーと感覚を共有しちゃうし、影の中からでもシドーは私が何してるか見えちゃう。

 完全にシャットアウトできない以上、そもそも連れてきたらサプライズにならないのです。


 なのでお留守番の練習ということにして、お留守番をしてもらいました。

 実際、シドーには使い魔として私と離れて行動してもらうときが来る可能性もあるし、私と離れる良い練習にもなる。あながち悪い事でもない。と言って説得しました。


 それでも、そうとう不貞腐れてたけど。

 だからカイルの「追いかけてきそう」という言葉を否定しきれないのが悲しい所です。


 まぁ、あの子はなんだかんだ寂しがり屋さんだし、甘えん坊だからねぇ。

 早く帰ってあげて、ちゃんとお留守番できたねって褒めてあげないといけない。


 そんなことを考えながら私は絨毯を準備し、ノランさん率いる門番さん達にお礼を言ってからまだ寒さの残る町から引き上げた。

 ちなみに冬場の移動ではカイルのコートに身を滑り込ませると、冷たい風をやり過ごせるし暖かい。というライフハックを発見したので、最近は移動中にカイルのコートに潜り込んでいる。


 そんなこんなで神域まで帰還した私達は、急いでシドーの待つカイルの家まで絨毯を飛ばす。

 すると、畑の近くにあるパラソルの下にシドーの姿を発見した。どうやら私達を待っていたようだ。

 パラソルから出てきたシドーがこっちに向かってブンブンと手を振っている。私も大きく手を振り返し、シドーのそばへそっと着陸した。


「おかえりあるじー!」

「ただいまシドー。いい子にしてた?」

「してたぞ! 褒めてくれ!」

「さっすがシドー! いい子いい子! えらい!」

「むふふふふふふ」


 抱き着いてきたシドーの頭をわしゃわしゃ撫でてあげれば、それはそれは嬉しそうにしている。

 ぶんぶん尻尾を振って喜んでいる犬みたいに見える気がするのは気のせいだろうか。


「さて、いい子にお留守番しててくれたシドーには、良い物があります!」

「まじか! やったぜ!」


 なになに? と急かすシドーを落ち着かせ、ひとまずカイルの家に移動する。

 絨毯はすでにカイルが片付けてくれていたのでお礼を言っておいた。


 家に入りリビングのソファに座ると、すぐに隣に来たわくわく顔のシドーに私まで楽しい気分になってくる。


「なぁなぁ、あるじ。良いモノってなんだ?」

「むふふ……じゃーん! これです!」


 カバンに入れておいたプレゼント袋を高々と掲げてからシドーへと渡す。

 掲げる意味はないけど、なんとなくの行動ですね。


「おぉー! ……って、なんだこれ?」

「開けてみて」

「ん」


 慎重に、包みを破かないように、気遣いながら封を開けていくシドー。

 大きな手だから小さな包みにちょっと苦戦してるみたいだけど、それでも破いたりせずに時間をかけて開けていった。


 それにしても、シドーの意外な一面を見てちょっとびっくり。

 失礼ながらこういうのってビリビリ破って開けそうなイメージだったからさ。ごめんねシドー。


 そんな内心の驚きを隠しつつ、シドーの作業をにこにこと見守る私とカイル。

 そしてようやく綺麗に包みを開けられたシドーは中身を取り出し、まじまじと見つめている。


「…………リボン?」


 長い沈黙の末、こてん、と首を傾げたシドーの姿はちょっとかわいい。


「ちょっと貸してね」


 なぜリボン? と疑問符を浮かべるシドーの手からリボンをもらい、左手首に結んであげた。

 ちょっと歪んじゃったから、綺麗な蝶々結びには出来なかったけど、こんなもんでしょ。気に入らなかったらカイルに頼んで結び直してもらおう。


「これはね、シドーがわたしの使い魔になってくれた記念のプレゼントだよ。受け取ってくれると嬉しいな」

「――ッ! もちろん貰うぞ。ありがとなあるじ!」

「喜んでもらえてわたしも嬉しい。あ、あとね。それはいざってときにシドーを守ってくれるお守りにもなってるから、できるだけ身に付けてくれると、もっと嬉しいな」

「あー。なんかあるじの匂いがすると思ったら、そういうことか。……うん、わかったあるじ。おれ、これ大事にする!」


 くんくんとリボンの匂いを嗅いだシドーは、疑問が解消されたのかにっこり笑ってくれた。

 いつものシドーなんだけど、リボンをつけただけでぐっとかわいさがアップした気がする。


 その後一通りリボンを愛でていたシドーは、次にカイルへとリボンを見せびらかしに行った。


「見ろカイル! あるじからリボンのお守り貰ったぞ! いいだろ!」

「良かったな。ちなみに俺も貰ったことあるぞ。ほらコレ。お揃いだな」

「む? それってやっぱりそうだったのか、お揃いだな!」


 と二人して笑ってました。

 なにこの平和な空間……顔が緩むなぁ。


 ちなみにこの後、シドーはお風呂のときもずっとリボンをつけっぱなしにして過ごそうとしていたので、それだけは辞めさせました。


 ちゃんと外して、汚れたら洗濯しようね。あるじとの約束だよ。

いつの間にかブクマ200越え…ありがとうございます。

しかも総合評価も、あとちょっとで目標にしていた1000ポイントに手が届きそうというところまで来ていました。

これもひとえに読んでくださっている皆様のおかげです。筆も遅く不甲斐ない筆者にお付き合いくださり感謝申し上げます。

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