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UNDEAD HUNTER  作者: Navajo
最終章 後戻りできない世界
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ある男のドキュメント





 Bonjour アラン


 このメールが君に届いているのか全く確信が持てない。


 けれども、一縷の望みにかけて送っているよ。


 君が教えてくれた、この国の研究施設の職員から情報を聞き出すことができたよ。


 彼は計画に断固反対の立場だからコンタクトしたら、秘密裏に今分かっていることを教えてくれたんだ。


 まず伝えなきゃいけないのは、君の情報は間違っていたよ。


 例のタレコミのことさ。


 そのタレコミの情報なんだが、どうやら意図的に流されたものらしい。


 つまり、そもそもタレコミは無かったということなんだ。


 まず、今回の事件のウィルスは、複数の種類があるようだ。


 そしてこのウィルスは総じて通称、“ビデオゲームウィルス群”と呼ばれている。


 “ビデオゲームウィルス群”は、その仕組がビデオゲームのようだからそう呼ばれているようだ。


 まずは一次共生する寄生ウィルスが居る。


 このウィルスは通称“ハード”と呼ばれ、普通のウィルスと同じように細胞内寄生をする。


 そしてさらに“ソフト”と呼ばれる二次共生ウィルスが居て、その中に“キラータイトル”と呼ばれる、今回の事件の引き金となった二次共生ウィルスが居たようだ。


 仕組みはこうだ。


 この一次共生ウィルス、通称“ハード”が人間の体にやってきた。


 宿主となる人間の体は、様々な生体防御機能が警備員としての役割をして、一方的な被害を被ることを防ぐために異物や寄生者を排除するんだが、こいつらは言葉巧みな訪問販売員のようにして人の体に侵入してきて、ある物を売りつけた。


 それは強力な生体防御装置だ。


 進化の過程として、生物は様々な微生物や細菌、ウィルスなどとも共生しながら多様化していった歴史がある。


 この“ハード”と呼ばれる一次共生ウィルスは、同じように人体に素晴らしい生体防御装置を売り込み、共進化したことで、人と共生することに成功したようだ。


 そしてこの“ハード”は、“ソフト”と称される人体に侵入してくる様々なウィルスを捕まえ、情報を読み取ることで生体防御機能をアップデートできる。


 “ソフト”を取り込んだ人体はその効果で人体の様々な免疫機能を拡張できたようだ。


 その歴史はかなり古く、数十年やそこらの規模では無いらしい。


 一説では、人口の爆発的な増加は経済活動と食料・資源と医療の発展以外にも、このウィルスとの共生が強く影響しているとも考えられ始めたそうだ。


 けれども、今回の事件を引き起こした“ソフト”のウィルスの中にとんでもない奴がいた。


 それが“キラータイトルだ”。


 “キラータイトル”は、“ハード”が根付かせた人体への様々な影響力と、“ハード”の持つ拡張機能を利用して、人の体を作り変えてしまう。


 圧倒的な免疫力、生体防御能力と引き換えにしてね。


 “キラータイトル”は面白いことに、“ハード”と共生した人間にしか感染できない。

 そして二次共生に成功すると、時間を置いてから同じ時間軸で、同時多発的に、突然覚醒する性質がある。


 今回はそれが偶然にもハロウィンの10月31日だったから、ハロウィンウィルスと呼ばれるようになった。


 だから寄生して、人体で増殖して感染の拡散に成功させると、ある時期に一斉に覚醒するんだ。


 まるで自爆テロだよ。爆弾を抱えていることを知らず、一斉に爆発する。しかも爆発するまで本人も気づかない。


 そしてこの“キラータイトル”が覚醒すると、人を変異させる。

 

 いわゆる、アンデッドに人間を変えてしまうんだ。


 こうなってしまうと、宿主の人間は耐えきれずに死亡するか、克服するが人ではなくなりグールに変化してしまう。


 なぜグールになると凶暴になるのかというと、共生体による行動操作の可能性が高いらしい。


 そしてごくわずかな、適応力を持ってその変異を克服した少数の人々は、共進化をしたことで相利の関係性を持った新しい人間に、いわゆるゾンビとして生まれ変わる。


 けれども外見も中身も基本的には何も変わらない。今までと一緒。ただの人間だ。


 けれども、この“キラータイトル”に感染すると、体内で様々な“キラータイトル”の亜種を作り出される。


これは共生してアンデッドとなったことで、宿主の人間は遺伝的、生理的、行動的な変化が起こり、免疫機能と生体防御機能が飛躍的に向上する。その結果として、“キラータイトル”は生存と増殖と伝達方法を新しくし、より効率的に分身の増殖と開発できるようになるそうだ。


 これらはの“キラータイトル”の亜種は、通称“シリーズ”と呼ばれる。


 “キラータイトル・シリーズ”は、変異したグールやゾンビと化した人には影響は無いけれども、変異に失敗した人間や寄生に成功していない人間に向けて、さらなる寄生と変異を促すために、“キラータイトル・シリーズ”は何度も戦略を変えて、もっと強力で活発な活動をする。


つまり、訪問販売の押し売りをする。


 この押し売りをしてくる連中がとにかくたちが悪い。


 “ハード”に感染してしまうと一次共生は止められないが、この“ハード”自体は悪さをしない。


 そこで各国の研究機関は、二次共生する“ソフト”の“キラータイトル”が覚醒しないようにするために、“ハード”の活動を抑えるという、“ソフト”の読み込みができなくなるワクチンを作った。


