5 オレンジの空
突然、雨がやんだ。さっきまであんなに激しく降っていたのに、だんだん小降りになるとかではなく一瞬のうちにぱったりとやんで、空がまた明るくなっていく。
ラボの外に出ると空の色はさっき雨が降る前の黄色っぽい色からだんだんオレンジ色へと変化していき、うっすらと白い月が見え始めた。
参加者たちは食堂へと戻って、そこに用意されていたご馳走を見て歓声をあげる。
本物のフライドチキンに本物パン、煮たキャベツが入った強化スープ。1年前とほとんど同じだ。
なんだかいろんなことを冷めた目で見ていた僕だって1年ぶりの本物フライドチキンは嬉しい。
特に席は決まっていなかったので、僕はちゃっかりさっきのエリナに似た女の子の隣に座ることに成功した。
「これを食べてがんばって任務を遂行してください」というあからさますぎてどんな顔をしたらいいのかわからない所長の挨拶で食事が始まり、僕は隣の女の子をチラチラと見て、
たぶん18歳だと思うけど少し幼く見える彼女に話しかける。
「美味しそうに食べるね」
「だって」と彼女は口の中のものを飲み込んでから、「本物パンなんて食べるの初めてだもの」と答える。
中流階級で本物パンは結婚式のときに振舞われるご馳走だから、彼女に兄や姉がいないとしたらまあそれもわかる話だ。
「僕も本物パンは久しぶりだよ」
青い風の星では毎日焼きたてのパンを食べていたけれどそれはやっぱり合成パンミックス粉で焼いたパンで、やっぱり本物パンは香りが違う。本物の小麦粉の香りがする。
テーブルの上のご馳走があらかたなくなるころ、トリナが前に出て声を上げる。
「食事が済んだらペアを作ってください。ペアになった人から私のところに来て、必要なものが入ったバスケットとコテージの鍵を受け取ってコテージに移動してください」
ざわめきが広がり、男性参加者たちは熱心に女の子に声をかける。一番人気は清楚な感じのストレートヘアの美人だ。
毎回同じことが繰り返されているんだろうなあ、と思いながら僕はさっきの子に声をかけたのはやはりエリナにことがわだかまっているのだろうか。
いやいや、僕はこんな感じの子が好みなだけだと自分に言い聞かせる。
「あの、よかったら僕とペアになってくれる?」
僕がそう言うと彼女はびっくりしたような顔をして、
「えっと、あの、私でよければ」とOKしてくれた。
僕たちはトリナから大きなバスケットと6番と書かれた小さな札の付いた鍵を受け取り、食堂の外に出る。
と、空は一面のオレンジ色。
「キレイね」と彼女が言う。
「この惑星は自転がゆっくりだから夕焼けが長く続くんだね」
夕焼けは僕たちの故郷の惑星でも見ることができたけど、それはとても天気のいい日に空の端がちょっぴり染まるだけで、それも高い建物に遮られて切れ切れにしか見えない。
ここの夕焼けは遮るものもなくて空全体がオレンジ色で、2つ目の月が見えて、改めて違う惑星に来たんだなぁと思えた。
食堂の南にある6番のコテージの玄関にはすでに小さな灯りが灯って僕たちを待っているようだった。
遅くなりました。




