第50話 穏やかな学院生活 後編
一日薬草採取があるので今日はお昼は別々なるが、いつもは食堂あるいは、外の東屋などでベルナルド様と一緒に食べている。学院内でもできる限り一緒にいてくれるのが嬉しい。
それにベアト様やアイリス様がいるので、ボッチにならないですむのは有難い。
「シャル、学校生活は楽しい?」
「はい。とっても。ベアト様もアイリス様もいますし!」
「それはよかった。アルバート殿下は人よりも魔力が多いから、魔力暴走を防ぐため色々制約があったの。でもシャルの魔力吸収のおかげで、最近は心に余裕も出てきたって喜んでいたわ」
「それはよかったです」
「まあ、私の黒猫の姿が見られないのは残念だって、殿下が漏らしていたけれど」
「ああ、ベアト様の家は感情が高ぶると、魔力暴走を防ぐために動物に変化するんでしたっけ?」
「ええ。我が家は猫系が多いわね。……殿下がたまに『モフモフしたい』ってしつこくご所望するから、黒猫を五匹ほど送って差し上げたわ」
ベアト様は黒い笑みを浮かべていた。
ちょっとした意趣返しのつもりだっただろう。昔からベアト様に対して、アルバート様は我が儘や無理難題を強いてきたらしい。
そのたびにベアト様は三倍返し、あるいは意図を知った上で違った対応をしたという。
「モフモフの猫さんで殿下は満足なさったのですか?」
「ふふっ、まったく。どれも私じゃないと怒ってやってきたのですよ。でもちゃっかり猫を抱いていて、気に入ったのかめちゃくちゃ撫でていたわ」
ベアト様はアルバート殿下とのやりとりを楽しく語った。同性の私から見ても可愛らしい。いつもは凜とした姿なのだけれど、殿下の話をするときのベアト様はとても柔らかい顔をなさる。
私もベルナルド様の話をしている時は、こんな風に笑っているのだろうか。そんなことを思いつつ私たちは教室に入った。
賑やかな声。
窓から差し込む陽射しが眩しい。
すでに何人かクラスメイトが来ており軽く挨拶をして、いつもの席に向かうと既にアイリス様が座っているのが見えた。
「おはよう、ベアト。シャーロット」
「アイリス、おはよう」
「おはようございます。アイリス様」
アイリス様は今日も美しいのだが、少し寝不足なのか欠伸をしていた。連日連夜、魔獣との戦闘や後処理などいろいろ対応をしているのだろう。
ゲームシナリオとは異なる展開だが、こちらの方が被害者は減るらしいと言うことで、ローマン教頭との問題は完全に丸投げをしてしまっている。
「あー、私も早く思い人とラブラブしたい」
「絶賛殺し合いしている相手となんて恋仲になりたいなんて……何度聞いても理解できないわ」
(ベアト様率直すぎる)
「まあ、あれはあれで大事なスキンシップなのよ。長年凝り固まった考えや目的を一度折って完膚なきまでに潰して、ようやく私の声が届くか五分五分のところだもの」
(ゲームでも思ったけれど壮絶……というか命がけ!)
「ヒロインも大変よね。私、悪役令嬢でよかったわ」
(悪役令嬢でよかったのですか!? ゲーム内で死亡フラグ率が高いですよ!?)
アイリス様はローマン教頭と真正面からぶつかって、向き合おうとしている。
ゲームでは当たり前のように戦闘があったけれど、リアルで戦闘が勃発したら私には足が震えて何もできないだろう。相変わらず魔獣関係やシナリオ展開に対して私はあまり関わってないのだが、いいのだろうか。
少しだけモヤっとしつつも、そのことについてベアト様とアイリス様に尋ねたら、
「ベルナルド様が危惧していたように、シャーロットの身の安全が第一だから戦闘関係は私たちに任せておきなさい。ねえ、ベアト」
「ええ、適材適所と言う言葉があるでしょう。だから身に危険が迫るようなら、一にも二にも自分の命優先で逃げること。いいわね!」
「は、はい……」
魔力の無い私が魔法学院に入学できたのは、魔力吸収の特殊能力による特例だったりする。多感な時期で感情のコントロールが難しい学生の魔力暴走を未然に防ぐ、と言う名目で入学が許可されたのだ。
本来なら外部職員という形で席を設けることもできたのだが、私としては学校に通いたいという気持ちが多く、一般生徒枠として入学させてもらえた。このあたりは一周目も変わらないらしい。シナリオ展開を知っていたからこそ、生徒としてアイリス様とベアト様に接触しようとしたのかもしれない。
(……戦闘方面では全く役に立たないけど、私にできることで貢献しましょう!)
お読みいただきありがとうございました(о´∀`о)
最終話まで毎日更新していきます。お楽しみいただけると幸いです。
次回は明日更新予定です。
下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマ・イイネもありがとうございます。
感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡嬉しいです!