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34 事故

「ふぇっくしょん」

朝から盛大にくしゃみをする僕にファリィは珍しくインスタントコーヒーを淹れてくれた。昨夜寝室から僕を追い出したことへのお詫びのつもりらしい。

「あれは僕が悪かったんだ」

僕はそう言ってファリィを後ろから抱きしめようとしたら

「そういうのはいいから」

あっさり拒否された。


僕はファリィのことを軽く考えているわけではないし、最初の印象と違って面白い子だなと思っているけどなにかが掛け違った感じでなかなかうまく行かない。


「ジェイミィ、海へ行かないか?」

何日か経って僕は土壌調査をやっているタツトに誘われた。

「海の砂というか土が欲しいんだ」

デートのお誘いと言うわけではなく、僕も海の水が欲しいかもしれないと思って誘ってきたようだ。

「いいけど、海に行くなら3人以上でと言われているからもう1人誘わないと」


結局その日の午後に僕とタツトとドクターの3人で海に行くことになった。

そうだ、蓋付きのバケツを借りてこなきゃ。


昼食後僕はファリィと話しにコテージに戻ろうか、それとも海へ行くからラボに行こうか、あ、タオルを持って行った方がいいから一旦コテージに、とか考えていた時、カウンターの向こう側、厨房の方から大きな音と悲鳴が聞こえた。


「え、何ごと?」

振り向いたら所長とドクターがカウンターの中へ走っていくところで、食堂にまだいた連中はみんな口々に叫んだり誰かの名前を呼んだりしながら、何が起こったのかを確かめようとカウンターの方に殺到するから、食堂の入り口のあたりにいた僕からはなにも見えなくて、誰かがキフユの名前を呼び続けているのが聞こえる。


僕はどうしたらいいのかと迷っていると、

「静かにしなさい!」

所長の声が一喝した。


僕たちはぴたっと静かになると所長の方に注目した。

僕たちは小学校中学校で何度もそういう注意をされてきたんだ。「騒がない、目上の人の言うことを聞く」


「戸棚が倒れてきました。怪我をした者もいますがたいしたことはありません。関係ない人は午後の作業開始まで各自自分たちのコテージに戻っているように」

それを聞いて僕たちは三々五々コテージに戻る。


怪我をしたのはキフユだな。厨房から聞こえた悲鳴は男の声だったし、キフユは男子の中でただ1人の調理補助担当だし昼食後に厨房で後片付けをしていたんだろう。

事情を説明してくれただけ所長はマシだ。学生の頃は理由も告げられずに従わされることはよくあったから。


僕がコテージに戻るとやっぱりファリィはソファにいて

「キフユが怪我をしたんでしょう?大丈夫かしら?」

と言う。僕より先にコテージに戻っていたのにどうして知っているんだろ?

「戸棚が倒れてきたらしい。怪我はたいしたことないと所長は言ってた」

「あの食器とかが入っている大きい棚かなあ」

僕は厨房にどんな棚があるかなんて知らないんだけど。


それから僕はインスタントコーヒーを淹れて、珍しくファリィもコーヒーを飲んだ。


キフユの怪我がどれくらいなのかわからないけれど、今日海へ行く予定は延期になるかもしれないと思いながらもラボに行くとそこにはタツトとドエル所長がいた。


「キフユの怪我はどうなんですか?」

と所長に尋ねると

「何針かは縫ったけれど大丈夫だ。念の為ドクターが付いているし他に怪我をした者はいない。厨房は調理補助班が片付けているし、倒れた棚はトリナの指示で家具修理班が直しているよ」

所長は僕が知りたかったことを全部教えてくれた。

ドクターがキフユに付いているから代わりに自分が行くことにしたと所長は言ったけど、所長と一緒なら行きたくないなんて僕には言えるはずもなく、タツトと所長のあとについて海への道を歩き始めた。

僕は所長がちょっと苦手なんだよなあ。

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