美ヶ原
ルーツです
松本駅前から東にまっすぐ。県の森まで続く駅前通り。
視線をあげるとビルの間から美ヶ原が見える。
大阪では山は見上げない。大阪平野を囲む山々の山頂は水平な視界に収まる。
大阪で見上げるものと言えば高層ビルだ。
街と山との距離感が、ああ信州なんだなと感じさせてくれる。
中学生のころ、夏休みの家族旅行で松本を訪れた。
旧開智学校を見学し、美鈴湖畔の国民宿舎に泊まり、美ヶ原にも登った。
王ヶ鼻から美しの塔を経て山本小屋まで、放牧されている牛を横目に、広すぎる高原を歩いた。嫌になりながら歩いたことを覚えている。広すぎる高原は歩いても歩いても風景が変わらなかった。
夏休みの自由研究は「美ヶ原の高山植物」だった。おかげで、ニッコウキスゲ、イブキトラノオ、シシウド、ミヤマキンバイなど、いまだに名前を憶えているものがある。
美鈴湖の国民宿舎から帰路についたところで、信州大学の前を通った。北門前の道を通ったときにキャンパスをチラッとみただけだったが、このときから“信州大学”という存在が頭の中に居座ってしまった。
在学中に美ヶ原の上まで行ったことはない。見上げるだけだった。
見上げるだけだったけど、駅前通りから見上げる美ヶ原は好きだった。
そういえば、「うつくしがはら」じゃなく、親しみを込めて「うつくし」と呼んでいたことを思い出した。
美鈴湖の国民宿舎「美鈴荘」
2017年に訪れたときにはすでに閉館されていました