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第5話 備品調達

side:掛川亮介

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夕方になるとオーウェンが俺の家にやって来て、夕食を食べながらその日の報告会というのが最近の流れだ。


「なあ、今更なんだが、一階フロアがあれだけ広いということは、当然二階も同じ広さがあるってことだよな?」

「ああ、二階は住居スペースになってるぞ。部屋がたくさんあってな。ずっと宿暮らしだった俺からしてみたら豪邸だよ。寝室しか使ってないけど。」

「はあ・・・。勿体ないな。改装して宿泊施設にでもしたらどうだ?あの広さならオーウェンの居住スペースを除いても、2人部屋が5部屋くらいはとれるだろう?日本の家具持ち込んで高級宿みたいな感じで客層絞ってさ。」

「無理だ。その規模の改装だと相当金がかかる。予算がない。それに宿屋をやるなら一階の水場も共用に改装する必要もあるし、従業員も増やさないといけなくなる。やるにしても飯屋で稼げてからだな。」

「確かに飲食店として成功させることが先か。しかし、本当に勿体ないな。使いもしないのにあの広さの居住スペースは。」

「それを言ったらリョースケだって、一人暮らしのくせに立派な一軒家に住んでるじゃないか。」

「俺は金に余裕があるからいいんだよ。あ、従業員用の寮にすれば少しは有効活用できるな。住み込みで働いてもらおう。」

「ふむ。それなら大掛かりな改装は必要ないからいいかもしれないな。商業ギルドを通じて確保してる人材は、孤児院を出る予定だというから、宿を探してるかもしれない。」

「日本の調味料を使った料理を提供していれば、この店は多分目立つことになる。従業員を守るためにも住み込みにすべきだと思う。あの街は物騒だからな。」

「キリクスの街の治安は良い方なんだけどな。でも夜の帰り道で人攫いとかはあるかもしれないな。分かった。明日、ギルドに行って連絡をとってもらう。エルメラにも伝えておこう。とりあえず、元客室っぽい空き部屋があったからそこを使うか。家具はリョースケに任せていいか?」

「ああ、問題ない。ベッドとテーブルセット、タンス、クローゼットくらいでいいよな?」

「クローゼットは備え付けだったから大丈夫だ。明日、部屋を確認してくれ。あ、ベッドは俺の分もよろしく。」


ちゃっかり自分の分も要求してきやがって。だが準備してやるか。多分、こいつの当初の予定は『智慧の冠』を売って資金調達するつもりだったのだろう。それを俺が報酬としてもらってしまったからな。相当高価な物みたいだから見合うだけの援助はしてやらないとな。



翌日、適当な家具類をネットで注文しておいて、いつものショッピングセンターに買い物に向かった。

今日は何を買うかな。将来的にはネットで大量注文することになると思うが、今はオーウェンに見せるサンプルとしての買い物だ。

家電製品は使えないしな。今日は食器類をいろいろと買うかな。酒を提供するつもりみたいだから当然ビールジョッキはいるよな。皿も大小種類を揃えてみるか。おっ、卓上用の土鍋があるな。鍋物メニューもやるかもしれないし買っておくか。調理用の大きな鍋はたくさん買ったけど、小さい鍋は買ってなかったんだよな。

コーヒー器具類も個人的に欲しいな。昨今のコーヒーブームの影響か、わざわざコーヒー器具コーナーが用意されていて、田舎のショッピングセンターでも品揃えが充実している。ハンドドリップ用品にサイフォン、フレンチプレス、水出しコーヒー器具。一通り全部買ってみた。気に入った物は後日、ネットでもっと良いものを注文しよう。いつもドリップバッグのコーヒーで済ませてたから、ちゃんと器具を揃えたいと思ってたんだ。


今まで金の使い道が思いつかなかったから買い物が楽しい。今日も爆買いを楽しんでいると、唐揚げ専門店の前に着いた。


おっ!今日もいつものかわいい店員さんがいる。よし、今日の晩飯は唐揚げだ。


「こんにちは。」

「いらっしゃいませ!先日はたくさん購入して頂いて、ありがとうございました!」

「ああ、オーウェンも口に合ったみたいですごい勢いで食ってたよ。今日はどれにしようかな。」

「期間限定のカレー唐揚げと黒胡椒唐揚げがありますよ!」

「じゃあそれを5個ずつ。それと甘ダレと塩唐揚げも5個ずつお願い。」

「ありがとうございます!でも、そんなに食べるんですか?」

「えっ?あ、ああ。実はオーウェンがまだ家に滞在してるんだよ。あいつ、すごい量食べるんだよ。」

「ああ、そういうことでしたか。田舎だとたくさん買って頂けるお客様はありがたいです。」

「確かに田舎はお年寄りが多いからなぁ。揚げ物を爆買いするような人はいないか。」

「爆買いと言えば、先日うちの近所で大量のテーブルセットが運び込まれてるお宅がありましたよ。それも同じデザインのものばかり。あんなにテーブルセットを買って何に使うんでしょうね。」