 けれども、“キラータイトル・シリーズ”は、細胞内共生する一次共生先の“ハード”自体を拡張させ、強制的に感染と二次共生をする方法でそれを乗り越えた。


 アンデッドとなった人は、こうして進化し続ける“キラータイトル・シリーズ”を生きている限り増殖させ続けて広げる。


そして、これらの“シリーズ”は爆発的な広がりをするために、同時覚醒のチャンスを狙って人間に寄生し、潜伏して時期を待ち、タイムリミットとともに覚醒する。


 この同時多発的な覚醒は、通称“リリース”とも呼ばれる。


 なぜ同時多発的に覚醒するのかについては、人間に対する戦略では無いかと言われている。


 ワクチンを作っても作っても、新しい“シリーズ”が次から次に“リリース”されて、イタチごっこ。その上“リリース”されるまでの潜伏期間中は人への感染の有無がわからない。


 しかも、進化した“キラータイトル・シリーズ”は単体じゃない。“ハード”を伴ってやって来る。


 なんと押し売りでセット販売をしてくるんだよ? ずる賢くて狡猾だ。


 その上、“ハード”も改良してる。それはまさに“次世代ハード”と“次世代ソフトウェア”だよ。


 次世代型は圧倒的な感染力と、共生変異能力と、共進化の促進プログラムをもってる。


 だからもしも“ハード”に感染しておらず、共生していない人が居たとしても、無理やり“次世代ハード”と一緒にやってくる。


 彼らのマーケティングは完璧だ。提供する対価は人が生き続けること。それだけで体は丈夫になるという売り文句。


 宿主が断ったって、宿主特異性を身につけた奴らはターミネーターみたいに人体の生体防御機能を突破し、侵入してきて体内に押し入り、勝手に居座る。防ぎようがない。


 現在わかっている限り、この“キラータイトル”に覚醒されると、耐えきる能力が、白人種には無い。


 原因は色々あるようだが、代表的なのは金髪にする遺伝子などが反発したり、過剰反応するようで、寄生者の激しい活動に体が耐えられないようだ。


 中にはネアンデルタール人の絶滅の原因などという憶測まで飛び交ってる。


 とにかく、“キラータイトル”に感染すると時限的に生きるか死ぬかが定められる。もしも生き残れば、グールかゾンビのどれかになる。


 研究者の中には新しい自然選択の一つで、アンデッドとなって生き延びた人々が新しい人類として、新しい世界で生き残る存在だと主張する人もいる。


この理屈の理由として、垂直感染が確認されたんだ。


 つまり、親から子に感染する。ゾンビの子はゾンビとして産まれるんだ。哺乳類の胎盤形成を含む妊娠プロセスにウィルスが強く影響していることが判明したことを考えると、まさに新人類と言えるかも知れない。


 けど、そんなことは現代の白人社会では認められないし、許されない。


 だから既存の人間のままでいる以外に選択肢の無い白人社会では、グールとゾンビを悪魔として扱うようになってしまった。


 魔女狩りだ。白人以外の有色人種が全て悪魔だというね。


 これらの“ビデオゲームウィルス群”がいつ、どこで生まれたのかは分からない。


 “キラータイトル”が人為的なものなのか、自然発生的な物なのかもまだ分からない。


 けれども、もしも自然発生だとなれば、白人が自然淘汰の対象となってしまったことになる。


 神を崇める白人社会が、神から見捨てられたんだ。そんなことは絶対に認められない。


 だから今回のウィルスは人為的なものであると大体的に主張され、グールとゾンビのアンデッド根絶化計画が着々と進んでる。


 それは有色人種との隔離と隔絶。そして虐殺だ。


 僕も同じ白人として正直なところ、これを強く非難したり、反対することは困難だ。


 けれども、ユーラシア大陸や南半球側の有色人種が大多数を占める地域でも、グールが大きな問題になっている。


 有色人種の差別を抜きにして、ウィルスの感染を防ぎ、変異したアンデッドを駆除したり、隔離する政策に迫られているのが現状のようだ。


 そりゃそうだ。有色人種の彼らだって、ロシアンルーレットなんかしたくない。


 白人の線引なんてのも曖昧だから、アメリカでも未曾有の大パニックだよ。


 わずかな髪や肌の色の違いで白人同士で殺し合ったり、自衛するために黒人とアジア人、ヒスパニックや先住民などが武力決起してる。


 そもそも生存者が人間なのか、ゾンビなのかさっぱり分からない。


 その答えは次の“シリーズ”が“リリース”される、そのを日を待つだけだ。


 みんなが、自分は死ぬかもしれない。隣の人がグールに変わるかもしれない。恋人だけが生き残り、恐怖をばらまく爆弾を背負い続けるかもしれない。そんな不安を抱えてる。


 すでに国の中で分裂してる。もはや合衆国とは言えない。


 生存者でグループを作り、不可思議なユニオンまで結成され始めてる。


 僕はもはやどんな政策もうまくいくとは思ってない。


 人類の過干渉すぎる歴史が生んだ、文明と文化の押し付け合いを今更覆すことなどできない。


 人間は残された人々だけが生き残る新しい世界に生まれ変わっていくのかもしれない。


 アラン、君が教えてくれた研究員らは、人々の隔離政策と国交断絶に留めるようにと主張しているけれども、どうなるのかは分からない。


 自国の中に核兵器を撃ち込んで浄化させることすらも選択肢の中にあるようだ。


 もしもお互い生き残ることができたら、また君の作った豚の豆煮込みを食べたいと思ってる。


 僕らに神のご加護があらんことを。


 君からの返事を願って。 スティーブ





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