2:因幡鵜鷺 1
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第2章 因幡鵜鷺
佐藤孝弘と因幡鵜鷺が異世界にたどり着いてから早三日。鵜鷺は自分の体が自分のものではないような、ふわふわした遊離感にとらわれていた。
それに気がついたのは、一日目サース・アルド宅にて何年ぶりかと思うほどの高熱と視界が歪むような激しい嘔吐感、他諸々と体調を崩した。
そして翌朝目覚め、歩こうと思ったときに床が抜けた。
というか踏み抜いた。
この時から鵜鷺の体は、一般に生活することが困難な程にありとあらゆる箇所に力が入っていた。
朝食にと出された物を食べるためにフォークを取れば、指の形に変形させ。
「(ぐにゃっ…)あっ…」
喉が渇き飲み物を飲もうとグラスを持てば、粉々に砕き。
「(パリン!)あっ…」
ベッドに腰かけるように座れば、ベッドが真っ二つに割れた。
「(バギッ!)違うの!私は重くないの!孝ちゃん信じて!」
存在が小さな嵐のように成り果てていた。
何よりベッドを壊した時の孝弘の冷めた視線に、体重を気にする乙女センサーが爆発したらしく、弁明を始めた。
「…あらあら…。困りましたね…。」
「すみません…」
サース・アルドもいろいろな物を破壊し尽くす鵜鷺へ、かなり困り果てた様子であった。
孝弘はいくつか気になっていたことを解消する方法と動機を思い付いた。
「本当に申し訳ない。そこでなにか詫びがしたい」
「はぁ~、お詫びですか…」
「はい。もともとここに来るまで学生をしながら古本の修繕をおこなっていました。貴重で修繕をしないといけないような本はお持ちでないですか?」
「ほんとうにございますか!?」
サース・アルドの思いもよらない食い付きに孝弘は面をくらった。しかし行幸と孝弘は考えた。
一種の活字ジャンキーな孝弘にとって、この3日間一切本を読めないというのは今後の方針よりも近くの問題だった。
それに、しゃべり言葉は十分に通じていて、日本人とかなり近い概念感のようなものがあることがわかった。
もちろん少しずつ意味や違う言葉は有ったが、どういう物か尋ねればなんとなく伝わるものも多かった。
ということはだ、多くの言葉で互いの意思を示し合うことができる。
ということはだ、何かに書き起こし後世に伝えていてまた後の世の人間が書きたしてきたはず。
ということはだ、文字があってしかるべき!
ならば本ができるはず!Q.E.D.証明完了!っと、文字の起源から考える程活字ジャンキーな孝弘の考えた通り本がある。
「ごほん…。年甲斐もなくすみません。ですが、この世界だとロストテクノロジーなのでかなり貴重な技術になります」
「本があるのにそれを直す技術が失われたのですか?」
変な話ではあると孝弘は思った。家があるのに大工がいないようなそれほどの違和感がある。
「そうですね。その辺りについてもお話いたしましょう…」
長くなるのかイルビルにお茶を出すのと本を持ってくるようにと指示した。
もともと魔術の発達していたこの世界では本はあまり普及しなかった。もちろん魔術を残すために貴重すぎるほど高価な本は作られていたが、それも魔術の多さに比べればごく僅か。
どこにでもあるよな話で、歴史において時々現れる世界を変えてしまうほどの影響を与える人物、いわゆる天才が現れる。
その天才がこの世界の今も通信魔術やそれを実現させる魔法道具、とにかく天才は時間が惜しいと作れる物を生涯作り続けた。
その魔法道具を見て解析し作るぐらいならなんとかできる人もいたため、安価に世界中にいろいろな魔法道具が溢れていった。そして世界はかなり裕福になっていた。
そしてまた良くある話で軍事転用しようとする輩が現れ世界中でどんパチと戦争が起き、それにぶちギレた神様と人間とその他いろいろな種族がさらに戦争。
便宜上孝弘は聖書にあるラグナロクっぽいので、この世界だとその戦争のことを勝手にラグナロクと定義した。
その結果、今ではその繁栄を築いた魔法道具ですらロストテクノロジー。現存するものがもし壊れたら治せないし作れない。
そして話は戻るが、そもそも流行らなかった技術の中でも、さらに流行らなかったその治し手。
人知れずロストテクノロジーになったというもの悲しお話であった。
とまぁー、本自体は世界でいろいろな所に保管されてはいるが、魔法で押さえていても経年劣化とか諸々で危うい状態である。
「…新しく本を作ることはできないのですか?」
活版印刷とかいずれは思い浮かぶ人間がいてもおかしくは無さそうなのに。
「それも難しいですね。新しく本を作ろうとすると呪われてて作れません」
これまでサース・アルドに説明してもらった。
話は戻ってラグナロクのちょっと前。人類は繁栄を極め地上を我が物のように、我らこそ支配者だと言わんがばかりに存在していた。
しかし内情はまた少し違っていた。
貧富の差や堕落した政治、職業選択や言論の統制。家畜以下の扱いの種族がいたり、人間至上主義のさらに貴族至上主義とでも言えばいいだろうか。
見事なカースト制度がしかれていた。
一番上にたつ貴族は腐り果て、その下の一般市民は苦しんではいたが下には下がいると安心し、それより下はもはや筆舌に尽くしがたいほどに傷んでいた。
ノブリスオブリージュとか向上心とかそういったものはなく、堕ちる方向へと人間は進んでいた。
となるといずれは破綻するのだが、その破綻は思ったよりも早くに来た。
数千年あるいは数万年、もしかしたらもっと前から放置していたこの世界の神様が、人間なんかやばくね?ぐらいの精神で、人間をリセットさることにしたことからラグナロクが始まったらしい。
しかし、ラグナロクは思ったよりはうまくいかなかった。堕落しきった割に人間達は高い技術を持ち合わせ、以外と何柱もの神様を殺せてしまった。
その結果人間側も神様側も他の種族も、痛み分けのような形で戦争が終わった。
そして、神様の呪いをいくつも受けることになった。
その一つが文字の呪い。
新しく文字を書いてしまうとそれに合わせた事象が起こる。
例えば3分後にこのパンが無くなりますとか書いてしまったら、世界中のパンが爆発とかして無くなるかもしれない。
とにかくそれに合わせた悪い事象が起こる。
ぶっちゃけ文字を書かなければ済むだけの話なので、地味な呪いではある。
しかし過去は変えられないので、ギルドと呼ばれる組織が過去だけを一言一句違えないように、間違った事を書かないように、細心の注意を払って歴史を紡いでいるらしい。
例えば金色の英雄がいる。とか書いてしまった日には、その英雄は金色の肌になってしまうかもしないから、英雄がいる。のように限りなく装飾言を除いて書いているらいし。
個人を特定できないならば、例外的に装飾言等を用いて書いたりするらしいがそこはよく分からないらしい。
その他にもギフトと呼ばれる特殊な力を持った人間や、神物と呼ばれるもともとは別の持ち主の力や腕や足などを持って産まれる事もあるらしい。
中二臭さがあるが、魔法とか神様とかそういうのがあるなら仕方ないかと、この世界に毒されることに決めた。
後書きですよ後書き!
どうもこんにちはなつみんです。
皆さん台風の中いかがお過ごしでしょう?私は元気です。
鵜鷺が一切出て来ないのに、サブタイトルが因幡鵜鷺っていうのもなんか詐欺っぽいですね。
ですが、少し長くなる2章なので詐欺にはならない予定です。
次がいつになるかはわからないですがなるべく早くお逢いできたらと思います。