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1 異世界はトマトジュースとともに

思いついたものを思いついたままに書いていきます。


2025/6/1追記

あまりに酷い文章なので、ゆっくりとですが1話から53話までの改稿作業を頭から始めます。

改稿作業が終わるまでは途中で文章や内容などが少しだけ変わると思います。気が付いても暖かい目で見ていただけると嬉しいです。

「いっ、ちゃぁぁぁ……。にゃに? にゃにがおきちゃの?」


 謎の落下を体験した。

 その際、したたかに打ちつけたお尻をさすりながら反射的に閉じていた目を開ける。


「は……へ?」


 周囲をキョロキョロと見回してみれば、そこは知らない場所だった。

 目の前にあるものは広い荒野的な場所。さらにはまばらに木、木、木。申し訳程度に草が生えているようなところ。

 しかもそれらはどれも全体的に黒い。もしかして枯れてるのだろうか。

 いや。そもそもこの空間全体が薄暗く、まるで洞窟の中にいるかのようだ。

 そのまま視線を上空へと移せば、そこには青白い月のようなものが不気味に浮かんでいた。


「どこ……ここ?」


 考えてもわからない。

 しかも耳を澄まさずとも聞こえてくるおかしな鳴き声に軽く肩が跳ねる。


「ひぇ……」


 突然のホラーな世界観に怖すぎてどうにかなりそうだ。


「うぅ」


 涙が出そうになるのをなんとか我慢する。


 落ち着け。落ち着け。落ち着くんだ斎藤(めい)

 落ち着いて現状を把握しようじゃないか。


 怯えていても何も解決はしない。

 そう考えた私は恐怖をむりやりにねじ伏せ深呼吸を試みた。


「はぁ――よち。……えっちょ、こうなる前は何ちてたんだっけ?」


 周囲の状況をなるべく認識しなくていいように目を閉じ、記憶を探る。

 とはいえ、本当に数分前のことだ。少し落ち着けば簡単に思い出せた。


「えっちょ、仕事が休みだったかや、ゲームちてて……しょれで途中で喉が渇いたかや冷蔵庫(れいじょうこ)で冷やちてたトマトジュー(しゅ)を取りにいった、んだったよね?」


 恐怖を紛らわせるように声に出して状況を確認する。


 うん、ここまでは間違いないはずだ。

 だって目の前には飲もうと思ってたペットボトル入りのトマトジュースが地面に転がってるし。

 だから確実に冷蔵庫には行ってるし、トマトジュースも手に取ったのは確実なんだよ。問題はそこからの話。


「しょれかや……どうなったんだっけ?」


 腕を組み首を傾げる。


「むー」


 冷蔵庫に行く。ジュースを取る。ドアを閉める。振り返る。コップ取りに行こうとして、一歩足を踏み出した。


 それから――


「床が抜けちゃ?」


 いやいやいや。それはない。

 たしかに私が住んでいるマンションはボロいし、築年数けっこう経ってたはずだけどもさ。だとしても床はまだしっかりしてたもん。だからそれはない。うんうん。


 それに、仮に床が抜けたとしても、だ。こんなわけのわからない所に落ちるはずない。せいぜいが下の階でしょ。


 だから、ない。ありえない。


「……なりゅほど、夢、か」


 そうとしか考えられない。


 ふぅ。なんだ夢か。あー良かったー。

 きっとゲームしたまま寝落ちしちゃったんだなー。うんきっとそうだー。

 その時やってたゲームがホラーゲームだったから、それに引っ張られてこんな雰囲気の夢になっちゃったんだな。うんうん。あはははははは。


「あーあ。怯えて(しょん)しちゃったにゃー」


 よし。そうと決まれば一息つこう。トマトジュースでも飲んで落ち着こう。

 いやー、実は喉が渇いてたんだよね。


「あぇ?」


 目の前に落ちているトマトジュースへ手を伸ばしたとき、違和感に気が付いた。


 なんだかペットボトルが大きい気がするんですけど?

 それになんだか伸ばした私の手がちっちゃく感じるんですけど?

 このトマトジュースは一リットルもないサイズのはず。だから私の手に対してこんなに大きいはずもないんだけど。


 不思議に思いまじまじと自分の手を見る。

 そして自分の体も見てみる。


「……ちっちゃ、い?」


 うん、やっぱり小さいな。

 もしかしなくとも、これはペットボトルが大きいんじゃなくて、私が小さいということか。

 でも何歳くらいなんだろうこれ。わかんないや。


「うぇー、変な夢」


 自分の夢ながらまさかの幼児化ですか?

 こんな体じゃオバケとか出てきたら逃げられないんじゃないの?