大量のテーブルセットが運び込まれた家・・・。ほぼ間違いなく俺の家だよな。見られてたのか。運び込んだのは運送業者の人だから俺の姿は見られていないか。というか、この店員さんご近所さんなのか。


なんか気まずくなって、商品を受け取ると足早にその場から離れることにした。

まずいな。田舎は狭い。噂が広まるのも早い。大量の物が運び込まれる謎の一軒家。注目を集めてしまうかもしれない。だが、大きな物を購入するのは次のベッド類の家具で最後のはず。それも組み立て式だったから、前回ほどの大きさの荷物ではない。今後は酒や調味料類を大量発注するだろうが、注目を集めるほどの大きさの物ではないはずだ。大丈夫だ。落ち着け、俺。異世界への入り口がバレることはない。


爆買いした荷物を車に積んで、再びショッピングセンターに戻る。

もう夕方なので帰ろうと思ったのだが、本屋に寄ることにしたのだ。料理の本はオーウェンの役に立つかもしれない。夜は日本にいるから智慧の冠は必要ない。夜の間だけ冠を貸して料理の勉強をさせよう。計量単位は分からないだろうけど、参考にはなるだろう。


適当に料理本を何冊か掴んでレジに向かうと、唐揚げ専門店の店員さんと再会してしまった。仕事は終わったのだろう。私服になっている。手にしている本を見ると、どうやら異世界冒険物のラノベのようだ。


「やあ、さっきはどうも。今日は仕事は終わりかい?」

「あっ!先程はありがとうございました!私のシフトは17時までなんです。明日は休みなので読書しようと思って。それ、レシピ本?料理されるんですか?」

「ああ、オーウェンが料理に興味があるみたいでね。参考になるだろうと思ってね。そっちはラノベかい?いいよね、異世界物。俺もよく読むんだよ。スライムに転生するやつとか好きだな。」

「えへへ。憧れますよね、異世界って。私は物作りする話が好きですね。」


俺の自宅から異世界行けますよ。でも実際に行くと怖くて外歩けないんですけどね。


なんて言えないなよな。適当に話を切り上げてこの日は帰宅した。



その日の夜。いつものように報告会が行われた。


「このジョッキでハイボールを飲むと一層美味く感じるな!食器類も質がいいよな、流石ニホンだ。でもこっちの皿はいらない。小さすぎる。」

「まだメニューが分からんからな。参考程度に少し買ってきただけだよ。」

「メニュー考えてきたぞ。これが俺の希望のメニューだ。リョースケの意見も聞きたい。」

「俺は店長の希望に従うぞ。従業員だからな。どれどれ、ふむ・・・。ん?焼き鳥をだしたいのか?これは炭火コンロがいるな。あと、煙が出るから排煙設備も設置しないといけないな。分かった。準備しよう。」

「焼き鳥は肉を焼くだけだろ?タレとスパイスだけもらえればいいぞ?」

「駄目だ!焼き鳥は炭火焼きじゃないと駄目なんだ!」

「お、おう。分かった。任せるよ。俺の方は魔道具を買ってきたよ。こっちで用意する設備は大体整ったと思う。」

「いよいよ準備が整ってきたな。開店はいつにするんだ?」

「20日後に決めた。雇った従業員は開店の5日前から雇用になる。その前日に入居予定だ。それまでに今の調理場に慣れてメニューを完成させる。」

「了解した。こっちもその日程で準備を進めよう。後は従業員の制服なんだが、このカタログをみてくれ。看板娘にはこの制服がいいんじゃないかと思ってるんだ。エルメラちゃんにも似合いそうだし、何より可愛い!で、本人にも意見を聞いてきてほしくてな・・・」


こうして、男二人で看板娘の制服の好みについて長らく語り合った。


後日。最終的にエルメラちゃんがカタログを見て選んだものが採用となり、俺とオーウェンが語り合った時間は全くの無駄になった。

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