38 映画館
「ねえ、映画館ってどうかしら?」
またファリィは突拍子もないことを言う。
なんだかんだ言っても僕はファリィと何屋を始めるか、という話をするのは面白いので今日も昼食後にコテージに戻ってきていた。
「ジェイミィ、映画館は知ってる?」
「それぐらい知ってるよ」
知っていると言っても古い映画の中に主人公が映画を見に行くシーンがあったのでそれで知っているだけだけど。
「でも映画館って、それはいくら500万コインあってもちょっと無理じゃない?」
「そんなに大掛かりなものじゃなくてね、んっと『映画サークル』ってジェイミィたちの高校にもあった?」
「あったよ、僕は入ってなかったけど兄貴が入っていた」
映画サークルと言うのは主に高校生がやっているもので、10人ぐらいのグループを作って週に1回とか月に1回とか、順番にメンバーの家に集まって映画を見る。映画は1本いくらでTVで有料で配信されているけど、1人で見ても10人で見ても料金は同じだ。だから10人の映画サークルに入っていれば1本分の値段で10本見れることになる。
「あんな風に場所を用意して、まあ20人か30人分ぐらいの椅子と大きいテレビ、そうね中学校の教室にあったぐらいのが買えれば出来そうでしょ」
「へぇー」
これは他にはない発想だと思う。思うけど
「それ、テレビ局が売っているものを再販売することになるんじゃない?法的には大丈夫なのかなあ」
「はぁ、ジェイミィは大学に行くのよね?役人志望なの?役人が言いそうなことばっかり言うのね」
「役人志望というわけじゃないけど、そこはクリアじゃないとだめだと思うよ」
ここまではファリィと話すいつものパターンだ。
だけど今日のファリィはなんだか得意そうだ。
「んふふ、今回はそこも大丈夫なの」
「それはね、ジューススタンドを併設するのよ」
「は?どういうこと?」
映画にはコーラとポップコーンがつきものだからというわけではないだろう。
「20人から映画1本の10分の1の代金を受け取って、映画1本分のお金をテレビ局に払って20人に見せればきっと儲かるけど多分グレーよ。というかそういう法律がないかもしれないし、なくてもテレビ局側からしたら問題だから、高校生の映画サークルは黙認されていてもこれはきっとつぶされるんじゃないかと思うわ」
「うん、それで?」
ジューススタンドとどう繋がるんだろ?
「だからその映画を見れる部屋の隣でジューススタンドをやって、普通よりジュースやコーラを高く売るの。で、その高いコーラを買った人は座って映画を見れるようにするの」
「うーん、かなり白っぽいけどやっぱりちょっとグレーなんじゃない?」
「なんで?合成パンと強化スープ、それに飲み水以外は何をいくらで売ってもいいのよ」
「まあそうだけどさ」
「カフェとかと同じよ。私は行ったことないけど」
「僕だってないよ」
カフェは上流階級向けのアパートが並んでいるあたりにはあって、本物コーヒーとか本物紅茶が飲める。多分。
「カフェだって、マーケットで売っているより高くでコーヒーや紅茶を出しているじゃない?」
「それは淹れてもらう手間と座って飲める場所代が込みだから」
「同じことよ。普通のジューススタンドと違って座って飲める場所があってその場所にはたまたま映画が流れているんだから」
そこまで言われるとなんだかアリな気がしてきた。少なくとも「貸しマンガ屋」よりはよさそうだ。
「ファリィは映画が好きだっけ?」
ファリィが映画を見ているところは見たことがないけど。
「別に好きでも嫌いでもないわ。逆に映画がすごく好きならこの商売は向いていないと思う」
そうなんだろうか?それよりも
「ジューススタンドの話をしてたらなんだかコーラが飲みたくなったよ」
「私も」
それから僕たちは連れだって食堂に行った。