 こんな世界観の夢なんだから、いつオバケに襲われるかわかったもんじゃないからね。備えは大事。


「うーん」


 いや、待てよ。

 そういえば明晰夢はコントロールできるって聞いたことがある。

 それならちょっとやってみようかな。


「もちょに戻れー」


 元に戻れー。元に戻れー。と、うんうん唸りながら念じてみる。

 その後、改めて自分の体に視線を戻してみた。


「…………戻ってにゃいにゃ」


 先程と何も変わらない。もみじのように小さな手を見下ろしながら落胆する。


「にゃんでぇー? ……はぁ、もういいや。ジュース飲もっと。よいちょ」


 落ちていたペットボトルを拾い、地面へと置く。

 そして倒れないように押さえつつ蓋へ手をかけた。


「ぐぬぬぬぬっ……あ、開かにゃい」


 子供だからだろうか。握力が足りずに蓋を開けることができなかった。


 ちくせう。どうして自分の夢なのにこうも思い通りにいかないのか。


「…………」


 と、いいますか。さっきから気にしないようにしてたんですけど。なんだかバッサバッサと何か大きな生き物が羽ばたく羽音のようなものが聞こえるんですよね。

 しかも結構近くから。それなりに大きな音で。


 そしてそして。さらに言うなれば、薄暗い周囲をさらに濃くしたような影が私を覆っているんですよねー。


「うぅ」


 これ絶対、後ろに何かいるでしょう。

 だって何かが羽ばたくたびに髪も揺れるし風圧だって感じるもん。

 いやだ。振り向きたくないです。

 だってオバケこあい。


「……あ」


 でもよく考えたらこれは私の夢だった。

 じゃあ振り向いても大丈夫な気がする。


「よち」


 とりあえず振り向いてみて、ヤバそうなら全力で逃げよう。

 これは私の夢なんだからなんとかなるよね、きっと。うん、大丈夫大丈夫。


 そう決意を固めた私はゆっくりと背後を――正確には音の発生源である少し上空を――見上げる。


 薄暗い闇の中。月の光を背に浴びる巨大な影。そこに浮かぶ赤い光と目があった――気がした。


「ひぅ!」


 喉から引き攣るような悲鳴が漏れる。

 腰が抜けたのかぺたんと座り込んだまま動くこともできない。


 これは夢だ。大丈夫。死にはしない。


 そう思い込もうとしても上手くいかず、恐怖で体が震える。

 思わず持っていたペットボトルをぎゅっと抱きしめたまま、私は逃げることもできずにただ空へと浮かぶその影と見つめ合う。


「オレの領域に土足で踏み込む愚か者を見にきたのだが……ただの無力な人の子ではないか。しかも赤子か? 童か? どうやってここに?」


 影が喋った! しかも日本語だ! 私の夢だからでしょうか?

 いやいや。そんなこと今はどうでもいい。

 いきなりバクンと食べられる感じじゃなくてよかった! 本当によかった!


 小さく首を傾げたようなポーズを取った影を見上げる。


 もしかしてこれは、話せばわかってもらえるパターンなのでしょうか?

 わりと人間みのある声だったし、あまり声から敵対心のようなものは感じとれませんでした。


 さらにいうと、声が低かったので男の人、だと思う。多分だけど。

 これがガラガラして聞き取りづらい化け物みたいな声だったら、怖すぎてそこで失神していた自信があります。


 あ、なんか余裕が戻ってきたかも。


「ふむ。まぁどうでもよいか。小さくて喰いではないがちょうど喉も渇いていたことだ。ここらで食事としよう」

「ふぇ?」


 今、あの影はなんて言った? 聞き間違いだろうか?

 小さいとか、食いでとか、食事とかって聞こえたんですけど。もしかして、私を食料として見ておられます?


 少しの希望を持ってちらりと背後を振り返ってみる。

 だけど後ろには特に何もなかった。そして誰もいなかった。


 信じたくありませんが、やっぱりここには私しかいないようです。


「あぅ……」


 もう一度影を見上げようと恐る恐る視線を戻すと、すぐ目の前にドアップの顔がありました。


「――――!?」


 驚きすぎて声にならない悲鳴があがる。

 いつの間に移動したのだろう。私を覗き込むように見ている赤い目が、超至近距離にあったんです。


「はわ……」

「ん? なんだ貴様。なにか妙だな? ただの人の子ではないな……何者だ?」

「あぅ」


 ただの人間です! 食べないでください!


 そう答えたくても、恐怖でまともに声が出ない。

 怖すぎて目に涙も浮かんできました。どうしよう、泣きそうです。といいますかもう半分泣いてます。


「――あぁ、なるほど。貴様『落とし子』か」


 私が答えられない間に影の人は自分で答えを見つけたのか、何かに納得していた。


 ところで『おとしご』とはなんですか? 知らない子ですよ。

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