1:現実は小説よりも奇なり?2
この度はぶれいぶすとーりー! 1:現実は小説よりも奇なり?2を読んでいただきありがとうございます。
「ふざけろ!異世界ファンタジー!」
鵜鷺の手を引きながら孝弘は悪態をついた。
のそのそと本気で走っている様にはとても見えないドラゴンから、なるべく離れるためにこちらは全力で走る。
なおもあっけらかんとしている鵜鷺の安全を第一に、孝弘は考え続けた。
(どうするどうする!?このまま走って逃げきれるのか?どこかになにかないのか?最悪鵜鷺だけでも…!)
考えるだけの時間はそうなかった。
やはり体格さがあり、こちらの5、6歩がドラゴンの1、2歩といった具合で簡単に追い付かれる。
胴長短足のようにも見える体躯のくせして、なかなかに機敏に動ける奴だった。
ごちゃごちゃと散らかる思考を纏められないまま、ドラゴンに追い付かれてしまう。
ドラコンはおもちゃを手にとる子供のように、孝弘達に凶手を伸ばす。
考える時間や行動を起こす時間すらなかったゆえに、最後は最も強い衝動に身を任せた。
鵜鷺の手をさらに強引に引き、胸の内に収めるように覆い被さる。
ドラゴンの凶手が迫るというアクシデントの中で、孝弘に抱き寄せられるというハッピーに鵜鷺は舞い上がっていた。
(孝ちゃんが危ない…?)
鵜鷺は瞬間、孝弘の胸の内から突き上げるように孝弘を退かせ二人して転がった。
タックルのお陰でドラゴンの凶手は空振りに終わった。
そして今度は、鵜鷺が孝弘を守ろうとした。
害意を持って孝弘を襲ったドラゴンに対し、転けている孝弘を守るように手を広げ片膝で立ちドラゴンと正体した。
孝弘の敵に対し鵜鷺は怒りや敵対心を燃やし、普段ルビーのように輝く瞳は燃え上がる炎の煌めきのように紅く、熱を持っているように見えた。
そんな鵜鷺の目に怯んだのか、ドラゴンがわずかに後ずさった様に見えたその時。
「こちらへおいでなさい。さぁ、早く」
鈴の音や清流に例えられそうな程流麗な声が二人を呼んだ。
二人は声の方に、今まで走っていた進行方向に顔を向けた。
そこには先程までは無かった屋敷と、その門の間で車イスに座ったつばの大きな白い婦人帽子を被った女性がこちらに手招きをしていた。
これは好機と、他にすがるもののない状況で孝弘は歓喜し、反対に鵜鷺は猜疑心に駆られる。
停止をしているドラゴンを確認した孝弘は、素早く立ち上がり鵜鷺の手を再び引いた。
「鵜鷺今のうちだ!行こう!…早く!」
「…う、うん」
孝弘の言葉に引かれ走り始める。
門に近づくにつれ鵜鷺の足取りは重くなっていく。
鵜鷺は昔から自身の直感を信じていた。
本能的に近づきたくない場所は基本的に危険だし、直感が止まれと言えば目の前で事故が起き自身らは回避している。
なのでドラゴンに触れても危険とは感じなかったから、それは対して危険ではなかったのだろう。
そしてその本能とか直感とかそういった部分が、近寄るべからずと危険信号を出していた。
だが孝弘が進むならば着いていき、何としても孝弘を守らなければならない。
二人が門を越えたのを確認して女性はドラゴンに向かって一言だけ囁いた。
「あっちへおゆきなさい」
静かでたいした声量でもないのに、圧のある声にドラゴンは翻し飛んで去っていった。
ドラゴンが飛び去ったのを確認した、女性はお付きの燕尾服のご老人に門を閉めさせた後、車椅子を二人の方に向き直させた。
「ようこそ、異邦の旅人方。私はサース・アルドと申します。そしてここはサース・アルド領。私が治める国にございます」
女性は静かに名乗った。
どうもこんばんは。なつみんです。
重ねて読んでいただきありがとうございます。
1章もあと4,5千文字も書けば次章に写ると思います。
次の投稿もいつになるかわかりませんが、なるべく早く投稿したいです。
次話でお会いしましょう。