31 事業計画
その夜もファリィは早く眠りたがったので任務はさっさと終わらせて、眠ってしまったファリィに掛布団をかけ直して僕は起き出してきた。
ファリィとそういうことをしても、彼女がはっきり言ったわけではないけれど早く終わらせたいというのが透けて見えて面白くも何ともない。
もしかして夢の国に行ったらこんな感じなのかな?あそこの女性たちは無理やり連れてこられたわけで、ファリィは自分の意思でB計画に参加したんだからやっぱり違うのか?
こんなことを考えていてもしょうがないと思い直して、そのあとちゃんと受験勉強をした。
食事の時はファリィは隣に座っているしその時に話はするけどそれは強化スープの味付けはどれが好きだとか、ラボに置いてある鉛筆削りの調子が悪いとか、そんなのは誰としたっていい話だ。
だから僕はファリィはそこにいるだろうと昼食後に自分たちのコテージに行くとやっぱりファリィはソファで横になっていて、彼女は横になっているのは好きだけど話をするのもイヤというわけではないようで、僕たちはそこで話の続きをした。
僕はコテージの小さい流しにもたれてコーヒーを飲みながら、食後のコーヒーなんて優雅だなと思う。まあこれはインスタントコーヒーだけど。
「じゃあさ、教師というのは?教師なら直接人の生き死にに係わることはないだろうし、なにより夜勤がないからラクだと思うよ」
故郷の惑星では小学校も中学校も高校も生徒は午前中クラスと午後クラス、夕方クラスの3部制で1日4時間授業だからその全ての授業をしても1日12時間労働だ。
「それは、ありかもしれないわね。労働時間が12時間より長くならないというのは魅力的。でも、私ってあんまり子供が好きではないし」
ファリィは意外なことを言う。僕は女の人はみんな子供が好きだと思っていたんだけど、まあファリィならそういうこともあるかもしれない。
でもそれは感情論で否定するところかなあ。
「けど、500万コインあっても一生そんな時短労働生活を続けていけるわけないだろ。冷静に計算しようよ」
「そんなこと私だってわかってるわよ」
わかってて言ってたのか。でもそう言われると僕はそれ以上なんて言えばいいのかわからない。
「ま、もったいないというのもわかる」
わかるのか。ならいいけど。
「トリナはもうちょっと技術が進んだら労働時間は短くなると言ってるし、アルマなんかはそれを信じちゃっているから」
「え、アルマと仲がよかったっけ?」
「作業が同じだからね。太陽光発電の作業をやってる中では女の子は私たち2人だけだからよく話はするけど」
ファリィも太陽光発電の作業だったのはちょっと意外な感じだ。
「もし全員の労働時間が短くて済むようになるなら、労働時間を減らすために500万コインを使ってしまうのはもったいないかも」
なんだかわかったようなわからないような理屈だけど。
「だったら何かお店でもでも始めようかしら」
そういう発想になるかな?そりゃ古着屋とかの個人商店は中流階級以上の成人なら届を出せば誰でも始められるけれども。
「自分で店とか始めて成功する人はほんの一握りじゃないの?」
「それは資金のない状態で始めるからよ。それだと最初から黒字を出さないと次の月の家賃を払えなくなってその次の月には貧民窟行きね」
ファリィはキビシイことを平気で言う。
「なんとかなってる個人商店はさ、最初は同じ商売をしている親の店からお客さんを紹介してもらったりして回しているらしいけど、私にはそんな親はいないけれど500万コインがあるからすぐに貧民窟落ちってことにはならないと思う」
なるほどなあ、だらだらする時間を買うために参加報酬を使ってしまうよりは建設的だ。
「個人商店主は「みなし労働時間」で働いているからそれでうまく行けば、実際の労働時間は10時間でも12時間分を稼ぐこともできるだろうし」
結局そこなのか。でもそんなにうまくいくのかなあ?
「で、何屋を始めるつもり?」
「問題はそこよ。ジェイミィは何がいいと思う?」




