クーラーが壊れたら
イライラするほどの暑さを感じていた。夏の陽射しと熱風が、あたしを包み、じわじわと肌の上に汗が溜まっていく。
「暑すぎぎでしょ!」
腹が立って叫びつつ、寝返りをうつ。すると水滴がつつーっと皮膚の上を滑っていき、床の水たまりを大きくしていた。
少しだけ豊かな太ももが、濡れて怪しくテカっている。その様子を見て、自分の体なのに艶めかしいと感じてしまう。もう脳が沸騰しているのかもしれない。
汗で濡れたシャツを脱ぎ、洗濯機に投げ込む。下着だけになったけど気にしない。全部壊れたエアコンのせいだ。
イライラしたり、変な気分になったり。そんなあたしを笑うかのように、蝉がみーんみーんと鳴いていた。
いつもよりうるさく感じているのは、きっと気のせいではないのだろう。
不意にスマホの通知音がした。兄からだった。
正座をして、慎重にアプリを開く。
「エアコン壊れたって? 暑中見舞いに行こうと思うけど部屋にいる?」
嬉しい! 思わず、ぴょんと飛び跳ねる。
……しかし部屋の様子に気づき、パニックになりかける。
兄を迎える状態ではない……部屋も、あたしの格好も。
まずは掃除をしよう。女の一人暮らしだけあって、あまり汚くはないと思うけど、所々気になるところがある。
その後は、可愛い服……いや、暑さを言い訳にしてちょっと大きく胸元が開いているシャツを着よう。
返信をすると、兄からの返事がすぐ返ってくる。
「わかった。あと一時間くらいで着く」
会えるのは嬉しいけど、彼の到着に間に合うか少し心配になってきた。
掃除機をかけ、丸められたティッシュなどのゴミを捨て、乱雑に散らばったタオルやハンカチをカラーボックスに押し込む。
かなり迷ったけど……シャワーは諦め体をタオルで拭くだけに留める。そして化粧を直して……。
ピンポーン。
ああ、ついに来てしまった!
一通りの準備が終わっていたのでセーフッと心でガッツポーズをしながら、兄の元に走った。
心が躍る。口が緩む。足が勝手に走り出す。
ガチャッと言うドアが開く音。
兄の元に突入するあたし。
「おっおい!」
彼が持っている袋からアイスを奪い、口に入れた。
「いいよね?」
「いいけど俺を待ってたんじゃねーの?」
「もちろん待ってたよー!」
「俺じゃなくてそのアイスだろ!」
言いながらも兄は笑い、あたしたちは一緒にアイスを食べた。
なんだか、さっきより暑くなった気がしたけど、それはもう、嫌な暑さではなくなっていた。




