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39 電気ストーブ

僕たちがこのオレンジの空の惑星に来て半年、今日は6回目のパートナーチェンジの日だ。

今回の僕のペアは大人っぽい感じのノエラで、やっぱり残ってしまいそうになっていたから声をかけた。

そして今回はコテージの鍵と一緒に1人1着の上着と各コテージに1台、電気ストーブが配られた。


上着は襟にフェイクファーが付いている暖かそうなもので、

「よかったね」

僕たちはそう言いながらストーブとバスケットを抱えて10番のコテージに向かう。

「一昨日補給船が来たのね」


補給船のクルーと僕たちB計画の参加者は出会わないように配慮されていたから、まあそうだったんだろうと思うしかない。

ともかくかなり寒くなってきていたから上着とストーブはありがたい。


コテージのリビングに電気ストーブとバスケットを置いて、今日は荷物が多くてコーラを持ってこれなかったから

「僕、食堂に行ってコーラを入れてくるよ。ノエラは?」

と訊くと

「寒いからコーヒーがいいわ」

ノエラの声はやわらかくて耳に心地いい。

「そっか、それもそうだね、僕もコーヒーにしよう。それよりまずストーブを点けようよ」

僕はストーブはリビングのどこに置くのがいいのかと考えながら

「僕さ、ヘンな話なんだけどストーブを点けた瞬間のかすかにホコリが焦げる匂いがなんか好きなんだ。これから暖かくなるよ、という感じがして」

「私も好き。安心するというか、なんかいいわよね」

僕はこんな些細な思いをわかってもらえたことが嬉しかった。


そして、ストーブを点けたのに。

「ポッ」という音はしてすぐに電熱線部分が赤くなったのにあの懐かしい匂いがしなくて、かわりにオイルが焦げるようなちょっとイヤな匂いがする。

「あれ?」

僕たちは期待していた匂いがしないので顔を見合わせて、それから気が付く。

「このストーブ、新品だ」

「あらぁ。それならホコリなんか付いてるはずないわね」

ノエラはふわっと微笑む。


僕はコーヒーを入れて、

「ノエラってキレイな名前だね」

「ありがとう。私クリスマスの日に生まれたの。『ノエル』というのが古い言葉でクリスマスの意味なんだけどノエルだと男の子みたいだからノエラなの」

「へぇ、そうなんだ。僕は自分の名前の由来とか知らないや」


そこで会話が途切れてしまう。だけどストーブは便利だ。赤い電熱線を2人で見ていると沈黙がそんなに苦痛ではない。


と、ノエラが立ち上がって

「ねえ、カーテン閉めていい?」

と訊くから

「あ、そうだね。閉めた方が暖房効率がいいよね」

そう言うと

「私、夕焼けが好きじゃないの」

ノエラはそういうけれど、窓の外の空は鮮やかなオレンジ色。


僕はこのオレンジの空はきれいだと思うけれどそんなことは言わずにノエラの横顔を見上げた。

ノエラは美人だなと思う。僕は例えばニーナみたいなかわいい系で幼く見える子にはわりと遠慮なくポンポン言えるのにノエラに対してはなんだか構えてしまう。

きっとノエラには、たとえそういうことをした後でも気軽に「一緒にお風呂に入ろう」なんて言えないと思う。


ノエラはゆっくりとカーテンを閉めて、部屋の明かりを灯す。


「ノエラってさ、なんていうか大人っぽいよね」

そう言ってしまった僕に

「私、もう23歳だもの」

と答える。


「えっ!?」

僕はびっくりして声を上げる。

ということは、ノエラには何かそうとうなわけがありそうだけど、それを訊いてもいいものか僕が迷っていると、

「何故私がB計画に応募したのか知りたい?」

「ノエラが話してもいいと思うなら。あの、好奇心とかじゃなくてさ、これから1ヶ月一緒に生活するんだからある程度はお互いのことを知っていた方がいいと思うし……」

「そんな言い訳みたいなことは言わなくてもいいわよ」

ノエラはそう言うけど。


「ノエラが言いたくないことは言わなくていいよ」


「ありがとう」

またノエラはふわっと微笑む。

「長い話になるわよ?」

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